参院選の特定枠とは?制度の仕組みや導入の背景を分かりやすく解説

参院選の特定枠とは?制度の仕組みや導入の背景を分かりやすく解説

参議院比例代表選挙の特定枠という制度をご存じでしょうか?

特定枠制度は、2019年の参院選から導入された比較的新しい制度であり、あまり聞き馴染みがないという方も多いかと思います。

特定枠とは、政党等があらかじめ優先的に比例代表選挙で当選させたい候補者を決められる制度です。

この記事では、特定枠制度の仕組みや、制度の導入に至った背景について分かりやすく解説します。

参院選比例代表選挙の特定枠制度とは

ここでは、参院選比例代表選挙に導入された特定枠制度の仕組みやメリット・デメリットを解説します。

特定枠ってどんな制度?

特定枠制度は、2019年の参院選比例代表選挙から導入された制度です。

特定枠制度を用いることで、政党等が候補者を優先的に比例選挙で当選させられます。

参院選の比例代表選挙では、有権者は、政党または候補者に投票し、総得票数(政党+候補者の得票数)に応じて各政党に議席が配分されます。

これまでの比例代表選挙は、個人の得票数の多い候補者から順に当選する仕組みでした。(非拘束名簿式

一方、特定枠を利用した場合、特定枠候補者は、名簿の順位に沿って、特定枠以外の候補者よりも優先的に当選が決まります。

たとえば、獲得議席数4席、候補者が5名(Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさん)の政党X党を例に考えてみましょう。

候補者5名のそれぞれの得票数は、Aさん50万票・Bさん40万票・Cさん30万票・Dさん20万票・Eさん10万票とします。

特定枠を利用しない場合、X党の当選者は、得票数が多い順にAさん・Bさん・Cさん・Dさんの4人に決まります。

ここで、X党がEさんを特定枠の1位Dさんを特定枠の2位に設定したとしましょう。

すると特定枠の候補者は、個人の得票数に関係なく優先的に当選がきまるので、当選者は、Eさん・Dさん・Aさん・Bさんの4名となります。

特定枠制度を用いるか、また、何人の候補者に適用するかは各党の任意です。

ちなみに政党要件を満たす政党のうち、2019年の参院選で特定枠を利用したのは自民党だけでした。

導入の目的

総務省は、公職選挙法改正を改正し、特定枠制度を導入することについて次のように説明しています。

全国的な支持基盤を有するとはいえないが国政上有為な人材あるいは民意を媒介する政党がその役割を果たす上で必要な人材が当選しやすくなるよう、次のような特定枠制度を導入する。

引用元:総務省 | 参議院議員選挙制度に関する公職選挙法改正の概要

上記のように、特定枠が導入されたことで、個人として当選に必要な票数の獲得が難しい場合でも、参議院議員として適格な人材であるならば、当選が可能になったと言えます。

特定枠制度のメリット・デメリット

特定枠制度を利用するメリットとしては、繰り返しになりますが、全国的な知名度や組織票がない候補者でも当選が可能になることがあげられます。

一方、デメリットとしては、個人としての選挙運動が制限されることがあげられます。

たとえば、特定枠候補者は、選挙事務所の設置や選挙カーの使用ポスターの配布や掲示個人演説会などの運動を行ってはいけません。

これにより、たとえ選挙で当選できたとしても、有権者に自分の顔や名前を認知してもらえないという事態が起こり得ることが考えられます。

特定枠制度導入の背景

ここでは、特定枠制度が導入されるのに至った背景について深掘りします。

一票の格差

一票の格差とは、選挙区間で議員一人当たりの有権者数が異なっていることで、一票の価値に不平等が生じる問題です。

参院選は、比例代表選挙と選挙区選挙の2つの選挙からなっています。

このうち、都道府県単位で行われる選挙区選挙において一票の格差が拡大し、問題視されていました。

(※一票の格差について詳しくはこちら「一票の格差って?何が問題なのか理解しよう」)
(※参院選の仕組みについて詳しくはこちら「参院選とは?選挙の流れや投票方法を分かりやすく解説」)

合区

2015年、参院選選挙区選挙の一票の格差解消のために、「合区」が導入されました。

合区は、口の少ない県を合わせて一つの選挙区とする制度で、これにより「鳥取県と島根県」、「徳島県と高知県」が一つの選挙区となりました。

合区となった選挙区では、元々合計2名の議員が当選していましたが、合区後は定数が1人に減るため、議員が1名あぶれることになってしまいます。

合区の対象になった4県は、歴史的に自民党が強い地盤を持つ地域であり、政治家などから自分たちの県から代表者が出せないことへの懸念や反対の声が相次ぎました。

そのような一票の格差解消と合区反対という板挟み状態の中で、自民党は、参議院議員の定数増加と特定枠制度の提案を行ったのです。

この提案が認められたことで、合区のために選挙区選挙で当選できなくなった議員を、比例代表選挙からほぼ確実に当選させられるようになりました。

以上のように、特定枠は、合区によって選挙区からあぶれた議員を、比例代表で救済する狙いで設けられた側面が大きい制度と言えます。

(※合区について詳しくはこちら「合区とは?目的や弊害について解説!」)

まとめ

この記事では、参院選比例代表選挙の特定枠制度について解説しました。

  • 特定枠とは、政党等があらかじめ優先的に当選させたい候補者を決められる制度
  • 特定枠を利用することで、全国的な知名度がない候補者でも当選が可能になる
  • 特定枠導入の背景には、合区によって選挙区選挙の当選からあぶれた議員を救済する狙いがある

この記事が、特定枠を理解し、参院選に関心を持つきっかけになれば幸いです。

 

<参考>
栃木県選挙管理委員会 | Q9.特定枠制度って?
NHK選挙WEB | “特定枠”とは? 参院選
読売新聞オンライン | [早わかり 参院選Q]比例選特定枠とは?…他候補に優先して当選
FNNプライムオンライン | どうして島根と鳥取は2県で一つなの?今回の参院選から導入“特定枠”って何?
産経新聞 | 今回から導入された比例代表特定枠とは?
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