時々ニュースで耳にする投票制度の国民投票や住民投票。
国民投票や住民投票は、衆議院議員選挙などの主だった選挙の投票と違って「なんとなく気にはなっているけど、今まで深く知る機会が無かったからよく分からない」という方の多い投票制度だと言えます。
本記事では、少し分かりづらい国民投票と住民投票について簡単に解説しながら、実際に行われた事例をもあわせてご紹介します。
国民投票とは?
ここでは、
- 国民投票の概要
- 国民投票の流れ
- 国民投票の過去の事例
上記、国民投票に関する内容についてご紹介します。
国民投票の概要
国民投票は憲法を改正する際、国民にその是非を問うための投票方法です。
衆議院議員選挙などと同様に、満18歳以上の日本国民から投票権が与えられ、憲法改正が国民の意思に沿ったものなのかという確認が行われます。
国民投票の流れ
国民投票が行われる流れは、以下の通りです。
1.憲法改正の発議
①国会議員(衆議院100人以上・参議院50人以上)の賛成により原案が発議→②衆参の両議院で憲法審査会による審査後、本会議へ→③本会議での可決(それぞれの議会で3分の2以上の賛成があった場合)→④憲法改正の発議をし、期日を発表
2.国民投票についての説明
公報やテレビ放映、新聞広告などによって、今回の国民投票がどのような内容なのか説明します。
3.投票
有権者の本人確認があった後、投票用紙を使って「賛成」か「反対」に丸をつけます。(期日前投票は14日前から実施できます。)
4.開票
結果は官報で公表されます。投票数の2分の1が賛成だった場合、憲法改正の手続きがなされます。
過去の事例
国民投票は、日本で行われたことはありません。
諸外国の場合、フランスやオーストラリア、カナダなどで行われています。
住民投票とは?
こちらでは、
- 住民投票の概要
- 住民投票の流れ
- 住民投票の過去事例
これらについてご紹介します。
住民投票の概要
住民投票とは、地方公共団体の住民が、ある特定の物事について意思を伝える制度のことです。
投票権は、その地方自治体に住所がある満18歳以上で、3ヶ月以上住民基本台帳に記載されている人が持ちます。(外国人の場合は3年以上の住民基本台帳に記載が必要です)
住民投票の種類
住民投票には、大きく分けて3つの種類があります。
<地方自治特別法によるもの>
<直接請求によるもの>
→「議会の解散請求」「首長・議員の解職請求」
<条例によるもの>
→「常設型」「個別型」
住民投票の流れ
住民投票の流れは、種類によって変わります。
○地方自治特別法に関する住民投票の場合
1.国会での議論
議題となる法律に関して、国会内で議論が行われます。
2.各関係機関に通知
①内閣総理大臣(議決通知)→②総務大臣→③関係地方公共団体の長→④選挙管理委員会に通知
上のような順番で通知が行われます。
3.住民投票の実施
4.投票結果の反映
有権者の過半数の賛成(同意)があった場合、法律が制定されます。
○議会の解散/首長・議員の解職請求に関する住民投票の場合
1.署名活動
議会の解散や解職などの議題に関して署名活動を行います。
2.住民投票を行うことを求める(直接請求)
有権者の3分の1の署名が集まった場合、地方自治体の選挙管理委員会に住民投票の実施を求めます。
3.住民投票
4.投票結果の反映
過半数以上の賛成が得られた場合、失職や解散がなされます。
○常設型の住民投票の場合
- 条例に定められた事案が発生
- 住民投票の実施
- 投票結果の反映
○個別型の住民投票の場合
- 首長・議員による直接請求
- 議会の議決
- 住民投票の実施
- 住民投票の結果を反映
※常設型と個別型は自治体の条例ごとに内容が異なります。
過去の事例
過去の住民投票には、以下のような事例がありました。
<事例1>大阪府 大阪都構想について
住民投票の種類:法律によるもの(法的拘束力あり)
投票結果:否決
結果からの対応:大阪都構想は実現せず
<事例2>沖縄県 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に関する埋め立ての賛否
住民投票の種類:条例によるもの(法的拘束力なし)
投票結果:7割以上が反対
結果からの対応:「埋め立てを止めるか要検討する」と発表後、しばらくたって埋め立てが開始される
<事例3>埼玉県 エスカレーターの利用者に立ち止まって乗ることを求める条例
住民投票の種類:条例によるもの(法的拘束力なし)
投票結果:可決
結果からの対応:罰則はないものの、自治体が管理者に対して注意・勧告などが行えるようになった。
住民投票の議題にはさまざまな内容があり、住民の投票が今後を左右するものだと言えます。
国民投票と住民投票の違いは?
