引越しをしたら選挙権はどうなる?不在者投票も解説

引越しをしたら選挙権はどうなる?不在者投票も解説

選挙で投票するためには、選挙権の条件を満たしているだけではなく、自治体ごとの「選挙人名簿」に登録されている必要があります。別の自治体に引越し後、すぐに選挙があった場合に投票はできるのでしょうか。

今回は、参議院議員通常選挙の直前に引越しをしたケースを想定し、引越し後いつから投票できるか、またそれ以前でも投票する方法を説明します。

不在者投票の手続きや注意点に加え、衆議院議員総選挙や地方選挙の場合についても触れているので、ぜひ参考にしてください。

参院選直前に引越し!選挙権はどうなる?

参議院選挙など国政選挙の選挙権は、日本国籍を持つ18歳以上であることが条件です。さらに、実際に投票するためには住んでいる自治体の「選挙人名簿」に登録されている必要があります。

つまり、原則として投票は住民票がある市区町村で行い、選挙権があっても選挙人名簿に載っていなければ投票ができません。

選挙人名簿とは

選挙人名簿とは、市区町村の選挙管理委員会(選管)が管理している有権者の名簿です。正しい選挙を円滑に実施するために作られています。

選挙人名簿に登録される資格は「18歳以上の日本国民で、その市区町村で住民票が作られた日(転入届をした日)から引き続き3か月以上住んでいること」です。

2016年の法改正で、以下の場合は引越し前の住所(以下「旧住所」とします)の選挙人名簿に登録されることになりました。

  • 引越し前の住所(以下「旧住所」とします)における住民票の登録期間が3か月以上である17歳の人が転出後4か月以内に、引越し後の住所(以下「新住所」とします)において18歳となったが、新住所における住民票登録期間が3か月未満であること
  • 旧住所における住民票の登録期間が3か月以上である18歳以上の人が、選挙人名簿に登録される前に転出してから4か月以内で、かつ新住所における住民票の登録期間が3か月未満であること

選挙人名簿の登録は、毎年3・6・9・12月の各月1日に行う「定時登録」と、選挙ごとに設定される基準日(公示日前日)に行う「選挙時登録」があります。各月1日時点または基準日において、上記の条件を満たしている人が登録される仕組みです。

一度登録された有権者は、死亡または日本国籍でなくなったときはすぐに、転出の場合は4か月経過後に名簿から消されます。

引越し後に手続きは必要?いつから投票できる?

引越しの前後で、選挙権や選挙人名簿に関する特別な手続きは不要です。ただし選挙人名簿は住民票に基づき管理されているため、旧住所で「転出届」を、新住所で「転入届」を提出して住民票を移す手続きをしておく必要があります。

転出届は引越しの1か月前から、転入届は引越し後14日以内に、それぞれの自治体に届け出ましょう。

住民票を移動していない場合や、転入届を出してから3か月が経過していない場合は、選挙人名簿に載っていないため、新住所では投票することができません

引越し後すぐの選挙で投票する方法は?

転入から3か月以内に実施される選挙で投票するには、どうすれば良いのでしょうか。参院選のケースを想定して、投票方法を説明します。

以前の居住先で投票する

旧住所に3か月以上住んでいた場合は、旧住所で投票ができます。旧住所の投票所や期日前投票所に出向いて、投票することが可能です。

しかし、引越し先が遠方だったり、選挙のためだけに旧住所に行くのは難しかったりすることもあるでしょう。

不在者投票制度を利用する

「不在者投票制度」を使って、新住所で投票することもできます。不在者投票とは、仕事や旅行などで選挙人名簿登録地の投票所へ行くことが難しいときに使える制度です。引越し先での利用も推奨されています。

手続きの方法は以下の通りです。

  1. 旧住所の選管に、投票用紙などを請求する(窓口またはHPから請求書をダウンロードして必要書類とともに郵送。オンラインで手続きができる自治体もある)
  2. 不在者投票を利用する理由(「住所移転による場合」など)が認められると、投票用紙・投票用封筒・不在者投票証明書が新住所に郵送で届く
  3. 届いた書類を持参して、公示日翌日以降、選挙期日前日までに、新住所の選管に出向いて投票する(具体的な場所は各自治体で異なる)
  4. 投票後、新住所の選管が旧住所の選管へ投票用紙を送る

