「デジタル庁」発足の目的は?いつからあるの?今の大臣は誰?

「デジタル庁」発足の目的は?いつからあるの?今の大臣は誰?

2021年に発足したデジタル庁。世界的に見るとデジタル化に遅れをとる日本において、革新的な省庁として話題になりました。

本記事ではデジタル庁発足の目的や歴代の大臣や具体的な施策についても解説します。

デジタル庁とは何か

デジタル庁は、日本社会のデジタル化を推進する司令塔として2021年9月に発足しました。

デジタル庁が作られた背景には、省庁や自治体の情報共有や行政手続きにおけるデジタル化の遅れがあります。

新型コロナウイルス関連の対応をめぐり、この日本のデジタル化の遅れが顕在化したため、日本政府は省庁や自治体間でシステムを連携させ、課題解決が図られるようにデジタル庁を始動させました。

デジタル庁ができたきっかけ

デジタル庁の創設は、2020年9月の自民党総裁選で当時候補だった菅義偉氏が「デジタル庁の設置」を公約に掲げたことからはじまりました。

2020年の新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における特別定額給付金の支給時には、行政組織間のシステムの不統一やデータの連携不足により、給付手続きの遅れが指摘されたことも背景にあります。

その後、菅氏は自民党総裁選で当選し、内閣総理大臣に就任。菅政権の主要政策として、デジタル庁を創設する旨を正式に表明しています。

デジタル庁が目指す3つの柱

デジタル庁は2022年6月7日に「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定しました。

そこには「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」というスローガンが掲げられています。

重点計画に示された方針には、主に3つの柱があります。

 ①国民向けのサービスのUI・UX改善

UIとは、ユーザーインターフェースの略称で、ユーザー(利用者)と製品やサービスとのインターフェース(接点)すべてのことを意味しています。つまり、「UIの改善」は利用者である国民が情報に接しやすい環境を整備することが目標です。

UXとは、ユーザーエクスペリエンスの略称で、ユーザー(利用者)がプロダクトやサービスを通して得られた体験を表す言葉です。つまり、利用者である国民がサービスを実際に使ってみてまたそのサービスを利用したいと考えるまでの一連の工程全てを指しています。

「UXの改善」とは、利用者である国民の目線に立ってサービス全体の改善を図ろう、という取り組みです。

②デジタル社会の共通機能の整備・普及

デジタル庁は、行政サービスを効率的で安全に提供するための仕組みづくりを目指しています。

マイナンバーカード・マイナポータル

2016年のマイナンバー制度の開始後マイナンバーカードの発行が開始し、2017年から行政主導のウェブサイト「マイナポータル」が本格運用を開始しました。

これまで役所に行き複数の書類提出が必要だった、子育てや介護、被災者支援や自動車所有などに関わる行政サービスが、マイナンバーカードやマイナポータルを利用することで自宅のパソコンやスマホから申請できるようになりました。

一方、行政サービスを効率化するために開始されたマイナンバーカード制度は、開始後も国民の普及率が当初計画よりも伸びていないことが課題です。

マイナンバーカードは、令和4年(2022年)度末までにほぼ全員に行き渡ることを目指しています。遅くとも2021年度10月までには健康保険証としての本格運用を開始し、2024年度末には運転免許証との一体化などを進める計画です。

2022年9月現在はマイナンバーカードの新規発行、健康保険証としての利用登録を行った場合にポイントを付与するキャンペーンなど、利用の促進施策が進められています。

新型コロナウイルス関連(新型コロナワクチン接種証明書アプリ)

デジタル庁主導で、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けたことを証明する「新型コロナウイルスワクチン接種証明書」(いわゆるワクチンパスポート)を発行しています。

ワクチン接種会場で発行される「接種済証」や「接種記録書」とは別に、海外への渡航時に使えるよう、政府が新たに創設した制度で、政府が公式に公開している新型コロナワクチン接種証明書アプリから取得することができます。

