近年、IT技術の目覚ましい発展が続いています。
そうした中、IT技術を取り入れた新しい街作りである「スーパーシティ構想」の話題について気になっている方も多いでしょう。
本記事では、スーパーシティの概要を以下のポイントに沿って分かりやすく解説します。
- スマートシティとの関係
- スーパーシティ構想の概要
- 対象となる地区はどこか?
- 実現に向けた流れ
スーパーシティとは?
内閣府によると、スーパーシティ構想は2030年頃にやってくる未来社会を先立って実現する計画だとしています。
ここでは、スマートシティとスーパーシティの違いに注目しながら概要を見ていきましょう。
元となるのはスマートシティ
スマートシティとは、ICT(情報通信技術)などを活用した最先端の街作りのことです。
都市の発展に伴って現れた行政・医療・防災・交通などにおける諸問題を、最先端技術によって解決することを目的としています。
スマートシティを実現する上で、以下のような「3つの基本理念」と「5つの基本コンセプト」が掲げられています。
【基本理念】
- 市民中心主義⇒サービスを利用する市民の生活向上を目的に、市民が自ら参加して取り組む
- ビジョン・課題フォーカス⇒ただ新技術を取り入れるのではなく、地域の現実的な課題解決にフォーカスする
- 分野間・都市間連携の重視⇒分野や自治体を越えて広範囲の連携を行う
【基本コンセプト】
- 公平性、包摂性の確保⇒ITの得意・不得意に関わらず誰でも使える
- プライバシーの確保⇒個人情報の保護を徹底する
- 相互運用性・オープン性・透明性の確保⇒他の地域やシステムとも相互に連携でき、データをオープンに流通させ、誰でも情報を見られるようにする
- セキュリティ・レジリエンシーの確保⇒都市のサイバー・セキュリティや災害に対する安全性を高める
- 運営面、資金面での持続可能性の確保⇒都市の運営と資金源が安定的に続く
スマートシティには、都会・地方を問わず人びとの暮らしを向上させる役割が期待されています。
これがスマートシティだ!知っておくべき事例やスーパーシティとの関係とは | スマート選挙ブログ (smartsenkyo.com)
スーパーシティ構想
スーパーシティ構想とは、スマートシティの取り組みを1つの都市でまるごと実現することを目指す日本の国家プロジェクトのことです。
これまでスマートシティは、部分的な試験に留まっていました。都市運営と暮らしに実装すべく、行政や法律などを含め、さまざまな面から具体的な取り組みが行われているのです。
スマートシティとスーパーシティの違いは、目的の違いにあると言えるでしょう。
スマートシティが都市における先端技術の実現を目指すのに対し、スーパーシティの目的は先端技術を活かして都市運営や実生活を向上させることです。
スーパーシティ構想には、以下のような3つのポイントが挙げられています。
- 生活全般にまたがる複数分野の先端的サービスの提供⇒AIやビッグデータを活用し、行政・交通・医療・教育など幅広い分野を便利にする
- 複数分野間でのデータ連携⇒複数の分野でさまざまなデータを連携し共有する
- 大胆な規制改革⇒最先端サービスを実現するため、一体的な規制改革を推進する
2021年の公募では、全国から31の自治体がスーパーシティの候補地として立候補しました。
スーパーシティ型国家戦略特区
2022年4月、スーパーシティ候補地の選定結果が閣議決定されました。
選ばれたのは茨城県「つくば市」と、大阪府「大阪市」の2つです。
ここでは、スーパーシティ型国家戦略特区に指定された両市の計画について紹介します。
つくば市
つくば市の特徴は、スーパー「サイエンス」シティ構想です。
デジタルと「ロボット」などの先端技術を、つくば市全域に実装することを目指しています。
事業構想として挙げられているのは、以下のような内容です。
- 移動・物流分野⇒新しい交通手段の導入、ロボットやドローンによる配送
- 行政分野⇒インターネット投票の実現、外国人に向けた多言語での情報発信
- 医療分野⇒・マイナンバーを活用したデータ連携による健康・医療サービス
- 防災・インフラ・防犯⇒避難の効率化、避難所での医療連携、インフラの長寿命化
