国会のバリアフリー化はどうなっている?

国会のバリアフリー化はどうなっている?

2019年の参議院選挙で、れいわ新選組から重度の障害を持つ2人の候補者が当選し、話題になりました。

その後参議院では、障害のある議員の活動に対応するため、大きくバリアフリー化が進んだといわれています。

2022年の参院選でも重度障害者の候補者が当選したため、今後の対応に注目が集まるでしょう。

国会のバリアフリー化には、どのような歴史があるのでしょうか。

これまで具体的にどのような整備が実施されたのか、現状の課題についても解説します。

国会におけるバリアフリー化の歴史

国会のバリアフリーはこれまで、衆議院・参議院でそれぞれ所属議員への対応という形で変化してきました。

1977年に車椅子使用の議員・八代英太氏が当選

脊椎損傷によって車椅子を使用する八代英太氏が1977年に参議院議員に当選した際、国会で最初にバリアフリーが問題になりました。

八代氏は約28年間、衆院議員・参院議員を務め、国会のバリアフリー化に尽力します。両院は当時、仮設スロープや車椅子用トイレを設けるなどの対応を取りました。

2019年参院選で重度障害者の2候補者が当選

2019年の参議院選挙で、れいわ新選組から舩後靖彦氏木村英子氏が当選しました。

舩後氏は難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者で、自力で身体を動かすことがほとんどできず、発語も困難です。木村氏は生後8ヶ月の事故で重度の身体障害を負いました。いずれも大型の車椅子を使用しています。

また、国民民主党からは元パラリンピック選手で車椅子を使う横沢高徳氏(現在は立憲民主党)が当選しました。

重度障害者を含む3議員の当選によって、参議院では後述のような新たなバリアフリー対応が実施されています。

衆院議員でも車椅子使用

衆議院では、議員の大河原雅子氏(立憲民主党)が脳出血の後遺症のため、2021年から車椅子を使用するようになりました。大河原氏は衆議院のバリアフリー化を進めようと働きかけています。

しかし、参議院に比べると遅れているのが現状です。例えば車椅子用の議席は、参議院では2019年8月の国会で設置されましたが、衆議院は2022年1月から設けられました。

2022年参院選でも重度障害者候補が当選

2022年の参院選では、れいわ新選組から天畠大輔氏が初当選しました。天畠氏は14歳のときの医療ミスによって、四肢や視覚、発話などに重い障害があります。

参議院ではどのようなバリアフリーがされている?

2019年に重度障害を持つ議員が所属したことでバリアフリー化が進んだといわれる参議院ですが、具体的にはどのような変化があったのでしょうか。

2022年7月現在、議員傍聴者に対してハード・ソフトの両面でどのような配慮がされているかをまとめました。

スロープ設置などのハード面

ハード面でのバリアフリー対応は、以下のようなものがあります。

  • 議場の登壇用スロープ
  • 大型車椅子用の議席
  • 中央玄関や連絡地下道などに昇降機を設置・改修
  • バリアフリートイレ(オストメイト・介護用ベッドなど)
  • 傍聴席の車椅子用スペース

登壇用スロープや車椅子用の議席は障害のある議員への配慮として、その他は議員だけでなく傍聴者や来賓客に対するバリアフリーとしても対策しています。

介助や配慮などのソフト面

設備などのハード面だけではなく、必要に応じた介助などソフト面での対応も重要です。

傍聴者向けには、以下のような配慮があります。

  • 傍聴には手話通訳者や要約筆記者の同伴、補助犬の帯同が可能
  • 事前に申し出れば、手話通訳者・要約筆記者の派遣に対応(費用は参議院事務局が負担)
  • インターネット中継に手話通訳を導入

議員向けには、以下のような対応が取られています。

  • 本会議場への介助者の入場
  • 記名式投票での代筆
  • 起立採決の際は挙手による賛否の表明
  • 音声読み上げ機能付きパソコンの持ち込みや秘書による代読
  • 文字盤で質問を作成する際は質問時間に含めない

バリアフリー対策はどのように決める?費用は税金?

