政治におけるリコールとは?条件や事例を紹介

政治におけるリコールとは?条件や事例を紹介

「政治家のリコールって何?」
「リコールはどうやってやるもの?」
「過去のリコールの事例を知りたい」

政治におけるリコールとは、議員の解職や議会の解散などを請求することで、住民・国民が持っている権利の1つです。

本記事では政治におけるリコールや、リコールと直接請求権との関連について解説。過去のリコール事例も紹介しています。

リコールとは

リコール(recall)は、主に次の2つの意味で使われる言葉です。

① 公職にある者を有権者の意思により解職すること。また、それを要求すること。日本では、最高裁判所裁判官の国民審査、地方公共団体の長や議員などの解職請求および議会の解散請求などが制度化されている。

② 製品に欠陥があるとき、生産者が公表して製品を回収・修理すること。自動車では、生産者が国土交通省に届け出て消費者に製品の回収を伝える。

引用元:スーパー大辞林

①は本記事で解説する「政治用語としてのリコール」で、②は製品に欠陥があった際に公表、回収などが行われる意味で使われます。

政治用語としてのリコール

政治用語としてのリコールは、公職にある者について、任期の満了を待つことなく解職を求める手続きのことを指します。

解職の対象は次のように、個人ではなく議会であるケースもあります。

  1. 議会等の組織全体
  2. 議員、地方自治体の首長等の選挙によって選ばれた公職者
  3. 一定の官職以上の任命職公務員

リコールは通常、一定数以上の有権者からの解職請求がなされた上で、国民投票に付される流れになっていますが、最高裁判所裁判官に関しては、日本国憲法79条で国民審査の制度が設けられています。

第七十九条 ② 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。 ③ 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。

引用元:日本国憲法 | e-Gov法令検索

リコールに必要な署名数は選挙人名簿登録者数の3分の1以上(選挙人名簿登録者数が40万以下の場合)で、選挙人名簿登録者数が40万人を超える場合等については、別に規定されています。投票の結果、賛成が有効投票数の過半数を超えれば解職、解散が成立します。

地方自治法では、次のように解職請求制度が規定されています。

  1. 地方議会に対する解散請求(地方自治法第76条)
  2. 地方議会の議員(地方自治法第80条)都道府県知事、市町村長に対する解職請求(地方自治法第81条)
  3. 副市長、選挙管理委員、監査委員など(地方自治法第86条)教育長、教育委員(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第8条)

リコールは間接民主制の形態の1つ

リコールは下記の「国民投票」のうちの1つとされています。

  1. 国民表決(referendum)
  2. 国民拒否(popular veto)
  3. 国民発案(initiative)
  4. 国民意思表示(prebiscite)
  5. 国民解職(recall)

1〜4は国民による意思表示が、国家意思の形成に直接に影響を及ぼすものであることから、「直接民主制の形態」とされています。

5のリコール(国民解職)は直接請求権の1つではありますが、直接民主制ではなく間接民主制の形態として位置づけられるべきとの指摘があります。

国民解職は国家意思の形成に関わる公務担当者の 罷免・解職が目的であり、それを通じて間接的に国家意思の形成に影響を 及ぼすものであることから、選挙と同様に間接的な参政方法(間接民主制 の形態)として位置付けられるべきであるとの指摘がなされている。
引用元:「国民投票制度」に関する基礎的資料 

リコールの事例

過去に行われたリコールの事例を紹介します。

  • 町議会・町長のダブルリコール
  • 都道府県議会議員に対する初のリコール成立
  • リコール不成立も次の選挙で敗退

町議会・町長のダブルリコール

2012年、山梨県西桂町で石田寿一町長の解職と町議会解散のダブルリコールが成立した事例です。

前年6月に行われた町長選後に石田町長の名前で約30人の有権者に対してうなぎのかば焼きが届いたことから、町長派と反町長派が対立したのが発端とされています。

この問題の是非を問うダブル住民投票の結果、いずれも賛成が過半数を占めてリコールが成立しました。

なお、住民投票実施に必要な署名数と有権者数は次の通り、いずれも実施に必要な3分の1を超えました。

  • 町長解職:1375人
  • 町議会解散:1459人
  • 有権者数:3721人

都道府県議会議員に対する初のリコール成立

都道府県議会議員に対するリコールが成立した初の事例です。

無免許運転で道交法違反罪の有罪が確定した広島県の正木篤県議について解職請求の是非を問う住民投票が行われた結果、賛成票が有効投票の過半数を占め、リコールが成立しました。

総務省によると「都道府県議のリコールは把握していない」としており、全国初とみられています。

開票結果は次の通り、賛成が約95%を占めました。

  • 賛成:45,812票
  • 反対:1,969票
  • 投票率39.3%

正木氏は2011年4月の県議選に初当選後、6月に無免許運転で現行犯逮捕され、有罪判決を受けました。逮捕の際、他人の名前を申告するなど虚偽の説明をしたほか、免許はその8年前に失効していたそうです。

これを受け県議会では辞職勧告決議案を2回可決しましたが、正木氏は応じなかったため、住民団体がリコールを請求したという流れです。

リコール不成立も次の選挙で敗退

2012年、静岡県川根本町の佐藤公敏町長の解職と議会解散の是非を問う住民投票が行われましたが、結果いずれも不成立となった事例です。

町が進めていた光ファイバー敷設事業に対し、前年の11月の町民アンケートで反対意見が多数を占めたことから、佐藤町長が事業の白紙撤回を決めました。

これにより町政が混乱、その責任は町長と議会にあるとして、有権者の3分の1を超える署名を集めて住民投票を求めました。投票の結果、賛成が有効投票数の過半数に及ばなかったため、不成立となりました。

なお、2013年10月6日に行われた川根本町長選挙に佐藤町長も立候補しましたが、落選。旅館業を営む鈴木敏夫氏が当選しました。

まとめ:政治におけるリコールについて

本記事では、政治用語としてのリコールについて解説しました。以下に内容をまとめます。

  • リコールとは、公職にある者について解職請求すること
  • リコールの対象は議会等組織全体のケースもあり、この場合は解散請求という
  • リコールを行うには有権者の3分の1以上の署名が必要になる(有権者数40万人以下の場合)
  • 投票の結果、賛成が過半数を超えれば解職、解散が成立する
  • リコールは直接請求権の1つだが、間接民主制の形態として位置づけられるべきとの指摘がある

 

<参考>
​​直接請求制度について/壱岐市 
うなぎ宅配でダブル住民投票へ/西桂町長と議会のリコール | 全国ニュース | 四国新聞社
町長・議会、リコール成立 山梨県西桂町 
県議のリコール初成立 広島、無免許運転で有罪: 日本経済新聞 
町長と議会Wリコール住民投票が告示 静岡・川根本町 – 選挙 
川根本町長選挙 – 2013年10月6日投票 | 候補者一覧 | 政治山 

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