ワクチンパスポートは欧州各国を中心に先行して進められていましたが、日本もこれに倣い令和3年12月20日から導入し、二次元コード付き接種証明書(電子版)海外渡航の用途だけでなく、国内利用にも様々なシーンで活用できるようになりました。

マイナンバーカードを持っている人は、スマホアプリから申請が可能です。

 ③国の情報システム整備・管理の統一化(ガバメントソリューションサービス)

デジタル庁の主導で、政府・自治体が使うコンピューターシステムの整備・運用が進められています。国の情報システムの整備・管理を統一化することにより、効率的なシステムの運用や情報連携を行うことを目指しています。

政府共通の標準的な業務実施環境(PCやネットワーク環境)の提供、各省庁の環境を統合、クラウド上で作業できる環境を整備することで、異なる省庁間や自治体間でのプロジェクト連携がスムーズに進むような仕組みを作っています。

この取り組みによって、民間の情報システムとの連携も実施可能になり、サービスの質の向上やコスト削減も見込まれています。

デジタル庁は何省?組織の特徴と歴代担当大臣

デジタル庁は既存の庁とは位置付けや体制・役割が大きく異なります。

デジタル庁は何省に属するかと疑問に思う方もいますが、デジタル庁はどこの省にも属さず、内閣に設置された、首相が長を務める行政機関です。

首相をトップとする理由は、その強い権限の下で、省庁横断のデジタル行政改革を推し進めるためです。また国務大臣としてデジタル大臣が置かれています。

画像出典

歴代のデジタル大臣・デジタル監(2022年9月現在)

初代大臣:平井卓也氏

2021年9月1日〜2021年10月5日

株式会社電通での勤務や四国新聞社での役員を経て、2000年6月13日、第42回衆議院議員総選挙に無所属で立候補し、当選しました。2018年10月に内閣府特命担当大臣(クールジャパン戦略、知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策)、情報通信技術(IT)政策担当大臣として初入閣しました。

2020年9月16日、情報通信技術(IT)政策担当大臣、内閣府特命担当大臣(マイナンバー制度)のほか、新設されたデジタル改革担当大臣にも就任しました。この時「行政のデジタル改革を総合的に推進するため企画立案及び行政各部の所管する事務の調整」を担当しています。

同年10月4日、第1次岸田内閣が発足し、平井氏はデジタル大臣を退任しました。翌日の引き継ぎ式で後任としてデジタル大臣に就任した牧島かれんについて紹介する際「自民党の中で最初のデジ女をつくろう、と。我々がデジ女をつくりたいということで、(牧島さんには)デジ道を全うするデジ女として頑張ってもらいたい」と語っています。

 

2代目・3代目大臣:牧島かれん氏

2021年10月4日〜2021年11月10日・2021年11月10日2022年8月10日

牧島氏はアメリカのジョージ・ワシントン大学大学院で政治学修士を修めました。帰国後早稲田大学公共政策研究所「河野洋平特別プロジェクト~戦後内閣の軌跡」の担当を機に、引退する河野洋平から神奈川17区の後継を指名されました。2012年の第46回衆議院議員総選挙で再び神奈川17区から立候補し初当選しました。

2020年9月に、菅義偉自民党総裁から女性として初めて自由民主党青年局長に起用されました。2021年10月4日、岸田内閣でデジタル大臣、内閣府特命担当大臣(規制改革)、行政改革担当大臣として初入閣しています。2021年10月7日、過去にNTTから1人5万円の高額接待を受けていたと週刊誌で報道されています。

 

4代目大臣:河野太郎氏(現在)

2022年8月10日〜現在

河野氏は1996年の第41回衆議院議員総選挙に自民党公認で立候補し、当選しています。2015年10月7日、国家公安委員会委員長、行政改革担当大臣、国家公務員制度担当大臣、内閣府特命担当大臣(規制改革、防災、消費者及び食品安全)として初入閣しました。以降、外務大臣、防衛大臣、行政改革担当大臣、国家公務員制度担当大臣、内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、規制改革)に就任しています。

