再選挙と補欠選挙の違いは?両選挙の概要や違いをわかりやすく解説!

再選挙と補欠選挙の違いは?両選挙の概要や違いをわかりやすく解説!

ニュースで「○○議会議員の補欠選挙がある」という報道を目にすることが多い中で、「再選挙」が行われるというニュースもよく見かけます。

再選挙と補欠選挙は何が違うのか?

再選挙や補欠選挙はどのような時に行われるのか?

よくわからないという方もいるでしょう。

この記事では、再選挙と補欠選挙がどのような時に行われるのか、両選挙の概要や違いと併せてわかりやすく解説します。

再選挙とは?

再選挙とは、公職選挙法選挙で決められている制度です。公職選挙法109条・110条に、衆議院議員・参議院議員・地方公共団体の長・地方議員の再選挙についての規定があります。

簡単に言えば再選挙は、選挙が行われても当選人がいない時、または決められた必要な当選人(定数)が不足する時に行われる選挙です。

再選挙は、一人の不足でも行われる場合と、一定の不足数に達した時に行われる場合があります。

再選挙になるのはどんな時?実施時期は?

再選挙が行われるのは、大きく分けると次の2つの場合です。

  1. どの候補者も法定得票数を獲得できなかった場合
  2. 当選が無効になった場合(補欠選挙になる場合もある)

1.の「法定得票数」とは、選挙ごとに決められている当選に必要な得票数のことです。(公職選挙法95条)

法定得票数

  • 衆議院小選挙区選出議員選挙:有効投票総数の1/6以上の得票
  • 参議院選挙区選出議員選挙:有効投票総数/当該選挙区内の議員定数の1/6以上の得票
  • 地方公共団体議会議員選挙:有効投票総数/当該選挙区内議員定数の1/4以上の得票
  • 地方公共団体の長選挙:有効投票総数の1/4以上の得票

衆議院と参議院の比例代表選出議員については、法定得票数はありません。

法定得票数は、有効投票のうち一定以上の得票がない候補者は有権者全体から支持されていると見られないとして、設けられた仕組みです。立候補者の乱立を防ぐ狙いがあります。

公職選挙法の供託金(法務局などの供託所に供託された金銭)の制度は、これを担保するための仕組みです。立候補者の得票が一定数(供託金没収点)に達しない場合は、供託金没収となります。(公職選挙法92条・93条)

供託金の額と供託金没収点は選挙によって異なりますが、衆議院・参議院の選挙区選挙や都道府県知事選挙では供託金が300万円、供託金没収点は有効得票数の1割とされています。

2.の当選が無効になった場合とは、当選人が選挙の期日後において被選挙権を有しなくなつたとき、当選人が兼職禁止の職にある場合や失格したとき、当選人が死亡したとき、などです。

再選挙の実施期日は、次のとおりです。

  • 国政選挙:当選人が定員に満たない・選挙無効の場合は、原則として40日以内に、その他の場合は統一補欠選挙と同日に実施(公職選挙法33条の2)
  • 地方選挙:原則として50日以内に実施(公職選挙法34条)

補欠選挙とは?

補欠選挙」は、選挙区で欠員が出たときに、それを補うために行われる選挙です。最下位当選者の次に該当する候補者を当選とする「繰上当選」などによっても議員の定数が不足する場合に補欠選挙が行われます。

解散に伴って全国一斉に行われる衆議院議員総選挙などとは違う特別選挙です。補欠選挙の当選者の任期は、前任者の任期の残任期間です。

補欠選挙になるのはどんな時?実施時期は?

欠員が生じるのは、投票後の任期開始日以降に当選人の死亡や議員辞職があった場合です。

ただし、比例代表選出議員は、基本的に繰り上げ当選で欠員を補充できますので、補欠選挙が実施されたことはありません。

補欠選挙の実施時期は、次のとおりです。

  • 国の選挙の場合、原則として、補欠選挙は年2回、4月および10月の第4日曜日に行われます。これを「統一補選」と言います。
  • 地方公共団体の場合は、首長選挙等の他の選挙が行われる時はその選挙に合わせて議員の補欠選挙を行います。

再選挙と補欠選挙の違い

「再選挙も補欠選挙も一度行われた選挙がもう一度行われる点で同じではないのか」と思うかもしれませんが、再選挙と補欠選挙は異なります。

両者の違いは選挙が行われる理由にあります。簡単に言うと、次のとおりです。

  • 再選挙は、当選や選挙自体が無効になった場合に行われる選挙
  • 補欠選挙は、選挙で当選した人が議員になった後に死亡や退職し、議員の定数に欠員が生じた場合に行われる選挙

