選挙に立候補する決意をしたら、当選を目指してすぐにでも行動を起こしたくなってしまうかもしれません。
しかし、選挙のルールを定めた公職選挙法では、選挙期間外の投票依頼を「事前運動」として禁止しています。
事前運動とは具体的にどのようなものなのでしょうか。また、選挙期間外に可能な活動は、何があるのでしょうか。
法律違反にならないように注意しながら、立候補に向けた準備をするため、事前運動について解説します。
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事前運動とは?
「事前運動」とは、選挙期間外に選挙運動を行うことで、公職選挙法129条で禁止されています。
届け出前の選挙運動は禁止
選挙期間とは、当該選挙の告示・公示日に立候補の届け出をして以降、投票日の前日までのことです。
また、選挙運動とは、特定の選挙において特定の候補者の当選を図る目的で、投票を勧めることを指します。
立候補を届け出る前に選挙運動に当たる活動をすると、事前運動として選挙違反になってしまうため注意が必要です。
そもそも「選挙運動」とは?どう判断する?
具体的な活動が選挙運動に当たるか否かは、どのように判断されるのでしょうか。
「具体的にある行為が選挙運動であるかどうかは、取締機関がその行為の態様、すなわちその行為のなされる時期、場所、対象について総合的に実態を把握し、それが特定の候補者のための投票獲得に直接または間接に必要かつ有利な行為であるかどうかを実態に即して判断することになります」
つまり事前運動とは、選挙期間外に行った活動における
・特定の候補者の名前や写真
・特定の選挙名
・自身や政党への投票を呼びかけていること
などの有無によって判断されます。
違反するとどうなる?
事前運動を行ってしまうと、公職選挙法違反として1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金(公選法239条1項1条)が科され、選挙権及び被選挙権が停止されます(公選法252条1項、2項)。
当然ですが、買収や戸別訪問など選挙期間中でも禁止されている行為を、選挙期間外に行った場合も選挙違反となります。
事前運動の具体例
事前運動の具体的なイメージは、例えば以下のような行為を公示または告示・立候補の届け出前に行った場合です。
- 例①:立候補しようとしている人が「△△選挙に立候補する◯◯です。ぜひ私への投票をお願いします」と呼びかけたり、支援者など候補者以外の人が「◯◯さんに投票してください」と依頼したりする。また、SNSで発信する。
- 例②:立候補しようとしている人が、名前を書いたのぼり旗やたすきを用いて駅前で演説をする。
- 例③:「◯◯事務所・出陣式のご案内」と印字されたハガキを有権者に郵送する。
選挙期間外でもできることは?
立候補を決意したら、選挙の公示・告示がされる以前にできることはあるのでしょうか。
事前運動にあたらない「政治活動」は可能
選挙期間外の「政治活動」は原則として自由に行ますが、一部の制限があります。政治活動とは、政治上の目的を持って行う活動から、選挙運動を除いたもののことです。
例えば、
- 政策の普及や宣伝、党勢拡大のための活動、議会報告会や街頭演説会などの開催
- 後援会活動
- 地盤培養行為(自身の選挙区の有権者に接し、政見などを伝えること
など、政治活動の範囲内であればこうした活動は認められています。
また、事務所の立て看板の設置やポスターの掲示(制限あり)もできますが、期間・サイズ・枚数・内容などが詳細に決められています。
立候補や選挙運動の「準備」も一部できる
公示・告示の前であっても、立候補や選挙運動のための準備行為は、一部認められています。
具体的には、政党の公認を求める行為、候補者選考会・推薦会の開催といった立候補の準備、選挙事務所や選挙カーを借りるための内交渉、政見放送の原稿作成など選挙運動の準備が可能です。
まとめ
- 立候補を届け出る前に選挙運動を行うと、事前運動として選挙違反になる。
- 事前運動を行うと禁錮刑や罰金刑などの処分を受けることがある。
- 選挙運動に当たらない政治活動や、立候補や選挙運動の準備行為など、選挙期間外にできる活動もある。
<参考>
『こんなときどうする?選挙運動150問150答』関口慶太、竹内彰志、金子春菜編、ミネルヴァ書房、2020
『こんなときどうする?Q&A選挙運動早わかり 第7次改訂版』全国町村議会議長会編、学陽書房、2022
選挙運動の期間と事前運動の禁止 | 千葉県佐倉市公式ウェブサイト
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