「ふるさと納税」の仕組みは?背景やメリット・デメリットをわかりやすく解説!

「ふるさと納税」の仕組みは?背景やメリット・デメリットをわかりやすく解説!

2008年からスタートした「ふるさと納税」は、納税者が地方自治体に寄付する仕組みで地方の特産品などがもらえるため、人気がある制度です。

しかしその仕組みは少し複雑でわかりにくい面もあります。

なぜこのような制度がはじまったのか、仕組みと経緯を図解も交えてわかりやすく解説します。

ふるさと納税とは

ふるさと納税は、2008年4月の地方税法等の改正によって同年5月からスタートした、納税者が好きな自治体(都道府県や市区町村)を選んで寄付ができる制度です。

過疎などにより税収が減少している地域と、都市部との地域間格差を是正することを目的として作られました。

「ふるさと」と謳われていますが、納税先は生まれ故郷でなくても問題ありません。

納税者自身が応援したい自治体を選べ、返礼品がもらえるなどのメリットもあるため、大変人気のある制度です。2021年にふるさと納税を行い控除適用が行われた人の数は約740万人に上ります。

利用率は約13.2%であると考えられます。

ふるさと納税の仕組み

ふるさと納税とは、税制上はどんな仕組みなのでしょうか?

ふるさと納税は厳密には寄付であり、「寄付金控除」という制度を活用しています。

納税をしている人はほとんど収入や所得に応じて税金を納めていますが、この制度を利用して納める税金を軽減できるのです。

「控除」とは一定の金額を差し引くことで、ふるさと納税を利用すると、所得税では寄付をした金額分の所得が控除され、住民税では税額控除が適用さるため納める税金を減らしたいと考える人にとってはメリットになります。

さらに自治体から寄付のお礼として地方特産品を中心とした「返礼品」がもらえることが多く、この点もふるさと納税の利用者にとってはメリットです。

近年ではより多くの寄付を集めるため、全国の自治体が競うように魅力的な返礼品を多数用意しています。

また、ふるさと納税は、納税者にとって自分が納めた税金の使い道を自分で直接指定できる数少ない制度でもあります。

ふるさと納税のやり方と注意点

「納税」という言葉はついていますが、ふるさと納税の実態は都道府県、市区町村への「寄附」です。

納税者が自分の生まれ故郷に限らず、どの自治体にでもふるさと納税はできます。

それぞれの自治体がホームページ等で公開している、ふるさと納税に対する考え方や、集まった寄附金の使い道や返礼品などから、応援したい自治体を選べます。

近年は全国のふるさと納税を集めた専門の情報サイトも充実しているため、情報収集がしやすくなっています。

一般的に自治体に寄附をした場合には、確定申告を行うことで、その寄附金額の一部が所得税や住民税から控除されますが、ふるさと納税では原則として自己負担額の2,000円を除いた全額が控除の対象となります。

普段確定申告をしない人にとっては少々面倒な仕組みかもしれません。

しかし会社勤めの方など年末調整を受けている人は、ワンストップ特例制度を利用することで確定申告をしなくても寄付金控除を受けることが可能になります。

なお、控除には前年度に納めた税金の金額によって設定された「限度額」があるため、控除を目的として寄付を行う場合、納税者は自身の控除限度額に注意する必要があります。

実施には総務大臣の指定が必要

ふるさと納税の利用者が増えたことで、全国の自治体が競って魅力的な返礼品を用意する状況となりました。

多くがその土地特有の農産物などの特産品を揃える中、ギフト券など当地の特産品とは言えないような返礼品も出てきたため、波紋を呼びました。

これを受けて令和元年度、ふるさと納税制度の対象となる寄附金(特例控除対象寄附金)について見直しが行われました。

総務大臣が一定の基準に適合する自治体として指定した自治体への寄附金とすることになったのです。

基準の見直し後、総務省はインターネット通販アマゾンのギフト券を提供するなどして平成30年度には全国の寄付金総額の10%近い497億円を集めていた泉佐野市をふるさと納税制度の対象団体の不指定処分とします。

