報道で度々「党四役」という用語が出てきますね。これを見て「一体、何をする人なのか」と疑問に思っている方も多いでしょう。
党四役とは何を指すのか、仕事や役割はどのようになっているのか、党によって違いがあるのかも知りたい、という方も多いと思います。
この記事では、「党四役」について、意味や仕事の内容・役割をわかりやすく解説します。この記事をご覧になれば、党四役の用語の意味や具体的な役割などがよくわかります。
党四役とは
「党四役(とうよんやく)」とは、党の役員で選挙や人事を握る重要なポストを意味します。
具体的には、自民党の執行役員である「幹事長・総務会長・政調会長・選挙対策委員長」の4つの役職を総称するのが、一般的な使われ方です。
かつては、「選挙対策委員長」ではなく、「副総裁」あるいは「参議院議員会長」を、「幹事長・総務会長・政調会長」に加えて「党四役」と呼んだ時期もありました。
しかし、「副総裁」は形式的には総裁に次ぐポストですが、常設でないこともあり、現在は党四役に数えらることはありません。
自民党の党四役の仕事と序列
与党である自民党トップの総裁は、首相として政府で政権運営に携わります。そのため、党四役が党運営の中心になります。それが党四役の仕事です。
党則上、四役の間に必ずしも明確な序列はありません。ただ、力関係では党務を取り仕切る幹事長が最も力を持っています。その次に政調会長または総務会長、4番目が選挙対策委員長、というのが一般的な見方です。
幹事長
幹事長は、党則で「総裁を補佐し、党務を執行する」と位置づけられています。具体的には、党の資金分配・人事・選挙候補者の公認調整などが役割です。
自民党の総裁は内閣総理大臣として総理官邸にいることが多く、幹事長が実質的に党を取り仕切ります。そのため、幹事長は総裁に次ぐ党のナンバー2といわれ、四役のうちで最も力を持っています。
幹事長は、総理・総裁になるためのステップとしても重視されるポストです。
誰が幹事長に就くかは、各派閥の勢力や派閥間の関係性も影響してきます。一例を挙げれば、安倍・菅両政権下で長く幹事長を務めた二階俊博氏が率いた二階派は、在任中に大躍進しました。
幹事長の役割などについては、下記の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
政党幹事長とは?役割を解説
総務会長
総務会長は、党運営と国会活動の重要事項を審議決定する総務会を取り仕切ります。
総務会は、自民党の常設の最高意思決定機関です。政府の予算案や法案を党が了承するかどうかを最終的に機関決定します。その際は、全会一致が基本原則です。
自民党として重要な政策などを打ち出す際も、総務会の承認を得なければなりません。総務会メンバーは、ベテラン議員・実力者も少なくなく、「うるさ型」を抑えられる重鎮が総務会長にあてられることが多くなっています。
政務調査会長(政調会長)
政務調査会長(政調会長)は、政策立案や法案審査にあたる政務調査会の運営・とりまとめの責任者です。
政調会長を中心に政党のマニフェスト(公約集)などもまとめられます。
政調会長を経験することが、総理総裁への登竜門ともいわれる重要なポストです。
選挙対策委員長
選挙対策委員長の仕事は、国政選挙や知事選などの候補者調整・選挙対策です。
2007年に、それまであった選挙対策総局長のポストが「選挙対策委員長」に格上げされ、四役の1つとなったものです。その後、自民党が野党となった2009年に選挙対策局長に一旦格下げされました。
しかし、2012年の総選挙で政権に復帰した後の党役員人事で再び格上げされ、現在まで党四役の一角を占めています。
党四役と派閥の関係
自民党の党四役は、派閥のバランスに配慮して選ばれる傾向があります。
自民党は、1989年の政治改革大綱で、首相や閣僚、党幹部の派閥離脱を明記しています。その前年に発覚したリクルート事件を機に、派閥が金権政治の温床との批判が噴出したためです。
特に、2001年に小泉純一郎が「脱派閥」を訴え総裁に就任して以降、総裁と党三役(党四役)は在任中、派閥の離脱を申し合わせることが慣例になりました。
しかしその後、派閥離脱を守らない首相も現れており、空文化してきているのが実情です。
岸田内閣の党四役
2021年10月31日の第49回衆議院議員総選挙後に発足した現岸田内閣の党四役は、次の通りです。
幹事長:茂木敏充(前外相、茂木派会長)
政務調査会長:高市早苗(元総務大臣)
総務会長:福田達夫(元防衛大臣政務官 兼 内閣府大臣政務官)
選挙対策委員長:遠藤利明(元2020東京オリンピック・パラリンピック大臣)
同年9月30日に自民党の新総裁に選ばれた岸田文雄現総理(前政調会長)は、幹事長に甘利明氏(前税制調査会長)を起用し、総務会長に当選3回の福田達夫衆議院議員、政調会長に高市早苗氏、選挙対策委員長に遠藤元氏を充てました。
その後の総選挙で、幹事長の甘利氏が小選挙区で敗北(比例復活)したため、茂木前外務大臣を幹事長に充てたものです。幹事長以外の3役は再任されています。
