条例とは?日本の法体系はピラミッド構造?全国の具体例も解説

条例とは?日本の法体系はピラミッド構造?全国の具体例も解説

地域によってルールや罰則の違いを感じた経験はありませんか?

その違いは、地域の条例が関係しています。

条例は、地方公共団体ごとに定められる、私たちの暮らしに密接に関わるルールです。

この記事では、条例の概要法体系における位置づけ全国の条例の具体例について分かりやすく解説します。

条例とは

ここでは、条例の概要や制定方法、違反時の罰則について解説します。

地方公共団体が制定する法形式

条例とは、憲法第94条や地方自治法第14条に基づき、地方公共団体によって制定される法の形式のことです。

都道府県や市町村は、国の法令(法律や政令、省令)とは別に、それぞれが自主的に条例を制定できます。条例を定めることで、住民に対して義務を課したり、権利を制限したりすることが可能になります。

ただし、どんな内容の条例でも作成できるわけではありません。

条例で定められる事項は、地方公共団体の事務に関することかつ、憲法や国が定めた法令に反しないことが必要になります。

たとえば、全国規模で行わなければならない施策や、すでに存在する法律と矛盾する内容を含むものは、条例として制定できません

条例の制定方法

条例の制定には、条例案を議会に提出し、議会の議決を経るといった手続きが必要です。

条例案が提出される経路は、以下の3通りです。

  • 首長が条例案を議会へ提出する
  • 議員が条例案を議会へ提出する
  • 住民による条例制定の直接請求

そして、議会にて出席議員の過半数の賛成を得ることで、条例が成立します。

成立した条例は、首長によって公布(住民へ周知すること)され、その後施行(実際に効力が生じること)されます。

条例違反の罰則

地方自治法第14条第3項に基づき、条例には罰則を設けられます。

罰則の種類は、以下の3つです。

  1. 2年以下の懲役もしくは禁錮
  2. 100万円以下の罰金、拘留、科料もしくは没収の刑
  3. 5万円以下の過料

1と2の罰則を行政刑罰(犯罪として、刑法に定める刑が裁判所によって科される罰)といい、3の罰則を秩序罰(犯罪には至らない、比較的軽微な義務違反に科される罰)といいます。

法体系における条例の位置づけ

ここでは、法体系における条例の位置づけについて解説します。

日本の法体系は、憲法を頂点としたピラミッド構造を形成しており、ピラミッドの上位の法は、下位の法よりも優先されます。

つまり、法を定める際は、原則としてそれよりも上位にある法の内容に反しないようにしなければなりません

ピラミッドを構成する主な法は、上位のものから以下が挙げられます。

ピラミッドの構成要素詳細
憲法
  • 国民の権利や自由を守るために定められた、
    国民が国家権力を制限するルール
  • もっとも強い効力を持つ国の最高法規
法律
  • 国家が定める国民全体のルール
  • 国会の議決を経て制定される
政令
  • 法律を具体化したり実施したりするためのルール
  • 内閣(内閣総理大臣+大臣)によって制定される
省令
  • 法律を具体化したり実施したりするためのルール
  • 各省の大臣によって制定される
条例
  • 地方公共団体の区域内で適用されるルール
  • 地方議会の議決を経て制定される
  • 住民の権利や義務に関わることは、
    条例で定める必要がある
規則
  • 地方公共団体の区域内で適用されるルール
  • 地方公共団体の首長によって制定される
  • 条例と規則には原則上下関係がない

法体系において条例は、憲法・国の法令の下位に位置し、規則と同等の関係にあります。

条例の具体例

条例の具体例を3つ、以下でご紹介します。

迷惑防止条例

迷惑防止条例は有名な条例の1つで、この名称を耳にしたことがある方も多いと思います。

迷惑防止条例とは、各都道府県が定めている、公衆に迷惑をかける行為を防止し、住民の生活の平穏を保持することを目的とした条例の総称です。

都道府県ごとに若干の違いはあるものの、おおむね以下のような行為を禁止行為として定めています。

  • ダフ屋行為
  • 痴漢行為
  • 盗撮行為
  • 不当な客引き行為
  • つきまとい行為

また、迷惑防止条例違反に対する罰則も都道府県ごとに定められています。

地球温暖化対策条例

地球温暖化対策条例とは、地球温暖化対策に関して目標や取り組みの推進を定める条例です。

近年、気候変動問題への関心の高まりを受け、多くの自治体で制定・改正がなされています。

たとえば、京都市は、京都議定書が採択された場所であり、地球温暖化対策に積極的な自治体の1つです。

京都市では、平成16年に全国で初めて地球温暖化対策に関する条例(京都市地球温暖化対策条例)が制定されました。条例では、温室効果ガスの削減目標や再生エネルギーの促進などを掲げ、脱炭素社会の実現を目指しています。

梅干しおにぎり条例

梅干しおにぎり条例は、梅の産地として有名であり、梅の生産量日本一を誇る和歌山県みなべ町が定めたユニークな条例です。

全国の梅の消費量が減少傾向にあることを受け、2014年に制定されました。

条例では、生産者、事業者、町民が協力し、梅を使ったおにぎりや梅製品を普及していくことを定めています。

まとめ

この記事では、条例の概要や位置づけ、具体例などについて解説してきました。

  • 条例とは、地方公共団体が定める地域住民の権利や義務などに関するルールのこと
  • 条例は、条例案を議会に提出し、議会で可決されることで制定される
  • 条例は、憲法や国が定める法令の下位に位置し、規則と対等な関係にある
  • 条例には、地域の治安を守る迷惑防止条例や、地元の特産品の普及を目指す梅干しおにぎり条例など様々なものがある

この記事が、条例について理解し、身の回りの条例に関心を持つきっかけになれば幸いです。

 

 

<参考>

吉田 利宏『研究・実務に役立つ!リーガル・リサーチ入門 第2回 法体系』
総務省 | 条例及び規則
総務省 | 地方自治法について
岡山市 | 市の条例や規則とはなんですか?
川口市 | 条例と規則について
株式会社みらい | 法律等を読み解く上で必な基礎知識
警視庁 | 迷惑防止条例
地方自治研究機構 | 脱炭素社会を目指す条例と地球温暖化対策条例
和歌山県みなべ町 | 6月6日「梅の日」に梅干しおにぎりを食べよう!

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