選挙のネガティブキャンペーンとは?違法ではない?

選挙のネガティブキャンペーンとは?違法ではない?

選挙運動において「ネガティブキャンペーン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

ネガティブキャンペーンとは、相手候補の政策や問題点を事実に基づいて指摘することを意味します。相手を批判し、自身の支持を高めて有利に運ぶための選挙戦術です。

アメリカ大統領選などで多く見られるネガティブキャンペーンですが、

「そもそも違法ではないの?」
「本当に効果があるの?」

という疑問が浮かぶかもしれません。また、過去にネガティブキャンペーンを用いた選挙戦略には、どのような事例があるのでしょうか。

ネガティブキャンペーンとは?

ネガティブキャンペーンの定義と、日本やアメリカではどのように扱われているのかを説明します。

選挙戦術の「正攻法」として活用される

ネガティブキャンペーンとは、

相手候補(対抗馬)の政策や政治姿勢、さらには人格上の欠陥・問題点(政党の場合は政策等)等を事実に基づいて指摘、批判し、主に有権者の信頼を失わせ、自陣営を有利に導こうとする選挙戦術のこと

 

引用元:三浦博史『地方選挙実践マニュアル-第2次改訂版-』第一法規、2018、p.83

と定義されます。

ネガティブキャンペーンは、事実を元に相手を攻め、相手にも反論のチャンスを与える「正攻法」の選挙戦略です。

事実無根の内容による誹謗中傷や、出どころや真偽が分からない「怪文書」などとは異なります。混同しないように注意が必要です。

ネガティブキャンペーンは違法ではないの?

事実に基づいて相手を指摘・批判するネガティブキャンペーンは、違法な選挙戦略ではありません。しかし日本では、公然と相手を批判することを「個人攻撃」と捉え、有権者から否定的なイメージを持たれることも多くあります。そのため現状は、有効なネガティブキャンペーンをするのは難しいといえます。

一方アメリカでは古くから、効果的な選挙戦略としてネガティブキャンペーンが利用されてきました。大統領選では、テレビやラジオ、インターネットなどのメディアを通じた大規模なネガティブキャンペーンが繰り広げられています。

ネガティブキャンペーンの事例

アメリカや日本の過去の選挙で用いられた、ネガティブキャンペーンの実例を紹介します。

世論に「核戦争」のイメージ(1964年アメリカ大統領選)

冷戦下の1964年アメリカ大統領選では、ソ連(当時)の核ミサイルへの対抗策が争点となっていました。

候補者のバリー・ゴールドウォーター氏(共和党)は、ソ連の核使用を抑止するためにアメリカも核ミサイルを保有すべきだと主張します。他方で、対抗候補者のリンドン・ジョンソン氏(民主党)は、核保有に反対していました。両者の主張は対立し、世論が分かれます。

そのような情勢の中、ジョンソン氏側が制作したテレビCM「デイジー」が放映されました。CMでは最初に花畑で花びらを数えている幼い少女の映像が流れ、次に少女の顔がアップになります。その直後、轟音とともに大きなキノコ雲が画面に広がり、視聴者に衝撃を与えました。

映像は悲惨な核戦争のイメージを思い起こさせ、「核保有を支持するゴールドウォーター氏には政権を任せられない」との印象を有権者に植え付けるものです。大統領選では、ジョンソン氏が圧勝する結果となりました。このCMはネガティブキャンペーンの代表とも言われています。

政治方針の「ブレ」を指摘(2006年沖縄県知事選)

2006年に実施された沖縄県知事選挙では、官僚出身で元沖縄県副知事の仲井真弘多氏(のちに当選)と元参議院議員の糸数慶子氏とが争い、情勢はほぼ一騎討ちでした。

当初は「女性初の沖縄県知事」をキャッチコピーとする糸数氏が優勢と見られました。仲井真氏は外見や経歴から堅いイメージを抱かれやすかったこともあり、苦戦を強いられます。

そんな中で地元紙が、「糸数氏が地域政党からの支援条件として、政治方針の転換を求められ、受け入れていた」との内容の報道をしました。糸数氏はそれまで日米安全保障条約や自衛隊に反対していましたが、県知事選の選挙期間直前に主張を変え、それらを認める発言をしていたのです。

仲井真氏側は法定ビラにその新聞記事の文章を掲載し、糸数氏の「ブレ」を強調します。結果的に、県知事選は仲井真氏が勝利しました。

今後のネガティブキャンペーンはどう変わる?

