明石市の子育て支援政策とは?財源や結果を分析!

明石市の子育て支援政策とは?財源や結果を分析!

兵庫県明石市は、子どもの医療費無償化など育児に関する支援が手厚い自治体として注目されています。各種メディアや、住みたい街のランキングなどでも多く取り上げられてきました。

明石市の子育て支援政策には、どのような特徴があるのでしょうか。

政策の具体的な内容や、いつから行われているのか、結果財源などについてまとめました。

取り組みのメリット・デメリットや、2023年4月に退任を表明している泉房穂市長についても解説しています。ぜひ参考にしてください。

明石市の子育て支援政策とは?

兵庫県明石市は、神戸市と隣接する県南部の街です。人口は約30万4500人(2022年10月時点)で、10年連続で増加しています。

日本の標準時刻を決める「東経135度子午線」が通っていることや、たこ焼きのルーツとも言われる名物「明石焼(玉子焼)」が有名です。

明石市は「こどもを核としたまちづくり」を掲げ、子育て支援政策に力を入れています。2011年に就任した泉房穂市長が積極的に進めてきました。

「所得制限なし」で経済負担軽減

明石市の子育て支援政策では、経済的な負担を軽減する取り組みをしています。

具体的な例では、以下のものが無料です。

  • 高校生以下の医療費
  • 第2子以降の保育料
  • 0歳児の家庭のおむつ(定期配達)
  • 中学校の給食費
  • 公共施設の入場料

国や自治体の子育て支援政策では、親の所得額が一定額以上であると対象外になる「所得制限」を設けていることが多くあります。

しかし明石市の上記政策では、親の所得額に関係なく、市内に住むすべての子どもに適用されることが特徴的です。

高校生以下の医療費無料

明石市では2021年7月から、高校生以下の子どもの医療費が無料となっています。全国の中核市以上の自治体では、初めての取り組みでした。

子どもが病院で診察などを受けたときに支払う金額は、自治体によって異なります。

例えば東京都では、多くの市区町村で中学生までの医療費が無料です。一方で、横浜市は小学4年から中学生までの課税世帯(所得制限未満)は、1回500円までの自己負担となっています。

負担の有無や金額は、子どもの年齢(学年)・課税世帯か非課税世帯か・親の所得額による制限など、自治体によって基準はさまざまです。全国的には、助成額や対象範囲を広げる動きがあります。

所得制限なしで高校生までの医療費を無料としている他の自治体は、東京都千代田区や武蔵野市などです。

第2子以降の保育料無料

明石市では2016年から、第2子以降の認可保育園などにかかる保育料が無料になりました。兄・姉の年齢や課税状況、所得制限に関わらず対象となっています。ただし、通常保育料以外の費用(給食費など)は対象外です。

国による「幼児教育・保育の無償化(幼保無償化)」では、3歳から小学校入学までの期間、幼稚園・保育園・認定こども園の利用料が無料です(0〜2歳は住民税非課税世帯のみ無料)。

第2子以降の保育料は、未就学の最年長の子供を1子目として0〜2歳の第2子は半額、第3子以降は無料となっています。

自治体によっては独自に助成を設けていることもあり、例えば愛知県豊橋市は兄姉が18歳未満の場合、0〜2歳の第2子は保育料がかかりません。

おむつや給食費も無料

明石市では上記の他に、子どもが生後3ヶ月から1歳になる月まで、紙おむつなどの赤ちゃん用品を無料で毎月配達しています。

この取り組みは、配達に合わせて子育て支援員が保護者と対面することで、育児を見守り、支援することが目的です。訪問時に育児相談などもできます。

中学校の給食費無料化や、子ども食堂病児保育施設などの充実にも取り組んでいます。

子育て支援政策の財源は?

