裁判員制度とは?目的や問題点、選ばれる確率、陪審員制との違いまで簡単に解説

裁判員制度とは?目的や問題点、選ばれる確率、陪審員制との違いまで簡単に解説

一般国民が裁判に参加する裁判員制度が導入されてから13年が経ちました。

この記事では、裁判員制度についてわかりやすく解説します。

裁判員制度とは

ここでは、裁判員制度とは何か簡単に説明します。

裁判員制度の概要

裁判員制度とは、国民の中から裁判員が選ばれて刑事裁判に参加する制度のことです。

裁判員制度の対象となる裁判は、重大な刑事裁判の第一審です。裁判員は裁判官とともに、裁判の審理や判決に参加します。

裁判員制度の目的

裁判員制度は2009年(平成21年)に司法制度改革の一環として導入されました。

裁判員制度の目的は、司法への国民の参加を促し裁判に国民の感覚や視点を反映することとされています。裁判員制度が国民が司法を身近に感じるひとつの契機となることが期待されています。

裁判員制度の仕組み

裁判員制度では、基本的に裁判官3人と裁判員6人で裁判に臨みます。裁判員は裁判官とともに、公判・評議・評決を行います。

  • 公判:法廷での証拠書類の取り調べや証人、被告人への質問
  • 評議:裁判官と裁判員による非公開の議論
  • 評決:有罪、無罪の判定と量刑の決定

評決は全員一致とならない場合、最終的に多数決で行われますが、有罪判決とする場合は裁判官と裁判員がそれぞれ1人以上賛成している必要があります。

もしも裁判員に選ばれたら?

裁判員の選出について、気になることを解説します。

裁判員に選ばれる確率

1年に裁判員に選ばれる確率は、約0.01%です。

裁判員は、20歳以上の衆議院議員選挙の有権者の中からくじで選ばれます。令和5年からは、18歳以上が対象となります。ただし、事件の関係者や国会議員、弁護士、自衛官などは裁判員になることはできません。

2012年(平成24年)に裁判員に選ばれた人は約8600人、補充裁判員に選ばれた人は約2900人でした。

裁判員は辞退できる?

裁判員の選任手続きは段階的に行われます。原則的に辞退はできませんが、一部の理由では裁判所により辞退が認められています。

まず、抽選で翌年の裁判員候補者名簿を作成する際に、辞退理由等を調べる調査票が送付されます。この段階で、70歳以上の人、学生、5年以内に裁判員を務めた人、介護・育児等やむを得ない理由がある人は辞退可能です。

また、事件ごとに候補者名簿の中からくじで裁判員候補者が選ばれます。この際にも、辞退希望を聞く質問票が送付されます。

裁判員の報酬

裁判員候補者として裁判所に出向いたり、裁判員として裁判に参加したりすると交通費と日当が支払われます。日当は、裁判員候補者・選任予定裁判員は8050円以内、裁判員・補充裁判員は10050円以内でかかった時間に応じて決められます。

裁判員制度の問題点

導入されてから10年以上経つ裁判員制度ですが、いくつか課題が指摘されています。

辞退率・欠席率が高い

裁判員の辞退率は、裁判員制度が始まった2009年(平成21年)の約53%から2021年(令和3年)の約67%へと上昇傾向にあります。

また、辞退が認められた人を除き、選任手続日に出席した裁判員候補者の割合は2009年(平成21年)の約84%から2021年(令和3年)の約71%へと減少傾向にあります。

令和3年の最高裁によるアンケートでは、裁判員を経験した人の95%以上が「よい経験だった」と回答しています。一方で、これまでの平均審理日数は約9日であり、普段の仕事や家事・育児などとの調整が難しい場合もあることが指摘されています。

裁判員の精神的負担

裁判員裁判で扱う事件は、殺人や強盗致傷といった犯罪であり死刑や無期懲役といった重い刑罰の対象となる事件です。

そのため、ショッキングな証拠写真を見たり、重い刑罰の決定に精神的な負担を感じる裁判員もいます。

また、裁判員には評議の内容などについて守秘義務があり相談することが難しく、重荷に感じる場合もあります。

陪審制との違いは?

海外にも裁判員制度と類似の制度があり、主に陪審制と参審制があります。

裁判員制度と陪審制、参審制の主要な違いは、裁判員等の選び方と量刑判断の有無です。

裁判員と陪審員は事件ごとに選ばれるのに対し、参審員は任期制です。また、裁判員と参審員は裁判官とともに有罪・無罪の判断に加え、有罪の場合の量刑判断も行います。一方で、陪審員は、陪審員のみで有罪・無罪の判断をし、判事(裁判官)が量刑判断をします。

陪審制はアメリカやイギリス、参審制はフランス・イタリア・ドイツなどでとられています。

まとめ

  • 裁判員制度は、くじで選ばれた国民が裁判官とともに裁判に参加する制度
  • 裁判員制度の課題には、辞退率・欠席率の高さや裁判員の精神的負担が挙げられる
  • 裁判員制度と陪審制や参審制の主な違いは、裁判員等の選び方と量刑判断の有無

 

<参考>

裁判員制度Q&A | 裁判員制度 (courts.go.jp)
裁判員の仕事や役割
裁判員制度
どうして市民が参加するの? | 裁判員制度
裁判員の選ばれ方 | 裁判員制度 (courts.go.jp)
Q8  裁判員等に選ばれる確率はどれくらいですか? | 法務省ホームページ(携帯版) (moj.go.jp)
Q10 裁判員を辞退することはできないのですか? | 法務省ホームページ(携帯版)
裁判員候補者に選ばれたら|裁判員ネット/「あなたが変える裁判員制度」
裁判員制度Q&A
裁判員制度のこれまでと 今後の課題
コロナ禍でも裁判員参加 施行12年、市民に浸透
裁判員候補者の辞退率上昇・出席率低下の 原因分析業務 報告書
令和3年における 裁判員裁判の実施状況等に関する資料
裁判員等経験者に対するアンケート 調査結果報告書 (令和3年度)
裁判員裁判の実施状況について(制度施行~令和4年7月末・速報)
裁判員経験者、8割「心の負担感じた」 初の精神的負担調査(2/2ページ) – 産経ニュース
「市民からの提言~辞退率上昇と出席率低下を改善するために~」|裁判員ネット/「あなたが変える裁判員制度」
【裁判員制度10年(3)】重い負担 6割超が辞退 経験共有へ「守秘義務」の壁も
諸外国の陪審制度・参審制度の概要
浜島書店『最新図説 政経』
東京法令出版『政治・経済資料』

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