選挙の電子投票とは?日本での導入事例やメリット・デメリットを解説

選挙の電子投票とは?日本での導入事例やメリット・デメリットを解説

日本の選挙では、投票用紙を受け取り鉛筆で記入し投票箱に入れて、開票作業も投票用紙を一枚一枚数えるため、デジタル化が進む今の時代からするとアナログだと感じる人も多いでしょう。

この記事では、選挙での電子投票について過去の事例やメリット・デメリットを解説します。

電子投票とは

電子投票とは、投票所で設置された端末を用いて投票することです。

個人が所有するスマートフォン等を用いてインターネット経由で投票する「インターネット投票」とは異なります。

日本で電子投票が行われた事例

日本で電子投票が実施されたことはあるのか、また、現在も実施されているのか説明します。

2002年から電子投票が可能に

日本では、2002年(平成14年)に電磁的記録投票法が施行され、条例によって地方選挙で電子投票が可能になりました。

初めて電子投票が導入されたのは岡山県新見市の市長選挙と市議会選挙。

その際、有権者はタッチパネル式の電子投票機で投票を行い、電子投票の開票にかかった時間は25分でした。

その後、全部で10の自治体で電子投票が実施されました。

選挙無効のトラブルも

2003年(平成15年)に行われた岐阜県可児市議選では、電子投票機のサーバーの過熱により、全ての投票所で、投票できない時間がありました。

加えて、システムの復旧作業の際に誤操作があったことで、投票総数が投票者数を上回るトラブルがありました。

その後、可児市の市民団体が選挙無効を訴えたことで選挙はやり直しに。

投票所に来たものの、投票できずに帰った人が多くいたこと、最下位当選者と次点者の得票数の差が35票であったことから、システムの不具合が選挙結果に影響を及ぼした可能性があるとして、最終的に最高裁判所で選挙無効が確定したのです。

現在、電子投票を実施している自治体はない

神奈川県海老名市や宮城県白石市でもトラブルがあり、ほとんどの自治体で電子投票は廃止されました。

ただ、青森県六戸町だけは、採算がとれずに機材が確保できなくなった2018年まで電子投票が続けられました。

電子投票普及への動き

地方選挙で電子投票が一度は導入されたものの、現在は全く実施されていません。再導入されることはあるのか、説明します。

国政選挙への導入は見送り

2007年に、自民党・公明党が国政選挙でも電子投票を導入できるよう電子投票法改正案を提出しましたが、地方選挙でのトラブルや、電子投票機のコストの問題で廃案となりました。

電子投票再導入の動き

総務省は、電子投票を導入したいという要望が自治体からあれば、支援するとしています。

また、費用のかかる専用の電子投票機だけでなく、タブレットなど市販の汎用端末でも可能になるよう検討をすすめています。

インターネット投票の導入は?

電子投票よりも本人確認やセキュリティの課題がある、インターネット投票はどうでしょうか。

インターネット投票は、現在、在外投票を対象に導入が検討されています。

現状、海外に住む有権者のための在外投票には、手続きが煩雑・投票日に間に合わない・最
高裁裁判官の国民審査はできないなどの問題があります。

そこで、国政選挙でのインターネット投票の導入が検討され、2020年に実証実験が行われました。

この実証実験では、専用アプリとマイナンバーカードを用いて行われています。

有権者役が専用のアプリでマイナンバーカードを読み取り、パスワードを入力すると投票画面が表示されました。投票先を選んで再びマイナンバーカードの読み取りとパスワードの入力を行ってデータを暗号化し、送信しました。

電子投票のメリット

電子投票のメリットは、主に以下の3点です。

1つは、開票作業における人員削減と開票時間の短縮です。

日本での電子投票は市区町村長選挙や市区町村議会選挙で合計25回行われましたが、いずれも、電子投票の開票作業は数分から長くても1時間以内には終わっています。

2つめは、候補者名の書き間違えによる無効票の削減で、3つめは、文字を書くのに障害のある人も秘密投票が可能になることです。

現在は投票所の係員が代筆する代理投票が行われていますが、タッチパネル式になれば、係員を通さずに投票でき、秘密投票が可能になる人もいます。

電子投票のデメリット

電子投票の問題点のひとつは、岐阜県可児市の選挙のように、システムの不具合で投票に影響がでる可能性があることです。

もうひとつは費用面の問題です。

電子投票機の賃貸料がかかり、投票用紙や開票作業の費用が削減できても、総合的にみるとあまり変わらない、さらには、投票用紙での投票のほうが費用を安く済ませられるという自治体もありました。

まとめ

  • 2002年(平成14年)以降、10の自治体で合計25回、電子投票が行われたが現在は全ての自治体で廃止または停止している
  • システムの不具合で選挙無効となったこともあった
  • 電子投票のメリットは、開票作業の人員削減、時間短縮・無効票の削減・バリアフリー化
  • 電子投票のデメリットは、システムトラブルの恐れ・電子投票機のコストがかかること
  • 現在は、専用の電子投票機以外にも市販のタブレット等も使用できるよう検討中

 

<参考文献>
ネット投票と電子投票の違い(原田謙介) – 個人 – Yahoo!ニュース
総務省 選挙における選挙人等の負担軽減、管理執行の合理化
6月23日 日本の選挙で初めて電子投票が可能に(2002年)(ブルーバックス編集部) | ブルーバックス | 講談社 (ismedia.jp)
総務省 電子投票について
電子投票|選挙|暮らし・防災|六戸町ホームページ (town.rokunohe.aomori.jp)
インターネット投票で政治が変わる?電子投票システムのメリットと課題について調べてみた – データのじかん (wingarc.com)
総務省|電磁的記録式投票制度について (soumu.go.jp)
「インターネット投票の実現に向けて」(視点・論点) | 視点・論点 | 解説アーカイブス | NHK 解説委員室
【詳しくわかる】電子投票ってどうなってるの? | NHK政治マガジン
「投票間に合わない」「早くネット投票を」 衆院選の在外投票、海外邦人ら不満の声:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)
インターネット投票の実証実験 「在外投票」で導入検討 | 注目記事 | NHK政治マガジン
総務省|電子投票の実施状況 (soumu.go.jp)
字が書けない場合、投票はできないの?|魚津市 (city.uozu.toyama.jp)
消えてしまうかも…広がらない端末利用の電子投票 「コストかかりすぎ」廃止の京都市 (1/3ページ) – 産経ニュース (sankei.com)
青森・六戸町が電子投票休止 コストが壁で普及せず: 日本経済新聞 (nikkei.com)
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