議員が足りなくなった場合でも、当選が無効になった場合は、補欠選挙ではなく、再選挙になります。後で説明する2019年7月の参議院議員選挙で河井案里元議員が公職選挙法違反に問われ有罪確定前に辞職しましたが、有罪が確定し当選が無効になったため、補欠選挙ではなく、再選挙になりました。

再選挙・補欠選挙の実施例

再選挙・補欠選挙の実施例は以下の通りです。

再選挙の実施例

再選挙の実施はそれほど多いことではありませんが、国政選挙・地方選挙でいくつかの事例があります。再選挙では当初の選挙でトップだった候補が当選することがほとんどです。

国政選挙

法定得票に達しなかった例

  • 1946年衆議院議員総選挙:東京2区と福井全県区の最下位当選枠各1名分が法定得票に達せず再選挙
  • 1954年衆議院議員選挙:奄美群島復帰法に基く選挙で8人が立候補、法定得票数に達せず再選挙

選挙無効の判決が確定した例

  • 1949年衆議院議員総選挙新潟2区:選任立会人の立ち会いが行われなかったこと等のため一部選挙無効となり再選挙
  • 1953年参議院議員選挙全国区:栃木県佐野市投票所で候補者所属党派名を誤記し、再選挙
  • 1992年参議院議員選挙愛知県選挙区:選挙公報記載の学歴詐称で当選無効となり再選挙
  • 2019年7月参議院議員選挙広島選挙区:公職選挙法違反で河井案里議員が有罪確定、当選が無効になったため2021年4月再選挙

地方首長選挙

公職選挙法施行以降、法定得票数に達した候補者がいないために再選挙となった首長選挙の例は、以下の6例があります。

  1. 1979年4月千葉県富津市長選挙:当初選挙に5人が立候補、3位の候補が再選挙で逆転勝利
  2. 1992年2月奈良県広陵町長選挙:当初選挙に7人が立候補、上位1名と新人2名が再選挙に立候補
  3. 2003年4月札幌市長選挙:当初選挙に新人7人が立候補、上位2名と新人2名が再選挙に立候補
  4. 2007年4月宮城県加美町長選挙:当初選挙に5人が立候補、上位4名が再選挙に立候補
  5. 2017年1月鹿児島県西之表市長選挙:当初選挙に新人6が立候補、上位4名が再選挙に立候補
  6. 2017年11月千葉県市川市長選挙:当初選挙に新人5人が立候補、3名が再選挙に立候補

地方議会選

地方議会選では1971年の大阪府議会選 河内長野市選挙区で再々選挙が行われた事例があります。

補欠選挙の実施例

以下では、2021年に行われた国政選挙における補欠選挙例を記載します。

    • 2021年4月衆議院北海道2区:吉川貴盛元農林水産大臣の議員辞職に伴う
    • 2021年4月参議院長野選挙区:羽田雄一郎元国土交通大臣の死去に伴う
    • 2021年10月参議院山口選挙区:衆議院山口3区にくら替え立候補した林芳正元文部科学相の辞職に伴う
    • 2021年10月参議院静岡選挙区:静岡知事選に出馬した岩井茂樹議員の辞職に伴う

海外では決選投票もある

候補者の得票数が所定の得票数に満たなかった時の対応として、海外では決選投票が行われることもあります。

たとえば、フランスの大統領選挙は過半数の得票が必要です。誰も過半数を獲得できなかった時は、上位2人による決選投票を行います。200017年のフランス大統領選挙では、決選投票で、中道系マクロン前経済相が極右政党のルペン候補を破って大統領となりました。

日本でも、内閣総理大臣指名選挙は、どの候補も過半数を得られなかった場合、上位2候補によって決選投票が行われます(衆議院規則18条3項・参議院規則20条3項)。

また、地方首長選挙では、1952年までは決選投票制がありました。しかし、同年に法定得票数が有効得票数の8分の3から4分の1に引き下げられ、再選挙制へ移行しました。

まとめ

再選挙と補欠選挙の違い、どのような時に行われるものなのかを、実施例を含めて解説しました。

再選挙や補欠選挙の結果は、その後の国の政治情勢に大きく影響を及ぼすことがあります。選挙の種類はいろいろありますが、それぞれの目的や実施の仕方をよく理解しておくことが大切です。

この記事を参考にされて選挙や政治関連のニュースへの関心をより深めていただければ幸いです。

 

<参照>

総務省「選挙」

jiji.com「参院広島、4月に再選挙 補欠選挙との違いは?―ニュースQ&A」

選挙ドットコム「一番多く得票したのにやり直し!?「再選挙」が行われるケースとその事例」

NHK選挙Web「選挙を知ろう 再選挙ってなに?」

NHK北海道「補欠選挙を調べました」

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