毎回選挙の時期になると、選挙カーから女性の呼びかける声が聞こえますね。これを聞いて「一体、なんのためにやっているのだろう」と疑問に思っている方も多いでしょう。
呼びかけているのは「ウグイス嬢」ですが、ウグイス嬢の仕事の意味、役割はどのようなことなのか知りたい、という方も多いかもしれません。
この記事では、ウグイス嬢は何のためやっているのか、仕事や役割をわかりやすく解説します。この記事をご覧になれば、ウグイス嬢の仕事や役割がよくわかります。
そもそもウグイス嬢とは
大辞林によると、「ウグイス嬢とは、球場や選挙カーなどでアナウンスを担当する声の美しい女性の俗称」とされています。広辞苑では、「(鶯(ウグイス)の美しい鳴き声にたとえて)電話交換手のこと。また、アナウンスを担当する女性」と記されています。
つまり、「ウグイス嬢」とは、美しくよく透る声を活かして仕事をする女性です。具体的な例を上げれば、選挙カーのアナウンスを担当する車上運動員や、野球場の場内放送などを担当するアナウンス係などが該当します。
ただ、「車上運動員」や「アナウンス係」との表現は、単に仕事内容を表すだけです。これに対して、「ウグイス嬢」と言えば、ウグイスのように「声が美しい」という意味合いが含まれてきて、イメージが変わります。
ウグイス嬢と呼ばれる由来は
野球場でウグイス嬢が誕生したのは、1947年に元NHKの女性職員を採用したのが始まりとされています。野球場での場内放送が好評を博したことから、マスコミが彼女達を美声で仲間を呼ぶウグイスにたとえて「ウグイス嬢」と呼び始めたのです。
選挙カーに乗る女性を「ウグイス嬢」と呼び始めた経緯ははっきりしませんが、野球場のウグイス嬢と同じように、美しい声で呼びかける様をウグイスにたとえたものです。
選挙におけるウグイス嬢の仕事は
選挙におけるウグイス嬢の仕事はどのようなことか、その内容と仕事の魅力などを解説します。
選挙カーからの連呼・呼びかけがメイン
候補者と並んで選挙カーの主役ともいえるのがウグイス嬢です。候補者の後方支援をする代弁者とも言えます。
具体的には、次の仕事がメインです。
- 候補者の名前を連呼したり、有権者に投票を呼びかけたりする
- 有権者に手を振る
ウグイス嬢が選挙カーに乗るのは、朝8時から夜8時までです。選挙期間中、早朝から準備をはじめ、夜遅くまでの勤務が連日続きますので、結構ハードな仕事です。そのため、選挙カーにウグイス嬢が複数名乗車し、交代でマイクを握ることもあります。
アナウンス原稿は、自分で準備する場合と、陣営が用意する場合があります。
ウグイス嬢はなぜ連呼する
ウグイス嬢が走行中の選挙カーから連呼するのには、理由があります。それは、公職選挙法で車上の選挙運動が禁止されているからです。
公職選挙法第141条の3(車上の選挙運動の禁止):
「選挙運動のために使用される自動車の上においては、選挙運動をすることができない」
ただし、これには2つの例外があります。
停止した自動車の上において、選挙運動のために演説すること
自動車の上において選挙運動のための連呼行為をすること
つまり、走行中の選挙カーからは「連呼行為」以外はNGなのです。「連呼行為」とは、「◯◯党の◯◯に投票をよろしくお願いします」などと、短い同一の文言を反復連続して呼称することです。連呼行為が認められるのは、選挙カーのほかは、演説会場・街頭演説の場所だけで、それ以外の場所での連行行為は禁止されています。(公職選挙法140条の2)
ウグイス嬢の仕事の魅力は
美声をウグイスにたとえてウグイス嬢と呼ばれる一方で、ヤジが飛んだり、中には「うるさい!」と怒鳴ったりする人もいます。心が折れることがあるかもしれません。
しかし、そんな時も自分の声一つで雰囲気を変えられる面白さがあります。何よりも、支持する候補者が当選した瞬間はやりがいを感じることでしょう。
ウグイス嬢になるには
選挙のウグイス嬢には、条件や資格があるのでしょうか。ここでは、ウグイス嬢の選び方、年齢制限や資格について説明します。
年齢制限や資格はない
