政見放送とは?政見放送のルールや背景を解説

政見放送とは?政見放送のルールや背景を解説

政見放送は国政選挙や知事選挙において、選挙公報や街頭演説と並び、候補者の考えを知るために重要な「選挙活動」の1つです。

この記事では、政見放送の歴史や細かに定められている規定、そして放送過程の裏側までをご紹介します。

政見放送とは

政見放送とは、選挙において立候補者が自分の主張や公約を有権者に伝えるためのラジオやテレビ番組のことです。

すべての選挙において政見放送があるわけではなく、衆議院議員選挙・参議院議員選挙及び都道府県知事の選挙においてのみ放映されます。

また、立候補すれば誰でも政見を放送できるわけではなく、選挙の種類によって無所属の立候補者は政見放送を行えないなど、様々な規定があります。

政見放送の目的

政見放送は、テレビやラジオというマスメディアを利用しており、1人でも多くの人に候補者の演説を聞いてもらうことを目的としたものです。

衆議員選挙や参議院選挙、知事選挙など、広い地域を対象とした選挙では、遠方で行われる街頭演説はなかなか聞きに行けなくても、政見放送を視聴することで、家にいながら候補者の政見を知るきっかけになります。

政見放送はいつ・どこでみられる?

政見放送は、テレビではNHKと民放の地方局で放映されています。

しかし、民放局の場合は深夜や早朝など、気軽に視聴しづらい時間に放送されることが多いため、「政見放送はNHKで放送されている」という印象が強いかもしれません。

また、放送期間は、選挙公示日の2日後から投票日の2日前になります。

2022年7月に行われた参議院選挙比例代表の政見放送は、NHKでは午前9時台と午後11時台に放送されていました。

政見放送はどのように撮影されているの?

政見放送には、スタジオで収録する方法と「持込みビデオ方式」があります。

スタジオ収録

テレビ局で収録する際は、全ての候補者について同一の放送設備を使用する等、公平性を担保するためのルールがあります。

また、NHKのスタジオで収録する際、収録の回数はリハーサル1回、本番1回と定められており、失敗してもやり直すことはできません。

加えて、公職選挙法第150条で「録画した政見をそのまま放送しなければならない」と規定されています。そのため「収録」といっても基本的に編集はいっさいおこなわれません。

持込みビデオ方式

持込みビデオ方式とは、候補者が独自に制作した動画を政見放送で使用するというものです。

持込みビデオ方式は衆議院小選挙区選挙及び、参議院選挙区選挙の一定要件を満たした候補者のみに認められています。

スタジオ収録と異なり、持込みビデオ方式では音楽やテロップ、資料映像等を使用することができます。

政見放送の字幕と手話通訳

政見放送での字幕や手話通訳は、持込みビデオ方式においては自由につけることができます。

2018年に参議院選挙区選挙における持込みビデオ方式が認められた理由のひとつには、字幕や手話通訳をつけることができ、できる限り多くの国民に効果的に政見を伝えられることがあります。

しかし、スタジオ収録の場合は選挙の種類によって字幕や手話通訳をつけられるかどうかが変わります。

字幕をつけられる選挙が限られているのには、主に以下の2つの理由が指摘されています。

ひとつめは、短期間に数多くの候補者の政見放送に字幕をつけなければならないため、技術的な課題があります。次に、字幕の文字数は限られているためテレビ局が字幕にする言葉について多少の編集をする必要があることにより、公正さについての懸念があります。

