政党の除名処分とは?議員を辞めさせることはできないの?

政党の除名処分とは?議員を辞めさせることはできないの?

今年7月の東京都議会選挙で当選した木下富美子都議が、選挙期間中に無免許運転で事故を起こしたとして道路交通法違反などの容疑で書類送検されました。その後、都議会から辞職勧告を受けながらも「議員を辞めるつもりはない」と表明したことが話題になっています。

所属していた都民ファーストの会は木下都議を除名処分としましたが、政党による除名とは、どのような効果を持つのでしょうか。

また、一連のニュースから「どうしてすぐに都議を辞めさせることができないのか?」という疑問も湧いてきます。本記事では、政党による除名議会による辞職勧告や除名との違い、過去にあった除名の事例についても解説します。 

 

この記事を監修した人
奥藤裕子
イメージ戦略の構築からトータルプロデュースする選挙コンサルタント。イメージコンサルタントとして培った知識と経験を活かし、数多くの広報ツール制作・政策立案に携わる。政治家の「自己プロデュース力を高めたい」というニーズに応えるべく、今日も現場で奮闘中。

木下富美子都議をめぐる騒動

まずは、木下都議の騒動がどのような経緯だったのか、見てみましょう。 

無免許運転で事故を起こした疑い

今年7月4日に投開票が行われた東京都議選から一夜明けた翌5日、板橋区選出で当選した都民ファーストの会所属(当時)の木下富美子都議が、無免許運転で人身事故を起こした疑いがあると各メディアが報じました。

新聞記事などによると、事故は選挙期間中の同月2日、板橋区で木下都議の運転していた車と50代男性の運転していた車がぶつかり、男性と同乗者がけがをしたというものです。

さらに事故当時、木下都議は免許停止の行政処分中でした。

その後9月に、警視庁は道路交通法違反などの疑いで木下都議を書類送検し、11月、東京地検が在宅起訴しました。(自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)は不起訴処分)

所属政党の対応

木下都議が所属していた都民ファーストの会は、都議選直後の7月5日に木下都議を除名処分としました。

同都議の除名に関して、公式HPでは以下のように掲載されていました。

木下議員の無免許状態での運転は明確な法律違反であり、公人としてあるまじき行為で言語道断です。選挙終了後まで何ら党への報告もなかったことも重大な問題であり、こうした行為は、都民の皆様から寄せられた信頼を裏切ることになり、都民ファーストの会は、会規約第21条に基づき、木下ふみこ議員を令和3年7月5日付で規約上最も重い「除名処分」としました。

引用:木下ふみこ議員に対する辞職勧告決議 東京都議会

このコメントからもわかるように、木下都議は最も重い処分である「除名処分」を言い渡されました。 

東京都議会の対応

一方都議会も木下都議に対し、7月と9月に2度、全会一致で「辞職勧告決議」をしました。

辞職勧告については、以下のような姿勢を示しています。

「無免許運転は明白な違法行為であり、都民の信託を受けた都議会議員としての自覚を欠く恥ずべきものである。このことが議員一個人の問題にとどまらず、東京都議会に対する都民の信頼を大きく損ない、品位と権威を著しく傷つけたことは、断じて許されるものではない。(中略)東京都議会は、木下ふみこ議員が今回の行為の社会的、道義的責任を真摯に受け止め、公人として自らの責任を痛感し、直ちに都議会議員を辞職することを強く求める」

引用:木下ふみこ議員に対する辞職勧告決議 東京都議会

木下都議は当選後から体調不良を理由に議会を長期欠席。11月に選挙後初登庁しましたが、辞職勧告には応じず、議員を続ける方針であると表明しました。

しかし在宅起訴後に一転、記者会見を開き、都議を辞職しました

参考

無免許運転事故で辞職勧告決議木下都議議員辞職しない考え:NHK NEWS WEB(11月9日)

無免許都議に再び辞職勧告:時事ドットコム(9月28日)

木下富美子都議への辞職勧告決議を可決、本人は欠席:朝日新聞デジタル(7月23日) 

木下富美子都議を在宅起訴:朝日新聞デジタル(11月19日)

木下富美子都議、議員辞職を表明:朝日新聞デジタル(11月22日)

政党による除名とは

木下都議の事故により今回話題になった「除名」とは、どのようなものなのでしょうか。

政党の規則に基づいた処分

政党による除名は、「党則」などと呼ばれる党が定めた規則による処分です。規則には、入党資格や代表の選出方法などが示されています。その中に、どのような場合に除名処分となるのかがあらかじめ記載されているのが特徴です。

例えば、自民党は「自由民主党規律規約」で、党員が党の規律をみだす行為・党員たる品位をけがす行為・党議にそむく行為をしたとき、選挙における非公認や離党勧告、そして除名などの処分を行う可能性があると明示しています。(第2章9条など)

立憲民主党も、規約で「政治倫理に反する行為」や「当の名誉及び信頼を傷つける行為」などを行ってはならないとし、違反した党員の行為が「本党の運営に著しい悪影響を及ぼす場合」は離党勧告や除籍(除名と同義)などの処分を行うことがあると記しています。(第9章48条など)

今回の木下都議の除名も、上記のコメントにあるように「会規約第21条に基づく」処分です。

除名されたらどうなる?