国民投票と住民投票には、投票内容の対象が異なることと、法的拘束力の有無に違いがあります。
投票内容の対象が異なる
まず、違いとして挙げられるのが「投票の対象が異なる」という点です。
国民投票の対象が「憲法改正のみ」なのに対して、住民投票は「居住地域における条例と法律について」という広い範囲で適応されます。
したがって、行う機会が多いのは、住民投票の方でしょう。
法的拘束力があるかどうか
国民投票の場合、賛成多数の時は憲法改正、否決された時は憲法改正がなされない、という結果に対する対応がはっきりしています。
しかし、住民投票が行われるほとんどが条例に基づくものであるため、ほとんどの場合、結果に対しての法的拘束力がありません。
そのため、住民の意思が反対であっても自治体の長が「検討する」と言うだけで、そのまま押し切られてしまうケースが後を立ちません。
まとめ
本記事では、
- 国民投票について
- 住民投票について
- 国民投票と住民投票の違い
これらの観点について解説しました。
今後国民投票や住民投票を行うかはあなたの住む地域などの要素によりますが、知っておけばいざその立場になった時に役立ちます。
今回の記事で紹介した内容が、各投票制度の内容や違いについて覚えるきっかけになれば幸いです。
<参考>
総務省ホームページ「国民投票」https://www.soumu.go.jp/senkyo/kokumin_touhyou/index.html
国立国会図書館デジタルコンテンツ「諸外国の ㉖ 国民投票法制及び実施例 (2019年版)」https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11253574_po_201801a.pdf?contentNo=1
香川高松市資料「住民投票制度について」https://www.city.takamatsu.kagawa.jp/kurashi/shinotorikumi/keikaku/jichi/kihon/keika/iinkai/6.files/11669_L23_sannkousiryou6-8.pdf
神奈川横須賀市資料「住民投票の流れ」https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/0830/jichi/documents/benkyoukai_sankoushiryou.pdf
北海道苫小牧市資料「条例に基づく住民投票の実施事例」https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/files/00009800/00009854/08jissijirei.pdf
日本経済新聞「「大阪都」1万7167票差で否決 データで見る住民投票」https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/osaka-metropolis-plan_review/
日テレNEWS24「エスカレーター立ち止まって乗る 条例可決」https://news.yahoo.co.jp/articles/dc7e70bf75008e8deb3b4991ac3393e20dec6854
THE SANKEI NEWS「条例に基づく住民投票に法的拘束力なし 沖縄で県民投票条例可決」
https://www.sankei.com/article/20181026-6QDWR7GDXRMZPLX6667W2NBBSA/
白岡市資料「住民投票(条例)制度について」http://www.city.shiraoka.lg.jp/secure/7186/shiryo11-1.pdf
国立国会図書館デジタルコンテンツ「地方自治特別法の制定手続について ―法令の規定及びその運用を中心に―」https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_999583_po_070503.pdf?contentNo=1
Yahoo!ニュース「【Q&A】「普天間飛行場の辺野古移設問題」って何?」https://news.yahoo.co.jp/articles/6132eb7624764093c20a04c94c73b5e7b95098eb