国会におけるこれらの対策はどのように決定し、費用は誰が負担しているのでしょうか。

議院運営委員会で対策検討

2019年の参院選直後、舩後氏や木村氏らの臨時国会初登院に向けて、参議院議院運営委員会が対応を検討しました。

この場で、介助者の議場入場や代理投票を認めること、スロープの設置工事などバリアフリー化を進めることが合意されました。

介助費用は参議院が負担

スロープの設置費用などは、バリアフリー化の施設整備費として約9億5200万円が国の2019年度補正予算に計上されています。

また、舩後氏と木村氏は障害者支援法に基づく重度訪問介護を受けており、国会の出席などにも介助者が必要です。制度では、利用者の費用負担は原則1割となっています。

しかし現在の制度では、公費による介助サービスは仕事などの経済活動には使えない仕組みです。

2人の議員活動時の介助費用は現在参議院が支出していますが、2人は議員だけの対応ではなく、制度そのものの見直しを求めています。

現状の課題や影響

前述のように、舩後氏や木村氏の議員活動における介助費用は参議院が負担しています。しかし、そもそも重度障害者が就労する際に公費サービスが使えないことは社会的な課題です。

2人は議員だけの問題ではないと訴え、参議院ではなく厚生労働省による支出を求めています。

また、衆議院でも傍聴者の手話通訳者などの同伴や補助犬の帯同は認められており、スロープやエレベーターも設置されています。

しかし参議院に比べると遅れているとの指摘があるため、今後の対応が注目されそうです。

国会のバリアフリー化によって、社会全体でもノーマライゼーションや差別解消が進んでいくことが期待されます。

まとめ

  • 国会で最初にバリアフリー化が問題になったのは1977年の八代英太氏の当選。その後2019年の重度障害を持つ議員らの就任によって、参議院で大幅にバリアフリー化が進んだ。
  • 参議院では、登壇用スロープや大型車椅子用の議席の整備、介助者による代理投票や代読など、議員に対する配慮がなされている。
  • 議員活動時の介助費用の負担や、参議院に比べて衆議院のバリアフリー化が遅れていることなど、課題もある。

 

<参考>
れいわで国会バリアフリー化求められる 重度障害・ALS患者の舩後氏初当選 | 毎日新聞
参院議運、バリアフリー化進めることで合意 介助者の入場や代理投票認める | 毎日新聞
会長(八代英太)プロフィール
元祖車いす議員・八代英太氏が語る、重度障害者が国会に行く「意義」
「障害者でも政治参加、当たり前に」国会バリアフリーの現状 車いす議員3人に聞く:東京新聞 TOKYO Web
車いす議員3人、衆院本会議場を視察 演壇へのスロープ設置にハードル
衆議院議員 大河原まさこ
衆院本会議場に「車いす用議席」初めて設置 バリアフリーに一歩前進 大河原氏「今後も提案したい」:東京新聞 TOKYO Web
参議院議員 横沢高徳
「居場所ある社会に」れいわの重度障害者 絶望から25年後の当確 | 毎日新聞
参院 車いすの議員のため正面玄関や議場を改修 PC持ち込みも | 注目の発言集 | NHK政治マガジン
参議院施設におけるバリアフリー化整備について
参議院事務局における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領について
「障害者でも政治参加、当たり前に」国会バリアフリーの現状 車いす議員3人に聞く:東京新聞 TOKYO Web
参院議運、バリアフリー化進めることで合意 介助者の入場や代理投票認める | 毎日新聞
参院ネット中継で手話通訳、今国会から
参院バリアフリー9億円計上 車椅子で登壇できるスロープ新設 補正予算案 | 毎日新聞
れいわ元年のバリアフリー! | 特集記事 | NHK政治マガジン
重度障害者が働くために れいわ議員が投げかけたものは 課題もあぶり出す | 毎日新聞
衆議院事務局における障害を持った方々に対する主な配慮例等
国会議場、スロープできたが… 障害ある議員に慣習の壁

この記事を書いた人
rainy

大学の政治学科を卒業後、報道機関で記者をしていました。主に社会部で裁判、司法を担当。選挙取材も経験しました。退職後の現在はフリーランスライターとして働く、0歳児と2歳児の母です。
「社会の仕組みや動きを知ること・理解することで、新しい世界が広がる」、読者にとってそんな記事を書けるよう、日々精進していきます。

選挙
スマート選挙ブログ
タイトルとURLをコピーしました