このように、政党の除名は政党内部の規則によるものであるため、議会による処分や辞職勧告とは別物です。つまり、所属していた政党を除名されたからといって、直ちに議員や政治家の資格を失うわけではありません

今回、木下都議は都民ファーストの会を除名された後、ひとり会派「SDGs東京」を立ち上げ、都議としての活動を続けていく方針を示しています。

参考

自民党党則

立憲民主党規約

 

議員辞職させることはできないのか

報道によると、木下都議の一連の言動に対し、都の議会局には「辞職すべきだ」などとの批判が2000件以上寄せられました。

 議会による除名処分はできる?

政党の除名のように、議会による除名はできないのでしょうか。

まず、今回の「辞職勧告」には法的拘束力がありません。そのため、本人が勧告に従わないことも可能です。

地方議会のルールを定めた地方自治法では、議会は地方自治法や会議規則、委員会に関する条例に違反した議員に対し出席停止や除名を発議(議案として提出すること)できると定めています。(地方自治法134、135条)

しかし今回の木下都議の騒動は、議会での行動ではありません。そのため、同法の適用は難しいと考えられます。

解職請求(リコール)はできる?

地方自治法では、有権者が一定数の署名を集め、選挙管理委員会に提出することで地方公共団体の長や議員の解職請求を行う制度(リコール)も定めています。

しかし、議員の解職請求は選挙から1年間はできないと定められているため、現時点では解職請求はできません。(第80〜84条)

参考

『判例六法 令和3年版』有斐閣、2020(地方自治法)

木下都議「深く反省」なぜ無免許「お話しできない」:毎日新聞(11月9日)

東京都議会規則

 

過去の除名処分事例や理由

今回のように、政党による政治家の除名処分が行われた事例は過去にもありました。 

刑事事件による除名

2005年に衆議院議員だった中西一善氏が、強制わいせつ容疑で警視庁に現行犯逮捕されました。直後に中西氏は自ら議員辞職願を提出し、所属していた自民党から除名されています。

不適切な発言や行為による除名

2019年には、丸山穂高衆議院議員(当時)が北方領土を訪問した際、酒に酔った状態で不適切な発言をしたとして問題になりました。所属していた日本維新の会は丸山氏を除名しました。

また、2020年には高井崇志衆議院議員(当時)が、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するための緊急事態宣言が出ている中で、東京新宿・歌舞伎町の「セクシーキャバクラ」で遊興。所属していた立憲民主党は不適切行動として高井氏を除籍しました。

丸山氏、高井氏の事例では、問題発覚後、当時所属していた政党に自ら「離党届」を提出しましたが受理されず、党は最も重い処分である除名(除籍)を下しています。

また、いずれも除名された後も議員辞職はせず、今年10月の衆議院解散まで議員を続けていました。(解散後の総選挙では丸山氏は出馬せず、高井氏は落選)

党議拘束への造反による除名

2005年には、郵政民営化法案の成立を目指していた小泉純一郎首相(当時)が、衆議院を解散し総選挙が行われました。このとき、郵政民営化に反対していた複数の自民党議員が、党議拘束に造反したとして選挙で党の公認を得られず、他の党に参加するなどして自民党の他の候補と対立。その結果、除名処分となりました。

参考

衆議院HP 国会年表(平成17年)

維新、丸山穂高議員を除名処分 朝日新聞デジタル(2019年5月14日)

緊急事態宣言後にセクキャバ遊興の高井議員を立民が「除籍」処分:産経新聞ニュース(2020年4月15日)

・自民、綿貫民輔氏の復党了承 四国新聞

 

まとめ

 政治家や議員が社会的に不適切な行動や発言で問題になったとき、所属政党が行う最も重い処分が「除名」です。

しかし政党による除名は、党員に相応しくないとしてその資格を失わせるに過ぎず、「党員」の立場と「議員」の立場は厳格に別であるということから、議員を辞めさせる強制力はありません

政治家が国や地方議会の議員として相応しい人物であるかどうか、有権者が選挙の際にしっかりと判断することが重要です。

 

この記事を書いた人
rainy

大学の政治学科を卒業後、報道機関で記者をしていました。主に社会部で裁判、司法を担当。選挙取材も経験しました。退職後の現在はフリーランスライターとして働く、0歳児と2歳児の母です。
「社会の仕組みや動きを知ること・理解することで、新しい世界が広がる」、読者にとってそんな記事を書けるよう、日々精進していきます。

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