手話通訳をつけられる選挙が限られている理由は、地域によっては手話通訳士が少なく人員の確保が難しいことです。

また、字幕や手話をつけることができる選挙において、字幕や手話通訳をつけることは義務ではなく候補者側が選択します。

政見放送の費用

政見放送にかかる費用は公費で負担されており、負担額には上限が決まっています。

収録を行ったテレビ局(主にNHK)持込みビデオ方式の場合は、制作費が公費でまかなわれます。

また、他局で収録されたものや持ち込まれた動画を放送しただけの場合も、放送したテレビ局やラジオ局に公費から費用が支払われます。

政見放送の放送内容

ここでは、政見放送の内容についてのルールを解説します。

政見放送のトラブル・ハプニング

近年は奇をてらった政見放送が話題になることがしばしばあります。

最近では、2021年の千葉県知事選挙で、制限時間全てを使って公開プロポーズする候補者や、全身白塗りで登場した候補者がいたことが話題となりました。

放送内容と放送局

スタジオ収録、ビデオ持込み方式に関わらず、公職選挙法によりテレビ局等の放送局が政見放送を編集することは基本的にできません。

日本放送協会及び基幹放送事業者は、その政見を録音し又は録画し、これをそのまま放送しなければならない。

引用元:公職選挙法 | e-Gov法令検索

政見放送の放送内容について、テレビ局やラジオ局に責任はありません。

しかし、2016年の東京都知事選では、候補者の1人が行った政見放送において、NHKによって音声の大部分がカットされた上で放映されるということがありました。

原則編集やカットが行われない政見放送ですが、差別用語や放送禁止用語を発した場合、「公職選挙法第150条の2」(政見放送における品位の保持を定めた規定)に違反するとみなされ、この放送のように内容の一部がカットされる場合もあります。

政見放送と品位の保持

政見放送がどのような内容でもそのまま放送されるべきか否かについては議論があります。

公職選挙法に「政見放送における品位の保持」という規定ができたのは、昭和44年の法改正でラジオのみだった政見放送がテレビでも行われることになった際です。

他人若しくは他の政党その他の政治団体の名誉を傷つけ若しくは善良な風俗を害し又は特定の商品の広告その他営業に関する宣伝をする等いやしくも政見放送としての品位を損なう言動をしてはならない。

引用元:公職選挙法 | e-Gov法令検索

参議院選挙区選挙において、持込みビデオ方式をとれる候補者に制約があるのも、自由度の高い持込みビデオにおいて品位を保持するためとされています。

政見放送と著作権

選挙運動の一環として、テレビで放映された政見放送をインターネット上に投稿することはよいのでしょうか。

インターネット選挙運動は解禁されましたが、著作権の観点から、インターネット上に投稿することは禁止されています。

政見放送の歴史

最初の政見放送は、1946年の第22回衆議院議員総選挙におけるラジオ放送です。

その後、1969年9月にはテレビでの政見放送も解禁されました。

1995年の参議院比例代表選挙からは、手話通訳が導入される政見放送も放映され、耳の不自由な方にも理解しやすいものとなっています。

その後、一部では候補者が自ら録画または録音した政見を各放送局に持ち込むことが認められるなど、政見放送のあり方は変化してきました。

まとめ

  • 政見放送とは選挙において立候補者が自分の主張や公約を有権者に伝えるためのラジオやテレビ番組のこと
  • 政見放送は選挙公示日の2日後から投票日の2日前の間に、NHKと民放の地方局で放送される
  • 政見放送は放送局が編集することが禁止されているが、品位の保持の観点からカット等がされることはある

<参考>
「選挙放送」の解説
参院選・選挙区の政見放送にも手話通訳 バリアフリー進むも候補者によって対応割れる
日本放送協会冊子PDF
政見放送は編集なし、途中でかんだら… NHKの収録スタジオに潜入
政見放送はなぜNHKばかりで放映されているのか?(産経新聞)
参院選の政見放送に「持ち込み動画」が使用可能に。そのメリット・デメリットとは?
千葉県知事選の「奇抜な候補者たち」を振り返る、選挙はこれでいいのか
NHKの政見放送で音声カットの嵐
原則「編集厳禁」の政見放送。差別用語に他人への侮辱…どこまでが許されるのか?
テレビの政見放送とは?
社説:政見放送 品位を欠く内容が目に余った
【メディアポ】テレビの政見放送とは?
平成13年6月24日執行 (tokyo.lg.jp)
政見放送の経費の支払いについて
参議院選挙区選挙における政見放送の見直し
政見放送への字幕の付与について(案)
政見放送における手話通訳・字幕の付与について
公職選挙法の一部を改正する法律
「政見放送」って何ですか? 参院選公示にあたって | 民放online
○参議院比例代表選出議員の選挙における政見放送の日時及び順序(NHK・テレビ) 6/27 6/28
衆議院小選挙区選出議員選挙 政見放送のご案内 日本放送協会平成 26 年 11 月作成

タイトルとURLをコピーしました