不在者投票の注意点

不在者投票では、次の点に気をつけましょう。

  • 郵送や手続きにかかる期間を考慮し、早めに請求する
  • 不在者投票証明書の入っている封筒は開封しない
  • 投票用紙を事前に記入しない
  • 投票できるのは、選挙期日の前日まで

その他の選挙ではどうなる?

ここまで参院選のケースを見てきましたが、その他の選挙では引越し後も投票ができるのでしょうか。衆院選と、知事選・市長選などの地方選挙の場合を見ていきます。

衆議院議員総選挙

国政選挙である衆議院議員総選挙も、引越し後すぐの投票方法は参院選と同じです。

  • 旧住所に出向いて投票する
  • 不在者投票をする

上記のいずれかで投票ができます。

また、引越し後3か月以内に旧住所の選挙区で衆院選・参院選の補欠選挙がある場合も、同様の方法で投票が可能です。

都道府県知事選挙・議員選挙

都道府県知事選挙・議員選挙における選挙権の条件は、

  • 18歳以上の日本国民であること
  • 選挙のある都道府県の同一市区町村に、引き続き3か月以上住所があること、または3か月以上住んだ後、同じ都道府県の別の市区町村に住所を移したこと

となっています。

例えば「X県A市に半年住んだ後、X県B町に引っ越した場合」を考えてみましょう。A市に3か月以上住んでおり、同じX県内に引っ越しているので、X県知事選やX県議選で投票ができます

この場合、B町に引越し後3か月経過する前の知事選・県議選では、B町では投票できません。A市の投票所に行くか、不在者投票をします。投票時には「引き続き同一都道府県に住所を有していることを証明する書類」(住民票など)の提示か、引き続き同一都道府県に住所を有していることの確認が必要です。

一方で、「X県A市に半年住んだが、Y県に転出した場合」では、転出後、X県知事選やX県議選で投票することはできません。また、Y県知事選・Y県議選で投票が可能になるのは転入から3か月経過後です。

市区町村長・議員選挙の場合

市区町村長選挙・議員選挙における選挙権の条件は、以下の通りです。

  • 18歳以上の日本国民であること
  • 選挙のある市区町村に引き続き3ヶ月以上住んでいること

A市内で引越しをした場合は引き続き選挙人名簿に登録されているので、A市長選やA市議選で投票が可能です(合わせて3か月以上住んでいる場合)。

しかし、A市からB町に転出した場合は、A市長選やA市議選に投票できません。また、転入から3か月経過するまではB町の選挙人名簿に載っていないため、B町長選やB町議選にも投票ができなくなっています。

まとめ

  • 別の自治体に引越し後、3か月経過するまでは選挙人名簿に登録されていないため、新住所で投票ができない。
  • 旧住所に4か月以上住み、引越し後3か月以内に国政選挙がある場合は、旧住所に出向くか不在者投票制度を利用することで投票が可能になる。
  • 地方選挙では、選挙が行われる自治体から転出した場合は投票できない。



<参考>

総務省|選挙権と被選挙権
総務省|選挙人名簿
引っ越しをした場合の投票は? – 選挙
さいたま市/転出、転入、転居(引っ越し)
選挙人名簿と登録|浦安市公式サイト
選挙人名簿とは|白山市公式ホームページ
引っ越したら住民票を移しましょう! – 美唄市ホームページ
総務省|投票制度 – 選挙
不在者投票(選挙時に市外に滞在している方)
【突撃!ポンきち】引っ越したら投票できない? 不在者投票を活用しよう
不在者投票を利用しよう!福井県選挙管理委員会
投票を諦めないで! 不在者投票の活用を | NHK北海道
兵庫県/選挙制度について
選挙Q&A(投票) | 東京都選挙管理委員会

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