これを受けて泉佐野市は「ふるさと納税の新しい制度の対象自治体から外されたのは違法だ」と処分の年消し訴訟を起こしました。

令和2年6月30日の最高裁判所の判決において、泉佐野市が勝訴しています。

創設のきっかけ

ふるさと納税は、人口減少による税収の減少への対応や、地方と大都市の格差是正を目的として創設されました。

2006年3月16日付の日本経済新聞夕刊のコラム・十字路の記事「地方見直す「ふるさと税制」案」を一部の政治家が取り上げたことから議論が活発化したことがきっかけと言われています。

さらに同年、西川一誠福井県知事などから提唱され、導入議論が高まりました。

導入議論を受けて、菅義偉氏が総務相を務めた期間に実現の旗振り役となり、2008年度に制度化しました。

2008年に発生した岩手・宮城内陸沖地震の際には、ふるさと納税制度を利用して被災地を応援しようという呼びかけや動きもありましたが、この時点では、ふるさと納税の全国的な知名度は今ほど高くありませんでした。

拡大のきっかけは東日本大震災

ふるさと納税は制度開始当初から全国的に広まったわけではなく、2011年の東日本大震災をきっかけに一部地域で利用者が急増し全国的に拡大していきました。

東日本大震災や各種メディアで取り上げられる機会が増えたことで、ふるさと納税は2015年に地方創生推進の観点から制度拡充が図られています。

ふるさと納税の問題点・デメリット

利用者にとってのデメリットとしては、税金の控除は寄付の翌年に反映されるため、寄付した年は持ち出しになる点が挙げられます。

また、寄附をした金額に関わらず、2,000円は自己負担となります。

所得や年収に応じて所得税や住民税の控除限度額が変わります。

これを超えてふるさと納税を利用した場合は寄付金控除がされないため、制度を最大限に利用したい人は限度額を正確に計算することが必要です。

自治体にとってのデメリットは、ふるさと納税を利用した住民が住んでいる自治体の住民税はその分減ってしまうことです。

2021年度最も多く税収が減少した地方自治体は神奈川県横浜市で、年間230億900万円の減収でした。

人口を多く抱える都市部の自治体ほどこの点が問題になっています。

一方、東京や大阪などの都市部でも魅力的な返礼品をそろえてふるさと納税を募る自治体も増えてきています。

まとめ

  • 「ふるさと納税」は「寄付金控除」という制度を活用した地方自治体への寄付制度
  • 過疎などにより税収が減少している地域と、都市部との地域間格差を是正することが目的
  • 2006年頃から一部の政治家が構想して提唱していた案を菅義偉総務相(当時)が実現
  • 納税者にとってはメリットが大きい制度といえるが、一部の地方自治体にとっては大幅な税収減少の要因となっており、問題視されている

 

<参考>
ふるさと納税とは?仕組みやメリットをわかりやすく解説
ふるさと納税の都道府県別「利用者数・利用率」と「平均寄附金額」を発表|2022年最新データ
【Excel配布中】ふるさと納税の市場規模、利用率、人気返礼品など最新データまとめ【2022年最新】 | ふるさと納税ガイド
総務省|よくわかる!ふるさと納税
ふるさと納税ワンストップ特例制度・特例申請書-入門ガイド | ふるさと納税サイト「さとふる」
「ふるさと納税」の仕組みと手続き〔2〕内容 | ZEIKEN PRESS
ふるさと納税制度について | ふるさと納税サイト「ふるなび」
スタートした「ふるさと納税」 1年目にみる各県の動向/地方分権と道州制-新しい日本のカタチ | 北陸の視座vol.22
ふるさと納税の歴史-制度創設の経緯・震災・税制改正・規制強化- | KAYAKURA
ニュース「ふるさと納税 制度のメリットとデメリット」 : 企業法務ナビ
ふるさと納税利用者・自治体側それぞれのデメリットは?わかりやすく解説
ふるさと納税が過去最高 20位までランキング 税収減の自治体も | NHK政治マガジン
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