- デジタルツイン・まちづくり⇒収集したデータを仮想空間に再現する技術(デジタルツイン)によって街を3Dマップ化し、効率的に都市を運営
- オープンハブ⇒外国人による創業活動を支援するなどのイノベーション促進
つくば市におけるスーパーシティ構想の詳細については、以下のリンクを参考にしてください。
大阪市
大阪市のスーパーシティは「データで拡げる健康といのち」がテーマです。
2025年に開催される「大坂万博」を見据えて、万博の予定地である「夢洲地区」と大阪駅前の「うめきた」が開発される予定です。
工事の段階から先端技術を活用し、万博後も住民の暮らしや都市競争力が向上することを目指しています。
事業構想は以下のような内容です。
- 最適移動社会の実現⇒空飛ぶ車・自動運転バスなどの実装
- 健康長寿社会の実現⇒国籍や場所にとらわれない国際医療サービス、ヒューマンデータとAIを活用した健康増進プログラムの提供
- データ駆動型社会の実現⇒AIによる気象予報、VR(仮想現実)・MR(複合現実)技術などを活用した公園など
大阪におけるスーパーシティ構想の詳細については、以下のリンクを参考にしてください。
スーパーシティ成立の流れ
ここでは、スーパーシティ構想が成立するまでの流れを解説します。
これまでの経緯
2018年より『「スーパーシティ」構想の実現に向けた有識者懇談会』が始まりました。
これを受け、2020年5月にスーパーシティ法案(国家戦略特別区域法の一部を改正する法律)が可決します。
同年12月から候補地の公募が開始され、提案を出したのは31の地方自治体です。
そして2022年3月にスーパーシティ型国家戦略特区として「つくば市」「大阪市」、デジタル田園健康特区として「吉備中央町」「茅野市」「加賀市」の合計5都市が選定されました。
今後の展開
つくば市は筑波大学を始めとする50の事業者と連携し、2030年までにスーパーシティを実現するとしています。
2023年10月には第2回つくば市スーパーシティ型国家戦略特別区域会議が開催され、より具体的な事業構想を策定が行われています。
大阪市は2023年度から夢洲地区の開発を本格化させ、人や資材の輸送、作業員の健康管理などに先端技術を活用するとしています。
万博では空飛ぶ車による会場へのアクセスなどを実現し、万博後も見据えて社会に実装する計画です。
うめきたでは既に工事が始まっており、2024年9月頃に先行まちびらき、2025年春に追加部分を開業、2027年に全体開業する予定となっています。
まとめ
本記事では、スーパーシティについて解説しました。
- スーパーシティとは、最先端技術を都市に実装する日本の国家プロジェクトのこと
- スマートシティの目的は技術面、スーパーシティの目的は実生活面の向上
- 2018年から会議が始まり、2020年にスーパーシティ法案が可決した
- 候補地の選定結果は、茨城県つくば市と大阪府大阪市
- つくば市は2030年までに、デジタルやロボット技術の社会実装を目指す
- 大阪市は2025年の万博後まで見据え、医療や乗り物を中心とした実装を目指す
<参考>
スマートシティ – Society 5.0 – 科学技術政策 – 内閣府
スマートシティガイドブック(概要)|内閣府
スマートシティガイドブック(本文)第1章|内閣府
スーパーシティ|地方創生 – 内閣官房・内閣府
「スーパーシティ」構想について|内閣府
スーパーシティ、デジタル⽥園健康特区について|内閣府
スーパーシティ|つくば市公式ウェブサイト
つくばスーパーサイエンスシティ構想|つくば市
デジタルツインとは?意味・定義 | ITトレンド用語 | NTTコミュニケーションズ
つくば市のスーパーシティ構想 先端技術とサービスで社会課題を克服 | 事業構想2022年7月号
大阪府・大阪市スーパーシティ構想 再提案資料|大阪府・大阪市
スーパーシティの実現をめざしています|大阪市
うめきた2期地区開発プロジェクト公式サイト
冬以降、区域会議立ち上げ【スーパーシティって何@つくば】4|NEWSつくば
これまでに実現した規制改革事項・今後のスケジュール等(事務局提出資料)| 内閣府
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