近年は、インターネットを使った選挙運動が増えている影響で、候補者はネガティブキャンペーンの対象になりやすいと言われています。

SNSでネガキャン合戦?韓国大統領選

2022年3月に実施された韓国大統領選では、野党候補だったユン・ソクヨル氏(のちに当選)と与党候補だったイ・ジェミョン氏との間で、「ネガキャン合戦」が繰り広げられたようです。

ユン氏側がFacebookに投稿した列車移動中の写真で、ユン氏が座席に靴のまま両足を乗せている様子が写っていました。写真はインターネット上で話題となり、イ氏側がユン氏を「ノーマナー」「非常識」と激しく批判します。

直後にはユン氏側の国会議員が、2014年に撮影されたイ氏の写真をFacebookに公開しました。写真ではユン氏が飲食店内で喫煙しており、議員は「公衆道徳の欠如」などと投稿しています。これらのネガティブキャンペーンには、両陣営とも釈明をしました。

インターネットの投稿に注意!正攻法として活用も

日本では2013年から、インターネットを使った選挙運動が解禁されました。候補者や陣営がSNSなどに投稿することも増えています。投稿が「炎上」やネガティブキャンペーンの対象にならないよう、注意が必要です。

また、一般の有権者がインターネット上で候補者に関する投稿をしたり、街頭演説などの写真を掲載したりすることもあるでしょう。

例えば、候補者が集会や演説で政治方針にブレのある発言をした場合や、社会的に批判されるような言動やマナー違反をすると、有権者や相手陣営がその瞬間を動画や写真で捉えて投稿し、インターネット上で広く拡散することも考えられます。

一方で、発言の矛盾など、指摘されるべき事実を正当に批判するのは必ずしも悪いことではありません。「正攻法」のネガティブキャンペーンは有効な選挙戦略の1つです。

インターネット選挙運動の解禁で、日本でも今後、適度なネガティブキャンペーンが常識的な選挙戦略になるかもしれません。

まとめ

  • ネガティブキャンペーンとは、相手候補の政策や政治姿勢、人格上の欠陥や問題点などを事実に基づいて指摘、批判し、有権者の信頼を失わせ、自陣営を有利に導こうとする選挙戦術のこと。違法ではない。
  • 事実無根の誹謗中傷や、出どころの分からない怪文書などとは異なる。
  • アメリカ大統領選などでは古くからネガティブキャンペーンが用いられてきた。
  • 日本でも、インターネット選挙運動の解禁で、適度なネガティブキャンペーンは「正攻法」の選挙戦略として常識になるかもしれない。

 

<参考>
松田馨『地方選挙必勝の手引き』選挙の友出版、2020
三浦博史『地方選挙実践マニュアル-第2次改訂版-』第一法規、2018【日本語字幕】ジョンソン大統領 大統領選挙ネガキャンCM -President Johnson 1964 Campaign Ad
韓国大統領選・SNSでみる争点:与野党陣営、投稿写真のあら探しも 過熱するネガキャン合戦 | 毎日新聞
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この記事を書いた人
rainy

大学の政治学科を卒業後、報道機関で記者をしていました。主に社会部で裁判、司法を担当。選挙取材も経験しました。退職後の現在はフリーランスライターとして働く、0歳児と2歳児の母です。
「社会の仕組みや動きを知ること・理解することで、新しい世界が広がる」、読者にとってそんな記事を書けるよう、日々精進していきます。

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