2021年1月18日、菅義偉首相から新型コロナウイルス感染症のワクチン接種推進担当大臣に任命され、厚生労働省など所管官庁のほか、製薬会社、医師会、医薬品卸業者、物流業者など多くの関係者との総合調整を担っています。

2022年8月10日、第2次岸田改造内閣で第4代デジタル大臣に就任しています。

民間人を多く起用

デジタル庁は、人事にも特徴があります。国民側の視点とそれを提供する行政サービス側の視点を両立させるため、デジタル庁は民間の人材を積極的に採用する方針を固めています。

また、他の省庁での事務次官に相当し、各部局などの事務の監督にあたる「デジタル監」には民間の人材を起用し、幹部にも多数民間人が採用されています。

 

初代デジタル監:石倉洋子氏

2021年9月1日〜2022年4月26日

石倉氏はハーバード大学で経営管理学博士の学位を取得しました。その後通訳、経営学者として活動しており、マッキンゼー・アンド・カンパニーにてコンサルティングに従事し、青山学院大学、一橋大学、慶應義塾大学で教鞭を執っていたこともあり、現・一橋大学名誉教授です。また、文部科学省の中央教育審議会の委員や日本郵政公社の理事をはじめ、日本学術会議の第20期副会長や内閣府の総合科学技術会議の議員など、多くの公職を兼任しています。

石倉氏は初代デジタル監に起用されましたが、専門は経営学でありデジタル技術の専門家ではありません。プログラミングの講義も受けましたが、「8週間から12週間学んだら死にそうになり、Pythonは挫折した」と語っています。就任当初、デジタルへの知見の少なさや70歳を超える体調面への懸念を指摘する声がありました。石倉氏は、就任当時72歳でした。

 

2代目デジタル監:浅沼尚氏(現職)

2022年4月26日〜現在

2001年3月、慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了後、株式会社東芝に入社。主に映像機器や生活家電部門でインダストリアルデザイナーとしての業務に従事した後、2013年1月、東芝アメリカ情報システム社に出向し、デザインディレクターに着任しました。2017年2月、Tigerspike株式会社(現Concentrix Catalyst)へ転職。2018年9月からJapan Digital Design株式会社のChief Experience Officerを経て、2021年9月デジタル庁発足時に同庁のChief Design Officerとなります。2022年4月、第2代デジタル監に就任しました。現在45歳です。

※2022年9月20日現在の情報です

デジタル庁に関する法律

復興庁と同様に国家行政組織法の適用が除外されており、必要な事項はデジタル庁設置法に規定されています。

まとめ

本記事の内容をまとめます。

  • デジタル庁は、日本社会のデジタル化を推進する司令塔として2021年9月に発足した。
  • 創設には、新型コロナウイルス感染拡大によって日本の行政のデジタル化の遅れが明るみに出たことが背景にある。
  • デジタル庁の主導でマイナンバーカード制度の普及や国の情報の管理・統一、ワクチンパスポートの発行などが行われている。
  • 民間人を積極的に採用する人事や首相をトップとする組織で、他の省庁と異なる特徴がある。

 

<参考>
All About「デジタル庁」とは? 役割や国民へのメリットなどをわかりやすく簡単に解説
Cross Marketing デジタル庁とは?発足の背景や今後の施策を解説
Docusign デジタル庁誕生から1カ月。創設の経緯から現在までを振り返る
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症 予防接種証明書(接種証明書)について
デジタル庁 新型コロナワクチン接種証明書アプリ
幻冬社 GOLD ONLINE
デジタル庁 デジタル社会の実現に向けた重点計画
ビジネス+IT
日経XTECH なぜ首相がトップに?デジタル庁の体制と役割を理解する6つの疑問
DocuSign デジタル庁誕生から1カ月。創設の経緯から現在までを振り返る
日経XTECH なぜ多くの民間人を起用するのか? デジタル庁の疑問5
日経XTECH 石倉洋子初代デジタル監が退任へ、庁の立ち上げを一区切りに体調面を考慮か
衆議院
最終閲覧日は記事更新日と同日

タイトルとURLをコピーしました