これらの子育て支援政策に割く予算は、どのように確保しているのでしょうか。

明石市は、土木費を大幅に削減することで子育て支援に費用を回しています。土木費とは、道路や河川、住宅など公共施設の建設や整備、維持管理にかかる費用です。

2010年度の歳出における土木費は122億円でしたが、2021年度は70億円となり、4割以上削減されています。

子育て支援政策のメリット

明石市の子育て支援政策には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

10年連続で人口増加

明石市の人口は2012年時点で約29万3000人でしたが、子育て支援に力を入れ、毎年人口が増加しました。

2022年には約30万4500人に達し、全国の中核市で人口増加率が最も高い自治体となっています。

統計によると、子育て世代である20〜30代を中心に周辺自治体から転入者が増えています。人口の増加により、住民税や固定資産税の市税収入も増えました。

「住みたい街」として人気

民間企業による各種のランキングで、明石市は人気上位となっています。

2022年に兵庫県民を対象とした「住みたい自治体」では、県外も選択肢にある中で2位となりました(1位は同県西宮市)。他に、「全国戻りたい街ランキング2021」では1位、「本当に住みやすい街大賞2022 in関西」では明石市の西明石エリアが1位にランクインしました。

子育て支援政策のデメリットや懸念

子どもを持つ世帯にとってはもちろん、市政にもメリットのある子育て支援政策ですが、懸念されていることもあります。

待機児童問題

2022年4月時点で認可保育園に入所を希望しても入れなかった「待機児童」が、明石市では100人となりました。全国の自治体の中で3番目に多くなっています

2018年には待機児童数が全国で最も多い571人となったこともあります。

子育て世帯が転入し子どもが増加することで、保育施設や保育士などの数が足りなくなる傾向が指摘されています。

土木費削減の影響

明石市は子育て支援政策に多くの財源を割く一方で、道路や河川の整備など公共インフラにかかる費用を減らしています。土木費削減による今後の影響が懸念事項です。

また、企業誘致や産業振興に積極的でないという指摘もあります。

子どもが成長すると人口流出?

現在は子育て世代が多く転入していますが、子どもが大きくなると転出するのではないかとも言われます。進学や就職で地元を離れ、戻らない人が多ければ、人口が流出する可能性があります。

泉房穂市長が退任へ

現職の泉房穂市長は、積極的な子育て支援政策が評価されてきました。2024年に発足する「こども家庭庁」に関する参考人として、参議院内閣委員会に呼ばれ意見を述べたこともあります。

しかし、自身の問責決議案を巡り、市議に暴言を吐いたなどとして問題になりました。責任を取り、2023年4月の任期満了をもって退任することを表明しています。

新しい市長の政策によっては市政の方向性が変わることも考えられ、次期市長選に注目が集まっています。

泉市長は自らが代表となる政治団体を設立し、市長選・市議選に候補者を擁立する意向を示しました。

まとめ

  • 兵庫県明石市は、高校生以下の医療費無料や、おむつの無料配達など、所得制限のない手厚い子育て支援政策で知られる
  • 2011年に就任した泉房穂市長が積極的に政策を進めてきた
  • 10年連続で人口が増加し、住みたい街として人気を集めている
  • 子育て政策の財源確保に土木費を削減していることや、待機児童が多いこと、泉市長の退任による市政方針の変更などが懸念されている

 

<参考>
あかしってどんなまち?/明石市
笑顔のタネあかし/明石市
推計人口/明石市
東経135度と日本標準時 | 明石市立天文科学館
明石焼(玉子焼)の達人 | 一般社団法人 明石観光協会
子育てするならやっぱり明石
医療費無料化を高校生にも拡大方針 東京都、23年度実現に向け関連予算
小児医療費助成 横浜市
保育料/明石市
幼児教育・保育の無償化概要: 子ども・子育て本部 – 内閣府
兵庫県明石市の子育て支援がすごい!どう実現しているのか、自治体ごとの差のワケとは?
所得制限なく第2子の保育料無償化&副食費補助!
0歳児見守り訪問「おむつ定期便」 – 明石市
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総務省|令和3年版 地方財政白書|第1部 4 地方経費の内容
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明石市長が政治団体を設立へ 市長・市議選に候補擁立: 日本経済新聞
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