なお、副総裁には、麻生太郎前財務大臣(元総理大臣)が就いています。
他の政党にも党四役はいるのか
自民党以外の政党の役職は、各党の党則などで決められています。ただし、自民党のような三役や四役といった呼び方は、明確に決められているわけではありません。
実際に、「三役」や「四役」に相当する役職が固定されている政党は、多くはありません。
党の重要ポストは、選挙対策や国会対策などその時点の重点課題に合わせて随時選ばれているのが実情です。
立憲民主党
2021年12月に立憲民主党の新代表に選ばれた泉健太氏は、選挙で戦った3氏を党の主要ポストに起用しました。
この結果、党の執行部の体制は、代表(泉健太)・代表代行(逢坂誠二)・幹事長(西村智奈美)・政務調査会長(小川淳也)、となったのです。
立憲民主党では、これらのポストのうち、「代表、代表代行、幹事長」が、党三役といわれることがあります。また、「代表、幹事長、政務調査会長」を党三役と呼ぶこともあります。さらに、代表の代わりに「国会対策委員長」を含めることもあるなど、決まった呼び方があるわけではありません。
公明党
公明党では、「代表(山口 那津男)、幹事長(石井 啓一)、政務調査会長(竹内 譲)」が党三役と呼ばれることが多い傾向にあります。
ただし、「代表、幹事長、国会対策委員長」を三役というケースもあります。
他にも、副代表や選挙対策委員長・参議院会長も主要ポストとされており、明確な決まりや呼び方はないというのが、正確なところです。
日本維新の会
2021年11月、日本維新の会臨時党大会で代表に再任された松井一郎氏(大阪市長)は、共同代表に馬場伸幸氏(前幹事長)を選出しました。副代表のポストもあり、吉村洋文氏(大阪市長)が就いています。
日本維新の会では、代表・共同代表・副代表を除く、「幹事長(藤田文武)、政務調査会長(音喜多駿)、総務会長(柳ケ瀬裕文)」が三役と位置付けられることがあります。
ただし、代表や共同代表・副代表のいずれかを含めて、党四役といわれることはありません。
共産党
共産党では、中央委員会で選出される「委員長(志位和夫)、書記局長(小池晃)、副委員長(山下芳生(筆頭)他)」を三役と位置付けています。
なお、同党の副委員長は、複数名(6名)います。
国民民主党
国民民主党の玉木雄一郎代表は、2021年11月の両院議員総会で、前原誠司代表代行を選挙対策委員長・大塚耕平代表代行を政務調査会長(いずれも兼務)に選出しました。両代表代行は代表経験者ですが、参院選への体制を強化したものとされています。
同党には、副代表や幹事長・国会対策委員長もいますが、党三役・党四役と呼ばれる例は見られません。
【補足】党三役との関係
自民党では、従来から党の重要な意思決定を行う役職である「幹事長・総務会長・政調会長」を「党三役」と呼んでいました。
2007年に、自民党の新総裁となった福田康夫元首相の指示で、選挙対策総局長を三役級の「選挙対策委員長」に格上げして、「党四役」体制となったものです。
まとめ
本記事では「党四役」について、意味や仕事の内容・役割などについて解説しました。
党四役は、自民党の執行部を担う「幹事長・総務会長・政調会長・選挙対策委員長」の総称で、重要なポストです。自民党以外の党では、党三役といわれることはありますが、党四役といわれる例は見当たりません。また、自民党の四役ほど役割や位置づけが明確なわけではありません。
この記事を参考にして、各党の役員の役割、政党による違いなどを考えていただき、政治により一層関心を持っていただければ幸いです。
<参照>
国立国会図書館「レファレンス協同データベース」
imidas「時事用語辞典:自民党四役」
日本経済新聞「自民党四役とは 総裁に代わり党運営主導」
朝日新聞デジタル「「党四役」って何? 党運営の中心、最も力を持つのは…」
文春オンライン「池上さん、幹事長・政調会長・総務会長って何をする人たちですか?」
選挙ドットコム「総裁・代表・党首・政調会長…政治家の肩書はどう違う?」
北海道新聞「目立ち過ぎ?首相の派閥活動 党指針に離脱明記 …」
jiji.com「岸田首相、派閥活動にも力点 「足元」の結束重視―自民」
自民党「執行部」
NHK「自民 新四役が会見 甘利氏“開かれた党運営で新政権支える”」
jijicom「衆院選、自民絶対安定多数 幹事長に茂木氏起用へ」
立憲民主党「役員一覧」
jijijiji.com「立民幹事長に西村氏 代表代行・逢坂氏、政調会長・小川氏」
公明党「常任役員会」
公明党「山口代表再任、幹事長に石井氏、政調会長に竹内(譲)氏」
日本維新の会
NHK「維新 三役に40代以下の若手共同代表に馬場伸幸氏」
赤旗「日本共産党新三役が会見」
国民民主党「党役員一覧」
日本経済新聞「国民、選対委員長に前原氏 政調会長に大塚氏」
岡山県立図書館「政党の党三役」
朝日新聞「福田自民、領袖重用 町村氏は官房長官」