欧米の選挙時などに報道で耳にする「ポピュリズム」という言葉。
今回は、ポピュリズムとは何か、実例を紹介しながらわかりやすく解説します。
ポピュリズムとは
ポピュリズムは、もともと民衆が既存体制の打破や知識人などエリートによる政治を批判する政治運動のことを指していました。
しかし、近年は日本語では「大衆迎合主義」と訳され、選挙に勝つために大衆受けする政策ばかりを掲げることに対して、否定的な意味で多く用いられています。
ポピュリズムの問題点と良い点
ポピュリズムには、危険性とメリットの両方が指摘されています。
ポピュリズムの危険性
ポピュリズムは、カリスマ性を持つ強い指導者が大衆を率いて成り立っていることがほとんどです。そのため、その指導者に権力が集中し、独裁に陥る危険性があります。
また、国民の不満や不安を煽り、敵をつくる傾向にあるので、社会の分断を生むことがあります。ポピュリズムでは社会的多数派を重視するため、少数派の排斥につながる恐れも。
国民の多数派からの支持を得ることを過度に重視し、表面的・一時的な利益を強調する一貫性のない政策になる可能性があります。
ポピュリズムの良い点
ポピュリズムには既存の体制に対し異議を唱え、変革をもたらすメリットもを持っています。
またポピュリズムには、大衆の利益を重視した政策を展開し、多くの人が関心のある問題を取り上げる傾向があるため、人々の政治への興味が高まります。
既存の政治に失望した人々がポピュリズムの台頭で、再び政治に関心を持つということも。
過去のポピュリズム
第二次世界大戦前に台頭したドイツのナチスはポピュリズム政党であったという見方をされることが多い傾向にあります。
ナチスは指導者のアドルフ・ヒトラーを中心に政治的プロパガンダを展開し、選挙で勝利を収め政権を獲得しました。
近年のポピュリズム
近年では、欧米においてポピュリズムが広がっているのではないかといわれています。
ここでは、ポピュリズムではないかといわれることの多い事例をご紹介します。
アメリカ-トランプ前大統領
2017年に就任したトランプ前大統領は、「America First(アメリカ第一主義)」を掲げ、貧困に苦しむ白人労働者層の支持をとりつけました。そして、多様性やマイノリティの重視に対し過激な発言をしたり、不法移民への強硬政策を行ったり、地球温暖化対策といった国際協調に反抗しています。
イギリス-EU離脱
2016年にイギリスは国民投票でEUから離脱することが決まりました。
シェンゲン協定によりEU域内で人の移動が自由なため、移民が増加し雇用が圧迫されている主張が繰り広げられました。また、経済レベルの低い東ヨーロッパ諸国など他の加盟国のしわ寄せを受けているという主張も。
日本におけるポピュリズム
日本でのポピュリズムは、欧米ほど盛んではありません。
しかし、日本でも過去にポピュリズムではないか、という見方をされた小泉政権がありました。
2001年(平成13年)から2006年(平成18年)まで首相を務めた小泉純一郎元首相は、「自民党を変える」「聖域なき構造改革」などのスローガンを掲げ世論の支持を得、ポピュリストではないかと指摘されていました。
ポピュリズムとマスメディア
ポピュリズムにおいては、マスメディアが大きな役割を果たします。
世論はマスメディアに影響を受けやすいものですが、ポピュリズムでは特に、メディアを巧みに利用し国民の感情をコントロールしようとする傾向があります。
この特徴が極端に表れた例が先ほど挙げたナチスです。
ヒトラーは、ラジオや映画などのメディアを用い、巧みな宣伝を行いました。
また、政権を獲得してからは、反政府的な情報をすべて統制しました。
近年では、SNSもポピュリズムの拡大と関連しています。
トランプ前大統領はTwitterを頻繁に利用し、過激な発言を繰り返しました。また、新聞やテレビなどの報道内容に対し「フェイクニュース」だと批判しました。
ポピュリズムに対しては様々な見解がある
「ポピュリズム」については、研究者によって様々な見解があります。
ポピュリズムの意味合いや、どの政党がポピュリズム政党で、誰がポピュリストであるかというのも、人やメディアによって異なる場合があります。
<参考>
ポピュリズムとは?日本の現状やメリット・デメリットを徹底解説|政治ドットコム (say-g.com)
ポピュリズムとは | 民主主義との違い・各国での盛り上がり | Beyond(ビヨンド) (boxil.jp)
反EUのポピュリズムが理性に勝った日:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)
トランプ、文在寅…「天才的で魅力的」不安感の増す時代に現れる”ポピュリスト”の典型的特徴 | PRESIDENT WOMAN Online(プレジデント ウーマン オンライン) | “女性リーダーをつくる”
だれが何をしたら「ポピュリズム」なのか その本質を深く考えてみる:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)
ポピュリズム、それは危険な存在か、民主主義の促進剤か:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)
カリスマ講師は予備校で「トランプのポピュリズム」をどう教えているか トランプ的手法とは何だったのか | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
東京法令出版 『政治・経済資料2016』
浜島書店 『最新図説政経2019』
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