政権交代とは?仕組みや過去の事例について

政権交代とは?仕組みや過去の事例について

衆議院総選挙で話題になる「政権交代」。具体的にはどのような仕組みなのでしょうか。

政権交代とは、与党以外の政党が選挙で過半数の議席を獲得し、政権を担う政党が代わることです。

なぜ政権交代が起きるのか、どのような意味があるのか、また、日本で政権交代が起きた過去の事例や政権交代のメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。

政権交代とは?

選挙で多数の有権者の支持を集め、過半数の議席を得た政党が前の政権と交代することを政権交代と言います。

政権とは、国の統治機構を動かす政治権力です。

与党野党など政権の仕組みと、政権交代がどのように起こるのか概説します。

与党・野党とは?政権の仕組み

与党とは、政権を担う政党を指します。議院内閣制を採用している日本では、衆議院で最も多数の議席を得た政党が首相を選出し政権政党となります。

複数の政党が政策を協定して政権を組織することもあり、「連立政権」と呼ばれます。2022年現在の日本は自民党と公明党による連立政権です。

一方で、政権の外にあり、与党に対する批判勢力となる政党野党といいます。

野党には、与党による政権運営が適切に行われているか監視したり、与党の政治方針の対案を国民に示したりするのが主な役割です。

現在の日本の野党は、例えば立憲民主党や国民民主党、日本共産党などが挙げられます。

与党・野党についてや議院内閣制について、詳しくはこちらの記事がおすすめです。

与党と野党の違いをわかりやすく解説!それぞれの役割とは?
議院内閣制とは?大統領制との違いやメリットを解説(前編)

政権交代はどのように起きる?

上記のような政権の仕組みから、選挙で政権政党以外の政党が過半数の議席を得ると、与野党が逆転し政権交代が起こります。

日本では、衆議院選挙で野党が過半数の議席を獲得すると政権が交代します。現在の衆議院では、与党となるためには233議席が必要です。

2021年10月の衆議院総選挙では自民党が261議席、公明党が32議席を獲得して政権を維持しました。

過去の政権交代事例

戦後の日本ではほとんどの期間、自民党が中心となって政権を運営してきました。自民党政権から他の政党による政権へと交代した事例は、1993年の非自民連立政権成立2009年の民主党政権成立です。

この2回の政権交代について、それぞれ詳しく紹介します。政党の名称はいずれも当時のものです。

55年体制から非自民連立政権へ(1993年)

自民党は1955年の結党以来38年間、与党第1党として政権を担いました。このことを「55年体制」と呼びます。

しかし1993年7月の総選挙で自民党は過半数を大幅に割り、野党となります。政権は自民党の宮沢喜一内閣から、非自民連立政権の細川護煕内閣へ交代しました。

自民党が大敗した背景には、リクルート事件や東京佐川急便事件など、政治家が関わった汚職事件があります。これらの「政治とカネ」の問題が、与党に対する世論の反発自民党内の勢力分裂を招きました。

細川内閣は、日本新党・社会党・新生党・公明党・民社党・新党さきがけ・社民連・民改連の8党派による連立政権でした。「政治改革」を掲げ、小選挙区比例代表並立制や政党助成法などの政治改革関連法を成立させました。

しかし細川内閣は、連立与党の対立と首相の金銭疑惑により8か月余りで退陣します。ついで成立した新生党・日本新党・民社党・公明党・自由党による非自民連立の羽田孜政権は、自民党が提出した内閣不信任案を受けて在任わずか64日で総辞職となりました。

羽田内閣が退陣したのち、政権復帰を優先した自民党は55年体制で対立していた社会党と連立し、社会党党首の村山富市委員長を首相とする内閣が1994年6月に成立します。これによって、自民党はわずか11か月余りで政権に復帰しました。

自民党政権から民主党政権へ(2009年)

2009年8月の衆院選で自民党は過半数を割る119議席と大敗したのに対し、民主党が単独過半数の308議席を獲得して政権を奪いました。戦後初の本格的な政権交代と言われています。

政権交代前の自民党麻生太郎内閣は、リーマン・ショックの渦中で成立し景気対策を優先課題としたものの支持率が低迷していました。首相の失言問題も自民党に対する逆風となり、政権選択が総選挙の争点でした。

政権交代後、民主党政権は鳩山由紀夫内閣・菅直人内閣・野田佳彦内閣と続きます。菅直人内閣時には東日本大震災が起き、震災と原発事故への対応で国民の批判を受け退陣に追い込まれました。

2012年12月の衆院選で民主党は大敗し、3年3か月ぶりの自民党政権として安倍晋三内閣が成立しました。その後現在まで自民党政権が続いています。

政権交代のメリットとデメリット

政権交代にはメリットもデメリットも存在します。具体的にはどのようなことが挙げられるのか、見ていきます。

メリット

政権交代のメリットの1つは、国民の政治への関心が高まることです。

政権選択が争点となり実際に政権交代が起きた2009年衆院選の投票率は、小選挙区制導入後最も高い約69%でした。

そしてもう1つのメリットとして、政権交代により、1つの党が長期に政権を担うことによるデメリットを防ぐことが期待できます。

55年体制に代表される長期の自民党政権では政管財の癒着が強まり、相次ぐ汚職事件や族議員・世襲議員と呼ばれる一部の有力議員の台頭などを生む背景になりました。

これらの問題に対する反発として、国民が政権交代を選ぶことは重要な役割を持ちます。

デメリット

一方で、政権交代にはデメリットもあります。

政権の担い手が変わることで、政治方針が定まらず政策の連続性が保てなくなることです。

前政権が進めていた政策が覆って白紙に戻ることもあるため、頻繁に政権交代が起きるとなかなか政策が実現せず、政治の役割を果たせなくなってしまいます。

また、政権が不安定であると国際的な信頼が低下するとも言われています。政権交代や首相・大統領の交代などは為替相場や株価など経済界にも影響を与えます。

まとめ

・政権交代とは、与党以外の政党が選挙で過半数の議席を獲得し、政権政党が変わること

・戦後の主な政権交代は、自民党が野党となった1993年と2009年

・政権交代には国民の関心が高まるなどのメリットもある一方、政策の実現が進まなくなるなどのデメリットもある

 

<参考>
『政治・経済用語集 第2版』山川出版社、2019
『2021新政治・経済資料 三訂版』実教出版編修部、2021
衆院選とは 現制度下で2度の政権交代(日本経済新聞、2021年10月20日)
衆院選の攻防ラインは? 「与党で過半数」72議席減でもクリア(東京新聞、2021年10月27日)
衆院選 全議席決まる 自民「絶対安定多数」維新は第三党に躍進(NHK NEWS WEB、2021年11月1日)
1993年 自民党分裂 初の政権交代(日本経済新聞、2018年12月31日)
[決戦の記憶]保守取り込み 民主308議席…2009年・麻生内閣「政権選択選挙」 : 衆院選 : 選挙・世論調査 : 読売新聞オンライン(2021年10月10日)
政権交代は想定外 明治以来の不可視の統治構造(日本経済新聞、2019年6月4日)
長期政権の何が問題なのか(大機小機)(日本経済新聞、2019年1月8日)
2度の政権交代をもたらした有権者の政治意識(NHK世論調査部)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD048IX004112021000000/(日本経済新聞、2021年11月11日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/140331(東京新聞、2021年11月1日)
総務省|国政選挙における投票率の推移
為替相場に政治リスク浮上、日米政権交代にらみドル安・円高加速も – Bloomberg(2020年8月26日)

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