議院内閣制とは?大統領制との違いやメリットを解説(前編)

議院内閣制とは?大統領制との違いやメリットを解説(前編)

日本やイギリスは議院内閣制だ」と耳にしたことはあっても、「議院内閣制」とは具体的にどういったものなのか、すぐにイメージするのは難しいかもしれません。

議院内閣制は、ニュースでよく取り上げられる、首相の選ばれ方や衆議院の解散などの話題にも大きく関わっています。

本記事では、イギリスを起源とする議院内閣制の歴史や仕組み、アメリカなどが採用している「大統領制」との違いについて説明していきます。

この記事を監修した人
奥藤裕子
イメージ戦略の構築からトータルプロデュースする選挙コンサルタント。イメージコンサルタントとして培った知識と経験を活かし、数多くの広報ツール制作・政策立案に携わる。政治家の「自己プロデュース力を高めたい」というニーズに応えるべく、今日も現場で奮闘中。

 議院内閣制とは?仕組みと特徴

議院内閣制とは、国の行政権を担う内閣(政府)が議院(国会)の信任に基づいて存在し、内閣は議院に対して責任を負う制度です。議院は内閣の不信任決議権を、内閣は議院の解散権を持ち、両者が強固かつ密接な連携関係にあることが特徴です。

議院内閣制の起源はイギリス

そもそも、議院内閣制という政治体制はどのようにしてできたのでしょうか。その起源は17〜18世紀のイギリスにあります。

それまで国王が権力を持ち専制的な政治が行われていたイギリスで、1688〜89年にかけて、のちに「名誉革命」と呼ばれる市民革命が起きました。この革命によって国王が議会の同意を得ずに法律の廃止や課税を行うなど、独善的な政治ができなくなりました。

そして議会が政治を主導するようになると、議会の中で保守派と革新派の2大政党が形成され、行政権を争うようになりました。さらに、内閣の代表者である首相は、議会の多数派政党から信任を得る必要が生まれました。こうして成立した議院内閣制は「ウエストミンスター・モデル」とも呼ばれ、その後日本を含む様々な国で採用されていきます。

現在のイギリスと日本の議院内閣制の違い

議院内閣制の起源であるイギリスは、日本の仕組みと比較するとどのように異なるのでしょうか。

イギリス議会には「上院」と「下院」があり、日本と同じ二院制を採っています。

しかし、衆議院・参議院ともに国民の選挙によって議員が選ばれる日本とは違い、イギリスの上院は「貴族院」と呼ばれ、国王が任命する世襲貴族・聖職貴族・一代貴族で構成されています。定員や任期も一定ではなく、ほとんど実権はありません。

一方で下院は「庶民院」と呼ばれ、小選挙区制により国民の直接選挙で議員が選ばれます。5年の任期、650人の定員も定められています。議会法により下院優越の原則があり、重要法案は下院で可決されれば成立します。

そして、国会議員の中から国会の議決で首相が選ばれる日本とは異なり、下院の第一党党首が首相となります。国務大臣も、下院議員から選出されます。

内閣が議会に対して連帯責任を負う点、下院が内閣不信任を議決した場合は内閣は総辞職するか下院を解散しなければならない点は、日本と共通しています。

他に議院内閣制を採っている国では、ドイツやスペインが挙げられます。

大統領制と議院内閣制の違いは?アメリカと比較

議院内閣制と比較される政治制度として、大統領制があります。

大統領制とはどのような仕組みなのか、大統領制が成立した国であるアメリカの政治体制を見てみましょう。

特徴的なのは、行政府の長である大統領の選ばれ方が異なること、議会と内閣が厳格に独立していることです。

大統領は国民の選挙で選ばれる「二元代表制」

アメリカの連邦政府は、立法府、行政府、司法府の3部門に分かれており、各々が憲法上の権限と責任を有しています。

立法府は上院下院の両院制議会です。行政府の長がアメリカ大統領であり、大統領と副大統領の下には15の省とその他多数の機関が置かれています。司法府は連邦最高裁判所と連邦下級裁判所で構成されています。

アメリカ大統領は国会議員とは別に選ばれます。つまり、日本の首相と異なり、大統領は国会議員ではありません。

大統領の任期は4年で、議会の解散によって任期途中に辞職する可能性がないため、その地位と権限は絶大です。大統領が独裁的になることを防ぐために、3選(3任期大統領になること)は憲法で禁止されています。同じ人が大統領を務められるのは2任期までになります。

また、大統領に何らかの犯罪行為があった場合には、議会の下院が大統領の弾劾の訴追を可決し、上院で行われる弾劾裁判で3分の2以上の罷免賛成があれば大統領は解任されます。

大統領制のように首長(この場合は大統領)と議員が別々に国民による選挙で選出される制度を「二元代表制」と呼びます。対して日本の国政のように、国民は議員を選挙で選び、首相を選ぶことはできない制度を「一元代表制」と言います。

大統領と国会の関係

大統領を長とする内閣(行政権)と議会(立法権)は、厳格に独立しています。

内閣が国会に対して責任を負う議院内閣制とは異なり、大統領は議会に対して責任を負いません。議会による内閣不信任の制度はなく、大統領による議会の解散権もありません。

内閣は大統領に対してのみ責任を負い、各省の長官は議員と兼任することはできません。国会議員ではない大統領は、法案提出権を持ちません。法案に対する拒否権がありますが、議会の両院で3分の2以上の再可決がされた場合は無効になります。

このように、議院内閣制と比較して行政権と立法権の抑制関係は薄く、互いの独立性が高いことが特徴です。

 

ここまで、イギリスの議院内閣制やアメリカの大統領制との違いを解説してきました。

後編では日本の議院内閣制について掘り下げます。

 

<参考文献>

『2021新政治・経済資料 三訂版』実教出版編修部、2021

『政治・経済用語集 第2版』山川出版社、2019

『判例六法 令和3年版』有斐閣、2020(憲法

首相官邸HP 内閣制度の概要

衆議院HP 国会について

国立国会図書館 調査と情報 -ISSUE BRIEF- No.1056(2019.5.28)イギリスの議会制度

明治大学学術成果リポジトリ「イギリスにおける内閣の連帯責任性の成立過程」石川多加子,1990,明治大学大学院紀要法学篇27:1-19

参議院 立法と調査2014.1 No.348「議院内閣制における内閣の在り方 −我が国の統治機構の在り方を考える視座−」

アメリカ大使館「米国の統治の仕組み – 連邦政府」

この記事を書いた人
rainy

大学の政治学科を卒業後、報道機関で記者をしていました。主に社会部で裁判、司法を担当。選挙取材も経験しました。退職後の現在はフリーランスライターとして働く1児の母です。
「社会の仕組みや動きを知ること・理解することで、新しい世界が広がる」、読者にとってそんな記事を書けるよう、日々精進していきます。

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