国会議員に与えられる免責特権とは?わかりやすく解説

国会議員に与えられる免責特権とは?わかりやすく解説

免責特権という言葉は、時折ニュースにも取り上げられているため、耳にした事がある方も多いのではないでしょうか。

日本の国会議員にも憲法で定められた免責特権があります。

具体的にはどのような事が免責される特権なのか、なぜこのような特権を持っているのかなどについて本記事でわかりやすく解説します。

免責特権とは?

免責特権とは、議院内で国会議員が発言した討論の内容が、民事・刑事責任を生じさせるものであったとしても、議院外ではその責任を問われないとする制度のことで、憲法51条に定められています。

この特権によって、国会議員は議会内で基本的には自由な発言を保障されています。

責任を問われないとはどういうことか

「責任を問われない」とは、具体的には、国会議員が議院内で刑法上の名誉棄損罪や侮辱罪、民事訴訟における不法行為責任を問われるような発言や演説を行ったとしても、法的責任を追及されず、懲罰の対象とならないということを意味しています。

ただし、免責される責任は法的なものに限られ、政治的責任には及びません。

また、政党内部の規則違反による制裁などが発生することもあります。

ヤジや暴力も免責の対象になるか

では、国会議員は議員内でどんな発言をしても責任を問われないのか、というとそうではありません。

国会議員の発言についての免責特権は、正式な発言以外では適用されません。例えばヤジや私語は議員の職務行為とは言えないので、免責特権の対象にならないと解されています。

特にヤジは議長の許可を得ない私語であり、議長が不規則発言として制止するものとされています。

暴力については言うまでもなく免責特権の対象にはなりません。

地方議員には原則、免責特権が適用されない

地方議員の発言も国会議員と同様に裁量は大きいものの、免責特権は国会議員のみに適用され地方議員にまで拡大解釈はしないとされています。(判例あり)。

ただし、地方議員の発言について裁判となっても違法性がないと判断される傾向が強く、結果的に責任が免除されるケースも少なくありません。

なぜ国会議員が特別に扱われるのか

なぜ、国会議員にこのような特権が与えられるのでしょうか?

免責特権の趣旨は、国会議員の活動や両議院の自律性を保障するという点にあります。

歴史的には君主が議会内の反対派の議員を逮捕したり、政府がその権力によって議員の職務の執行を妨害するために逮捕したりしたこともあります。

15世紀のイギリスでは、自身の発言によって投獄された議員がこれに不満を述べて発言の自由を主張する請願を提出していた記録もあり、また衆議院の議長が国王に対し「発言に対し寛大であること」を願い出て認められています。こうしてイギリスの権利章典などで院内における発言の自由が確立し、次いでアメリカなどの諸国でも同様の権利が認められていきました。

日本の国会議員の免責特権も、このような歴史的事実への反省から認められるに至った権利なのです。

なお、国会議員には他にも「不逮捕特権」や「歳費特権」といった特権が認められています。

不逮捕特権とは、原則として国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員はその議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならないという特権のことです(憲法第50条)。

また、歳費特権によって国会議員は国庫から相当額の歳費を受けることができます(憲法第49条)。

関連記事 国会議員の不逮捕特権とは?例外や事例も解説

免責特権の判例(札幌病院長自殺事件)

札幌病院長自殺事件は、国家賠償責任と日本国憲法第51条国会議員の発言の免責特権に関して最高裁まで争われた事件です。

1985年に竹村泰子衆議院議員(当時)が衆議院の社会労働委員会で、北海道札幌市のある精神科病院の問題を取り上げ質疑を行いました。竹村氏は、病院長Aが複数の女性患者に対して破廉恥な行為をし、薬物を常用するなど通常の精神状態ではないのではないか、現行の行政の中でこのような医師はチェックできないのではないか等と言及しました。

発言の翌日に、この病院の病院長A氏は「死をもって抗議する」という旨の遺書を残して自殺しました。これを受けて病院長A氏の妻が国に対して損害賠償を請求しています。

この事件について、1993年札幌地方裁判所は「本件発言は憲法第51条の演説に該当し、憲法第51条は絶対的免責特権を定めたものと解することができる」とし、原告の請求を棄却。原告は上告しましたが、1997年に最高裁でも棄却されています。

第一審判決が出た時、竹村氏は「国会議員の免責特権は民主主義の根幹。その絶対性を認めた今回の判決は画期的で、非常に嬉しい」と述べています。

まとめ

本記事の内容をまとめます。

  • 国会議員の「免責特権」は議院内での発言や討論が、民事・刑事責任を生じさせるものであったとしても院外においてその責任を問われないとする制度の事
  • 国会議員の活動や両議院の自律性を保障するために定められている

 

<参考>
公務員ドットコム 
弁護士法人エース

Legal introducer
参議院
みずほ中央法律事務所
レファレンス協同データベース 
政治山
weblio辞書

タイトルとURLをコピーしました