天下りとは?仕組みや現在の問題点を簡単に解説

天下りとは?仕組みや現在の問題点を簡単に解説

ニュースや新聞でしばしば天下り問題が取り上げられることがあります。

天下りとは、官僚が退職後に関係の深い企業や特殊法人などに再就職することを指します。

天下りと聞くと「悪いこと」というイメージがありますが、なぜ起こるのか、具体的に何が問題なのかご存じでしょうか。

この記事では、天下りの意味や仕組み、問題視されている理由についてわかりやすく解説します。

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天下りとは

ここでは、そもそも天下りとは何なのか、また、天下りが起こる仕組みを解説します。

天下りの意味

天下りとは、中央省庁の公務員(官僚)が退職後に、関係の深い民間企業や特殊法人等に再就職することです。

天下りには、もともと「神が天界から地上に降りてくる」という意味があります。

戦前までは公権力を持つ者を「お上」とみなす風潮があったことから、天下りという言葉が使われるようになりました。

天下りは、ひとりにつき複数回行われることもあり、天下りを複数回行うことを「渡り」と呼びます。

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天下りの違法性

国家公務員の再就職は原則認められていますが、国家公務員法によっていくつかの規制が存在します。

主な禁止行為は次の3点で、違反した職員は懲戒処分や刑事罰の対象になります。

  • 官庁による再就職のあっせん行為
  • 現職職員の求職活動
  • OBによる再就職後2年以内の働きかけ

違法な天下りとして大きな注目を集めたのが、2017年に発覚した文部科学省による組織的なあっせん問題です。

元高等教育局長が利害関係のある大学へ再就職した一件にはじまり、最終報告では62件もの国家公務員法違反が確認されました。

結果として、OBを含む計43人に懲戒や減給などの処分がくだされました。

天下りが起こる仕組み

公務員の定年は60歳ですが、国家公務員Ⅰ種採用試験に合格したいわゆる「キャリア官僚」は、50歳前後で退職する慣行があります。

天下りが起こる背景にあるのが、この早期退職慣行です。

キャリア官僚は、入庁後年功序列で昇進し、40歳前後で課長職に就任します。

しかし、より上位のポストは狭まり、かつ若手にも活躍の場を与える必要があるため、出世競争に敗れた者は退職していきます。

結果、定年に満たずに退職した官僚たちが、官庁とは別の場所に働き口を求め、天下りが起こるのです。

天下りはなぜ悪いのか

天下りによって起こる官民の癒着税金の無駄遣いが問題視されています。

官庁は、民間企業や特殊法人等に対して行使できる幅広い権限を握っています。

許認可権限予算権限などが代表例です。

天下り官僚が、元いた官庁に働きかけるようなことがあると、こういった権限の不当な行使が起こり得ます。

たとえば、特定の企業・産業に有利なルールが作られたり、税金を使って必要以上の補助金が支出されたりすることが考えられます。

結果、民間の公正な競争の阻害や、財政の逼迫(ひっぱく)を招いてしまう恐れがあるのです。

天下りがなくならない理由

厳しい批判の声を浴び続ける天下りは、なぜなくならないのでしょうか。

日本国憲法第22条では、公共の福祉に反しない限りにおいて、「職業選択の自由」が保障されています。

そのため、法律で官僚の天下りを一律に禁止することは困難です。

また、受け入れサイドに天下りに対するニーズがあるのも事実です。

たとえば、官庁での勤務経験から得られる専門知識や能力は、民間企業等においても役立つものが少なくありません。

解決策としては官僚の早期退職慣行の撤廃などが挙げられますが、抜本的な問題解決への議論が思うように進んでいないのが現状です。

まとめ

この記事では、天下りとは何なのか、またその仕組みや問題点を解説しました。

  • 天下りは、官僚が退職後に関係の深い企業や特殊法人などに再就職すること
  • 天下りが起こる背景には、キャリア官僚の早期退職慣行がある
  • 天下りの問題点として、官民の癒着や税金の無駄遣いが挙げられる
  • 職業選択の自由や、受入れ側のニーズがあるため天下りはなかなかなくならない

 

 

<参考>

読売新聞オンライン | 「天下り禁止」に異論・・・“ミスター文部省”が見た問題点
朝日中高生新聞 | 教育の手本にならない文科省からの「天下り」
あさがくナビ | 「天下り」で文科省処分 なぜ起きるの?何が問題?
福岡県弁護士会 | 天下りの研究
東京財団政策研究所 | 官僚の天下り問題:ニーズがある限りイタチごっこは続く
東京法令出版:政治・経済資料
浜島書店:最新図説 政経
文科省天下りで37人処分 最終報告、違法事案62件に – 日本経済新聞 (nikkei.com)
衆議院議員江田憲司君提出官僚の天下り禁止に関する質問に対する答弁書 (shugiin.go.jp)
最終閲覧日は記事更新日と同日

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