選挙権年齢はなぜ18歳に引き下げられたの?世界各国の状況も解説

選挙権年齢はなぜ18歳に引き下げられたの?世界各国の状況も解説

「日本の選挙権は、なぜ18歳に引き下げられたの?」

「世界各国の選挙権年齢と比べて高い・低い?」

日本の選挙権年齢は2015年に18歳に下げられましたが、なぜ引き下げられたのでしょうか。

また、18歳というのは他の国と比較して高い年齢のか、それとも低い年齢なのかも気になりますね。

選挙権は私たちの代表を選ぶ権利です。それを何歳で与えられるかどうかは、とても重要です。

この記事では、選挙権年齢について、引き下げの理由や海外諸国との比較などを含めてわかりやすく説明します。

選挙には選挙権と被選挙権がある

選挙には選挙権と被選挙権があります。

それぞれ、年齢制限や特定の条件が設けられています。

選挙権と選挙権年齢

「選挙権」は、立候補した人を選ぶ権利です。

満18歳以上の日本国民は、基本的に選挙権を有しています。

地方選挙の場合は、その地域に3カ月以上、住民票があることも必要です。

被選挙権と被選挙権年齢

「被選挙権」は、選挙に立候補して選ばれる権利です。

被選挙権年齢は、選挙の種類によって異なります。

  • 衆議院議員:25歳以上
  • 参議院議員:30歳以上
  • 知事:30歳以上
  • 都道府県議会議員:25歳以上
  • 市町村長:25歳以上
  • 市町村議会議員:25歳以上

日本における 選挙権年齢引き下げの経緯

そもそも日本で選挙権がどのように拡大してきたのか、その経緯と選挙権年齢の推移を見ておきましょう。

日本で初めての衆議院議員選挙は制限選挙

1890年(明治23年)に日本初の衆議院議員選挙が行われました。

大日本帝国憲法発布(世の中に広く知らせること、公布と同じ意味)の翌年のことです。

しかし選挙権が認められたのは、高額な税金(直接国税15円以上)を納めていた、満25歳以上の男性だけでした。

これは、制限選挙(選挙権を納税額や性別などで制限する選挙)といいます。

普通選挙運動と25歳以上男性の選挙権

しかし、制限選挙では当時の人口の1%程度の富裕層の男性しか投票が認められなかったため、明治末期から大正期にかけて、納税額に関係なく選挙権が付与される、普通選挙を求める民主運動が広がります。

