国債とは?発行の目的や仕組み、財政から見た位置づけを紹介

国債とは?発行の目的や仕組み、財政から見た位置づけを紹介

「国債」とは、いろいろな事業を行う資金を調達するために、国が発行する債権のことです。

なんとなく聞いたことはあるけれど、具体的にどのようなものなのか、詳細はよくわからないという方も多いかもしれません。

国債はいったいどのような目的で発行され、日本の財政のなかでどのような位置づけとなっているのでしょうか。

国債を発行して資金を集める仕組み、日本の財政における国債発行の状況などについて、解説します。

国債とは

国債とは、国が発行する債券のことです。

債券とは発行元が投資家などからお金を集めるために発行するもので、満期になる(その債券に設定されている期日がくる)と、発行元は債券を購入した投資家に対して利子をつけて元本を戻す仕組みです。

例えば、A会社が1年後に満期となる100万円の債券(会社が発行する場合は社債と呼ぶ)を発行したとしましょう。

投資家はその債権を100万円を出して購入し、債権を発行したA会社は満期となる1年後に、投資家に対して利子をつけて元本100万円を戻します。

A会社は、一般的に銀行などから借金をするよりも低い利率で資金を集めることができ、投資家は、利息という形で手元の資金を増やすことができます。

国債の場合は、債券を発行するのが国であり、銀行や個人の投資家などが国債を購入しています。

国がいろいろな政策を実行するには、当然お金がかかります。

税金などの収入だけだとお金が足りない場合、国債を発行してお金を集めているのです。

そのため、国債は「国の借金」と表現されることもあります。

国債の種類

国債は大きく分けると、主に普通国債と財政投融資特別会計国債(財投債)と呼ばれる二つに区分されます。

普通国債とは、国の歳出を賄うために資金を調達するもので、公共事業などの財源として発行される建設国債や、東日本大震災の復興施策に充てられる復興債などがあります。

財投債とは、民間では対応困難な大規模・長期プロジェクトの資金を調達するものです。

普通国債と財投債とでは、会計上の分類も異なります。

普通国債は税金などを償還財源(利払いや満期の支払いにあてるお金)としています。

一方で、財投債はこうした支払いに税金を使わず、財政融資資金の貸付(国会の議決に基づいて、政策的に支援すべき事業を行っている独立行政法人などに対して、財投債により調達した資金を貸し付けること)に関する回収金などによって賄われています。

そのため、財投債は一般政府の債務には分類されない仕組みとなっています。

日本の財政からみた国債

財務省が公開している資料などによると、普通国債残高は右肩上がりで、2022年度末には1,029兆円に上る見込みとなっています。

日本の対GDP比でみた債務残高は2倍を超えており、主要先進国の中で最も高い水準です。

2022年度の補正後予算をみてみると、国の一般会計歳入110.3兆円のうち、約三分の一が国債により調達された収入です。

税収は約三分の二にとどまり、税収だけでは賄えていない状態です。

ただ、こうした「日本は借金大国」という見方がある一方で、日本の国債残高はその償還の仕組みなどから考えると問題ないという意見もあります。

資産額などからみて、現状では日本の財政破綻はありえず、「このままいくと大変だ」と危機感をあおっている、という見方です。

そうした意見を持つ人たちからは、増税への理解を得るために印象の強い数字をピックアップして大げさにアナウンスされている、という指摘もされています。

ちなみに、発行された国債の半分近くは日本銀行が保有していますが、一方で個人でも購入することが可能です。

個人向け国債を購入すると、個人として国に一定期間お金を投資することになります。

そして、定期的に利子を受け取るほか、満期になれば元本の返済を受けることができます。

国債残高は今後どうなるか

政策に必要な費用を国債に頼らずに税収などで賄えるよう、政府は2025年に基礎的財政収支を黒字化することを目標としています。

しかし、社会保障費増大などで歳出は増え、一方で税収は伸び悩んでいるのが現状です。

2022年に出された骨太の方針をみると「2025年の黒字化」目標は継続しているものの、社会保障以外にも脱炭素社会の実現、防衛関係など大きな支出が見込まれる政策が計画されています。

それに伴い、「GX経済移行債(企業の脱炭素分野への投資を支援するため検討されている新たな国債)」という新しい国債の発行も予定されています。

こうした状況から、実質2025年の黒字化は難しいという見方も強くあります。

まとめ

  • 国債とは国が発行する債券で、「国の借金」ともいわれる。
  • 2022年度補正後予算の国の一般会計歳入110.3兆円のうち、約三分の一が国債により調達されている。
  • 「日本は借金大国」という意見がある一方で、国債残高は償還の仕組みや日本の資産を考えるとそれほど問題はないという見方もある。
  • 個人でも国債を購入できる。個人向け国債を購入すると、個人として国に一定期間お金を投資することになる。
  • 政府は国債依存の財政を健全化し、2025年に基礎的財政収支を黒字化することを目標としているが、達成は難しいという見方もある。

 

<参考>

日本銀行 | 国債にはどのような種類がありますか?
財務相 | 国債とは
財務相 | 財政投融資(国からの資金の貸付・投資)
財務相 | 日本の財政を考える
財務相 | 個人投資家の皆様へ
野村證券 | 財投債
ザイ・オンライン | 「国民1人当たり1000万円の借金」は真っ赤な嘘。純負債比率はG7で低く、財政破綻の可能性はゼロ。国の成長や賃金上昇に向け、ケチケチせず借金せよ
PHPオンライン衆知 | 先進国で増え続ける借金…それでも「日本は財政破綻しない」と言えるワケ
第一生命経済研究所 | 骨太方針2022のポイント(財政目標編)
NHK | 基礎的財政収支 黒字化目標の2025年度でも6兆円余赤字の可能性
NRI | 新しい資本主義の軌道修正と骨太の方針:財政規律の後退に懸念
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