マドンナ旋風とは?土井たか子氏や女性議員について解説

マドンナ旋風とは?土井たか子氏や女性議員について解説

「マドンナ旋風」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

1989年の参議院選挙で、故・土井たか子氏が党首として率いた社会党(現在の社民党)が大勝し参議院の第1党になりました。社会党は女性候補者を多く擁立し、マドンナ議員と呼ばれる多くの女性議員が誕生しました。

マドンナ旋風の意味や当時の政治背景に加え、土井氏について、そしてジェンダー問題や女性の政治参画など、社会に与えた影響について解説します。

1989年参院選の「マドンナ旋風」とは?

1980年代後半、土井たか子氏を党首とする社会党は「マドンナ旋風」を巻き起こしました。

マドンナ旋風が起きた当時の政治背景は、どのようなものだったのでしょうか。

自民党に逆風、社会党が与党に

1989年の参院選は、政権与党である自民党に対する逆風が強かったと言えます。

その主な理由として、1988年に自民党の竹下登内閣で消費税導入に関する法律が決定したこと、そしてその後いわゆる「リクルート事件」が問題になったことが挙げられます。

リクルート事件を受けて竹下内閣は退陣に追い込まれ、宇野宗佑内閣となりました。自民党は世論の反感を買ったまま、1989年7月の参院選を迎えます。

土井氏が率いる社会党は消費税に反対し、参院選では女性候補者を多く擁立しました。

その結果、社会党は改選126議席中の46議席を獲得します。与党だった自民党は36議席にとどまり、社会党が参議院の第1党になりました。

この歴史的な与野党逆転を受け、土井氏が発言した「山が動いた」というフレーズが話題になっています。

当選した女性議員はマドンナ議員と呼ばれ、人数は倍増し全体で22人という結果でした。

女性の支持が背景に

マドンナ旋風の背景には、女性有権者の支持があります。

当時、自民党内閣は消費税導入やリクルート事件に加え、宇野首相の女性スキャンダルも問題になり、女性有権者の強い反感を買いました。宇野首相は参院選後引責辞任し、海部俊樹内閣となります。

一方で、消費税廃止を訴え、リクルート事件を追及した土井氏や、市民派のイメージを押した女性候補者たちが、主婦をはじめとして世論に強く支持されました。

土井たか子氏はどんな人?

マドンナ旋風の代表的人物である土井たか子氏は、どのような人物だったのでしょうか。

その来歴と、当時流行した発言やフレーズもみていきます。

「おたかさんブーム」、流行語も

土井氏は1928年に兵庫県で生まれ、同志社大学の非常勤講師を経た後、女性で全国初の神戸市の人事委員になりました。

その後社会党から出馬し1969年の衆議院選挙で初当選します。

1986年には、憲政史上初の女性党首として社会党委員長に就きました。

当時社会党は選挙で大敗しており、逆境の中で委員長となった土井氏が就任時に述べた「やるっきゃない(やるしかない)」という発言は、同年の新語・流行語大賞特別賞を受賞するほど話題になりました。

世論が土井氏を熱烈に支持した現象は「おたかさんブーム」「土井ブーム」と呼ばれ、前述の1989年参院選、そして1990年衆院選における社会党の躍進に繋がります。

初の女性衆議院議長に

しかし1991年の統一地方選で社会党は敗北し、土井氏は委員長を引責辞任します。

1993年に誕生した非自民連立政権の細川護煕内閣では、衆議院議長に就任しました。衆議院・参議院ともに初の女性議長でした。

その後、社会党が1996年に名称変更した社民党でも党首となりました。2005年に議員を退き、2014年に85歳で亡くなりました。

政治や社会への影響

マドンナ旋風や土井たか子氏は、その後の政治や社会にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。

男女平等社会への取り組み

土井氏は政治家として、当時根強く残っていた男女の不平等問題の解消に取り組みました。

例えば、それまで父系が優先されていた国籍法の改正や、男女雇用機会均等法の制定です。

これらは、その後の社会における性差別やジェンダー問題への意識を変えるきっかけになったと言えます。

女性政治家の活躍へ

おたかさんブームやマドンナ旋風は、政治家にとって女性有権者の声が無視できないものになるきっかけであったと同時に、女性の政治家が多く生まれる契機でもありました。

1989年の参院選で当選した女性議員の1人である堂本暁子氏は、参議院議員を務めた後に千葉県知事となります。就任当時、女性知事は3人目でした。

他にも「土井チルドレン」と呼ばれた女性政治家は、福島みずほ社民党党首や中川智子前兵庫県宝塚市長らが挙げられます。

土井氏が初めての女性議長を務めた国会では、2004年に扇千景氏が参議院議長に就任し、参議院初の女性議長となりました。参議院では2019年から現在も、山東昭子氏が女性では2人目の議長を務めています。

現在の女性議員は?

一方で、現在の日本は、海外と比べて女性の政治参画が遅れていると言われています。

国会における女性議員は衆議院が9.7%、参議院が23%にとどまり、前述の衆参議長や都道府県知事などの要職に歴代就いた女性の数も、多いとは言えません。

候補者男女均等法など政治参画における男女格差を是正する取り組みもありますが、解消されていないのが現状です。

社会全体でジェンダー問題が重視される中、女性がより政治参画しやすくなることが求められています。

現在の日本の女性議員については、こちらの記事もおすすめです。

日本に女性議員が少ない理由は?世界との比較と候補者均等法を解説 | スマート選挙ブログ

まとめ

・「マドンナ旋風」は、1989年の参議院選挙で女性議員が多く誕生したことに顕著

・「おたかさんブーム」と支持された土井たか子氏が代表的

・女性の政治参画などその後の政治や社会に影響を与えた

 

<参考>
『2021新政治・経済資料 三訂版』実教出版編修部、2021
1989年 社会が「マドンナ旋風」: 日本経済新聞
衆議院・参議院 選挙の歴史 | NHK選挙WEB
プレーバック選挙:89年参院選 社会党躍進「山が動いた」 | 毎日新聞
1989年の参院選 土井たか子らマドンナブームを振り返る
土井たか子(元社会党委員長)
土井たか子元衆院議長 写真特集:時事ドットコム
クロスロード:人生のとき 土井たか子は「戦友」 元国会議員秘書 五島昌子さん | 毎日新聞
「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン 新語・流行語大賞
分裂の社民党は消えてしまうのか | NHK政治マガジン
国籍法の解説
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堂本暁子
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