1925年(大正14年)になって、ようやく25歳以上の男性すべてに選挙権が認められました。

女性参政権運動と普通選挙の実現・20歳以上に選挙権

その後、女性参政権を求める運動が続きますが、実現したのは日本国憲法下の1945年(昭和20年)です。

衆議院議員選挙法改正により、選挙権は満20歳以上のすべての男女がもつことになりました。

これが、日本における普通選挙の導入です。

選挙権年齢が18歳に下げられる

選挙権年齢は、2015年(平成27年)の公職選挙法(選挙のルールを決めている法律)改正により20歳以上から18歳以上に下げられ、翌年施行されました。

日本初の18歳以上の選挙は、2016年7月3日が投票日であった福岡県うきは市長選挙です。

国会議員を選ぶ国政選挙では、2016年7月10日投票の第24回参議院議員選挙が初めての18歳以上の有権者が加わった選挙になります。

選挙権年齢が18歳に下げられた理由

それでは、選挙権年齢はなぜ18歳に下げられたのでしょうか。

引き下げられた理由を見ておきましょう。

若い人の声を政治に活かす

日本は少子化が進み、人口が減り始めています。

そうした中で、これからの社会の担い手となる18歳・19歳の若い人の声を政治に活かす必要性が高まっています。

18歳は高校3年生の有権者も含まれていますが、自分たちが社会の担い手であることを自覚して、政治参加が期待されているのです。

国民投票の年齢が18歳以上

国民投票は、憲法96条で決められている憲法改正に必要な国民意見の反映手続きです。

国民投票をできる人は、2014年6月の国民投票法の改正で、2018年6月までは20歳以上、それ以降は18歳以上に引き下げる、と決められていました。

つまり、憲法改正の国民投票の年齢引き下げが先に決まり、選挙権年齢の引き下げ、成人年齢の引き下げ、という動きになったのです。

世界で多くの国が選挙権年齢を18歳にしている

後述しますが、選挙権年齢の18歳は、世界的な基準と言えるほど多くの国が取り入れています。

選挙権年齢だけではなく、成人年齢も18歳の国が多いのです。

日本の成人年齢は、民法が制定された1896年(明治29年)に20歳と決められました。

その後120年以上の間、20歳で成人が定着してきましたが、2018年の民法改正で2022年4月1日から18歳に引き下げられることになっています。

世界各国の選挙権年齢の状況

国立国会図書館の調査資料(2015年、調査対象199か国)を基に、世界各国の選挙権年齢の状況をまとめて見ておきましょう。

約9割の国が18歳までに選挙権をもつ

選挙権年齢は16歳から21歳まで、国によって違いが見られます。

選挙権年齢18歳の国が最も多く、16歳・17歳を含めて約9割の国が18歳までに選挙権をもっています。

なお、被選挙権年齢については、18歳、21歳、25歳のいずれかに該当する国が各々3割前後です。

選挙権年齢別の該当国一覧

下記に選挙権年齢別の該当国を一覧にします。

  • 16歳:アルゼンチン・オーストリア・エクアドル・キューバ・ニカラグア・ブラジル(6か国)
  • 17歳:インドネシア(結婚している人は年齢不問)・北朝鮮・東ティモール(3か国)
  • 18歳:日本・アメリカ・イギリス・イタリア・カナダ・ドイツ・フランス・ロシアほか(167か国)
  • 19歳:韓国(1か国)
  • 20歳:カメルーン・台湾・ナウル・バーレーン(4か国)
  • 21歳:オマーン・クウェート・コートジボワール・サモア・シンガポール・トンガ・マレーシア・レバノン(8か国)

10歳代(18歳・19歳)の投票率は、20歳代より高い

選挙を所管する総務省の調査によると、国政選挙の年代別投票率は、次のような状況になっています。(選挙権年齢18歳は2015年開始)

2017年10月、第48回衆議院議員選挙 年代別投票率

  • 10歳代:40.49%
  • 20歳代:33.85%
  • 30歳代:44.75%
  • 全体:53.68%

2019年7月第25回参議院議員選挙 年代別投票率

  • 10歳代:32.28%
  • 20歳代:30.96%
  • 30歳代:38.78%
  • 全体:48.80%

ご覧のとおりいずれの選挙でも10歳代(18歳・19歳)の投票率は、20歳代より高くなっています。

しかし、20歳代・30歳代を含めた若い年代の投票率は、50%前後と決して高いとはいえないでしょう。

また、10歳代の投票率は、年々次低下傾向にあります。

投票権年齢が18歳に下げられた直後の2016年の参議院議員選挙では10歳代の投票率は46.78%と、若年世代の中で最も高い投票率でした。

しかし、2019年の参議院議員選挙では32.28%と、14.5%も下がっています。

全体の投票率も前回の参議院議員選挙に比べて約6%低下していますが、10歳代の落ち込みが目立ちました。

選挙権がある人は必ず投票しましょう

選挙は私たちの代表を選ぶ大切な権利です。

選挙権をもつことは、これからの私たちの暮らしや社会の方向を決めるうえで大変重要な意味があります。

選挙権年齢の引き下げの理由や海外との比較を概観しましたが、選挙権の重要性を理解して、投票という行動につなげていきましょう。

 

 

<参考>
総務省|選挙権と被選挙権
総務省|選挙権年齢の引下げについて
総務省・文部科学省|高校生向け副教材「私たちが拓く日本の未来」について
NHK|選挙を知ろう・今さらだけど…なんで「18歳選挙」?
日本経済新聞|選挙権の年齢 なぜ18歳に?
世界の選挙権 – 18歳から選挙権?
国立国会図書館資料|諸外国の選挙権年齢及び被選挙権年齢
総務省|衆議院議員総選挙における年代別投票率(抽出)の推移
総務省|参議院議員通常選挙における年代別投票率(抽出)の推移
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