日本には、現状の都道府県制度を廃止し、これまでより広域の地方公共団体を作る「道州制(どうしゅうせい)」の構想があります。
本記事では、「道州制」についての概要や議論の歴史をメリット・デメリットなどと共に紹介します。
道州制とは?
道州制とは国家の地方分権を推進する制度のことです。
日本では現行の都道府県制を廃止し、行政区画として道と州を置く地方行政制度のことを指します。
47都道府県をいくつかの「道州」というブロックに編成し、それらの道州に現在の都道府県より高い行政権を与えるという、現在構想段階の制度です。
道州制を導入すると、国の事務・権限や税財源を大幅に移譲するため地方分権を実現させる地方自治制度として期待されます。
道州制については、国、政党、経済団体などにおいて様々な検討がなされています。
道州制のメリット・デメリット
道州制を導入することで予想されるメリット・デメリットについてまとめます。
メリット
道州が責任を持って地域経営を行うことになり、その地域に本当に必要な政策をより迅速で効果的に実施できるようになることが期待されています。
また、現在の都道府県を越えた規模や視点で情報・技術・人材などの集積・配置ができるようになることが期待されます。
例えば、県外に通じる幹線道路の整備や道州内の河川、空港などの大規模な公共事業を推進しやすくなり、社会資本の整備が効率的できるようになります。
また、税制の自由度が高まるため、税制優遇などの企業立地政策が行いやすくなります。さらに、産業振興にもメリットがあり、福祉サービス水準の向上なども見込めます。
デメリット
道州制を導入することで住民の管理など事務作業は膨大になり、行政サービスが格段に遅くなることが懸念されています。
また、大都市を含まない道州では財力が低くなる可能性があります。
そのような地域では地方自治体が運営する学校や病院などの経営も困難になるなど、道州間での財源格差が広がりかねません。
また、再編成によってブランド化された県産品の名称などにも変更が必要となり、地域の独自性がなくなる可能性もあります。
道州制特区と道州制特区推進法
道州制の導入に向けて「道州制特区」という試験的な制度運用も行われています。
北海道は県の合併を経なくても道州制に移行できることから、北海道を全国に先駆けて道州制のモデルとする特別な区域にしようとするのが「道州制特区」の考え方です。
道州制特区では、国から北海道に対しての権限移譲や地域の特性にあった制度への変更等を試験的に実施しています。
この結果を元に全国的な導入に向けて議論調査を行うこととしています。これらを踏まえて、道州制特区推進法が2017(平成29)年12月13日に国会で可決・成立しました。
なお現在、有力な道州の区分け案として北海道を一つの道州としていますが、あくまで区分け案のひとつですので、必ずしも北海道が単独で道州となるとは限りません。
道州制はいつから議論されているのか
日本では道州制について、戦前から議論されてきました。
1955年には、関西経済連合会が「地方行政機構の改革に関する意見」において、都道府県の廃止と国の総合出先機関として「道州」を設置することを提案しました。
2017(平成29)年に内閣総理大臣の諮問機関である第28次地方制度調査会が、地方分権改革の推進策として、「道州制の導入が適当」との方向性を打ち出しました。
衆院選における各政党マニフェストにおいても、複数政党が道州制の導入に向けた取組みを記載しており、国会でも継続的に議論が行われました。
「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2018」では、地方分権改革の推進と併せて、道州制についても必要な検討を進めることとしています。
同年1月には道州制の導入に向けた「道州制ビジョン」を策定するための懇談会を設置していますが、2018年(平成30)年2月には廃止されています。なお、廃止となった時期は岸田現総理が自民党政調会長だった期間と重なります。
2022年現在は、懇談会が設置された頃と比較すると道州制に関する議論に盛り上がりは見られません。
まとめ
本記事の要点を以下にまとめます。
- 道州制とは国家の地方分権を推進する制度のことで、日本では現行の都道府県制を廃止し、行政区画として道と州を置く地方行政制度のことを指す。
- 道州制を導入すると地域ごとに必要な政策を推進できるメリットがある一方、地方に任された行政サービスが格段に遅くなるなどのデメリットもある。
- 2015年頃、国会等で議論が活発に行われたが2022年段階では下火になっている。
<参考>
道州制のあり方に関する答申
神奈川県「道州制」
自民政調改革、総裁直属5~6機関廃止へ 外交戦略や道州制 – 産経ニュース
北海道「道州制特区」
宮城県「道州制とは」
パブリネット
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