選挙のウグイス嬢には、年齢制限や資格はありません。そのため、ウグイス嬢には誰でもなれますが、以下のような方から選ぶことが多い傾向にあります。
- 地元の人:候補者の関係者である主婦・OLなどで未経験の人も多い
- バスガイド系:通常はバスガイドなどをしており、シーズンオフなどのアルバイト
- 司会者系:ブライダルやイベントの司会者などのアナウンスのプロ
男性でもよいの
ウグイス嬢は、女性限定の仕事ではありません。選挙カーから有権者に呼びかける仕事は、男性でもできます。
実際に男性の車上運動員もいますが、ウグイス嬢ではなく、「カラス」「カラスボーイ」などと呼ばれています。男性の場合、黒系統のスーツ姿が多いことから、カラスにたとえられたという説が有力です。
車上運動員は、ご説明したようによく透る声とともに、体力勝負の面もあり男性の出番も十分あります。
ウグイス嬢の報酬は
原則として選挙運動を行う人に対しては報酬を支払えません。車上運動員(ウグイス嬢)など一部例外的に報酬を支払える人がいます。ただし、以下のとおり報酬額の上限などが決められています。( 公職選挙法197条の2)
- 車上運動員であるウグイス嬢の一日の報酬額は、15000円以内( 公職選挙法施行令129条4項)
- 報酬を支払える人数には制限があり、支払う場合は事前に選挙管理委員会への届け出が必要
この法律の規制に違反して、ウグイス嬢に限度額を超える報酬を支払い、逮捕された事例もたくさんあります。
最近では、2021年の参議院議員選挙における河井案里元議員の陣営による選挙違反です。上限の2倍である1日3万円の報酬をウグイス嬢に支払った事件です。もちろん違法で、河井議員らが逮捕され有罪が確定しています。
ウグイス嬢という呼び方は問題ないの
最近では、不必要に性別を表す言葉は差別的だとして使われなくなってきています。「〇〇嬢」という表現もその1つです。それでは、「ウグイス嬢」という呼び方は問題ないのでしょうか。
報道機関のアンケート調査によると、「ウグイス嬢」の表現を、7割超は「問題あり」とする結果もあります。一方で、「問題ない」と「よくないが許容できる」を合わせると6割超です。
今の時代の用語としては問題があると感じる方が多いものの、イメージしやすく、許容される表現との受け止めもあり、ある程度受け入れられているという結果です。
報道機関でも、「ウグイス嬢」を使い続けている場合と、「車上運動員」と言い換えている場合があり、扱いが分かれています。賛否両論あるのが現状です。
まとめ
ウグイス嬢について、何のためやっているのか、仕事の意味や役割などを解説しました。
「ウグイス嬢」の仕事は選挙カーからの連呼がメインです。うるさいと感じる人もいるかもしれませんが、選挙運動で欠かすことのできないものです。
この記事を参考にして、ウグイス嬢の仕事の意味や役割なども考えていただき、選挙活動や政治により関心を持っていただければ幸いです。
<参照>
weblio「ウグイス嬢」
スポジョバ「【野球】ウグイス嬢とは?名前の由来やバイトは募集している?」
TOWN BAITO「選挙のウグイス嬢のバイトのおすすめ度は何%?楽?きつい?評判を徹底解説!」
公職選挙法
NHK選挙WEB「一体なぜ!? 連呼しつづける選挙カー」
HUFFPOST「選挙カーってうるさくない?」「名前を連呼する意味あるの?」
jiji.com「連呼行為【選挙ミニ事典】」
選挙ドットコム「選挙戦初日の朝 -うぐいす嬢のノウハウ」
とらばーゆ「120%の笑顔と明るい声で勝ち抜く」
jiji.com「声一筋30年、カリスマ異名「敵地もオセロのように」」
選挙ドットコム「ウグイス嬢の選び方 -うぐいす嬢のノウハウ-」
「ウグイス嬢になるには?」
北日本新聞社「ウグイス嬢の男性版を何という?」
政治山「選挙カーの声、女性はウグイス嬢、男性は?」
神奈川県「公職選挙法の罰則について」
政治山「選挙運動の手伝いは無報酬が原則」
日本経済新聞「ウグイス嬢、日当は1万5千円以内」
NHK「ウグイス嬢の報酬めぐり「河井ルール」」
毎日ことば「「ウグイス嬢」 7割超が「問題あり」だが」
ytb「新・ことば事情「ウグイス嬢」」