マイナポイントなど政府による積極的な普及促進により、マイナンバーカードの普及率は拡大しています。
マイナンバーカードを取得したものの、そもそもマイナンバー制度とはどのような制度かよくわからないという方は多いのではないでしょうか。
マイナンバー制度とは、複数の行政機関等にまたがる個人の情報を一元管理できるようにするための制度です。
この記事では、マイナンバー制度の概要や導入経緯、メリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
また、海外の先進的な事例についても紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
マイナンバー制度とは
ここでは、マイナンバー制度の概要と導入経緯、マイナンバーカードについて解説します。
マイナンバー制度の目的と仕組み
マイナンバー制度とは、マイナンバーを用いて、複数の行政機関等に存在する個人の情報が、同一の情報であることを確認するための制度です。
そもそもマイナンバーとは、住民票を持つ全住民に付与される12桁の番号で、正式名称は「個人番号」といいます。
日本には、年金番号や住民票コード、運転免許証番号など様々な番号が存在しますが、これらは担当行政機関ごとに縦割りの管理がなされていました。
実は、この状況は先進国としては珍しく、多くの先進国では、各行政機関で共通的に使用できる番号を発行し、情報の連携がなされていることが一般的でした。
マイナンバーが導入されたことで、日本でも複数機関にまたがる情報の一元的な管理ができるようになりました。
現行法では利用範囲を社会保障・税・災害対策の3分野と定めていますが、政府は今後様々な分野への利用拡大を検討しています。
マイナンバー制度はいつから始まった?
マイナンバーのように国民一人ひとりに番号を付与する制度に関しては、1968年頃から議論が始まっていました。
しかし、「国民のプライバシーを侵害する」や「監視社会を作り出す」などの反対意見があり、頓挫した過去があります。
その後「税と社会保障の一体化」や「政府のデジタル化」の必要性を背景に、導入にむけた前向きな議論が進み始めます。
そして、2013年5月に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)」が成立しました。
2015年10月には国民にマイナンバーが通知され、2016年1月1日よりマイナンバー制度の本格運用が開始されました。
マイナンバーカードとは
マイナンバーカードとは、マイナンバーや顔写真、氏名などが記載されたICチップ付きカードです。
行政手続きのオンライン申請や本人確認書類として利用できるなどのメリットがあります。
マイナンバーカードは、デジタル社会に必要なツールとして位置づけられ、政府による積極的な普及促進がなされています。
マイナンバーカードについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
【関連記事】マイナンバーカードのメリットとは?活用事例やポイントについて解説
マイナンバー制度のメリット・デメリット
ここでは、マイナンバー制度のメリットとデメリットを解説します。
メリット
マイナンバー制度のメリットとしては、大きく次の3点が挙げられます。
- 国民の利便性の向上
- 行政の効率化
- 公平・公正な社会の実現
まず、国民は行政手続きの簡素化や、行政機関からサービスのお知らせを受け取れるといった恩恵を受けられます。
また、行政機関における情報の照会・転記・入力などに必要な時間や労力の大幅な削減が見込まれるでしょう。
さらに、脱税や給付の不正受給等の防止につながるとともに、きめ細かな行政サービスの提供が可能になります。
デメリット
マイナンバー制度のデメリットとしては、情報漏洩による被害への懸念が挙げられます。
たとえば、同様の制度が存在するアメリカや韓国では、なりすましによる被害などが問題となりました。
デジタル庁は、この点について、海外の事例を踏まえたうえで、制度・システムの両方の側面から様々な安全対策が講じられているとしています。
また、マイナンバー制度に便乗した不正な勧誘などの被害も報告されており、消費者庁は注意喚起を促しています。
世界のマイナンバー制度
日本のマイナンバー制度のように、国民一人ひとりに固有の番号を割り当てる取り組み(共通番号制度)は、多くの先進国で導入されています。
ここでは、デンマーク・韓国・アメリカの事例を紹介します。
デンマーク
デンマークは、2018年・2020年と2回連続で世界電子政府ランキング1位を獲得するなど、世界で最もデジタル化が進んでいる国の1つです。
デンマークでは、1968年に共通番号(CPR番号)が導入されました。
また、インターネットの普及を背景として、2010年には電子署名、電子認証を行うためのIDである「NemID」が導入されています。
NemIDを活用したサービスには、診察の予約・検査結果の報告・電子処方箋などができる医療ポータル「Sundhed.dk」や、給与受け取り・納税が行われるインターネット口座「NemKonto」などがあります。
韓国
韓国では、1968年から全国民を対象に共通番号(住民登録番号)が付番されるようになりました。
韓国の代表的なデジタルサービスに、市民ポータル「政府24(GOV24)」があります。
ほとんどの行政手続き(転入・転出、住民票、自動車登録、ワクチン接種証明書など)を政府24上で完結させることができ、国民の満足度は90%を超えるといわれています。
また、韓国政府は、政府24のサービス開始以降、日本円で年間約1,420億円のコストが削減されていると試算しました。
アメリカ
アメリカでは、1936年の時点で共通番号(ソーシャルセキュリティナンバー)が導入されました。
国民の所得や納税情報の連携などの行政分野のほか、民間分野における手続きでも多く用いられています。
しかし、利用範囲の拡大に伴い、個人情報流出やなりすましが問題視されているのが実情です。
プライバシー保護は、アメリカの重要な社会課題の1つとなっており、現在でも法改正などの議論が行われています。
まとめ
この記事では、マイナンバー制度の概要やメリット・デメリット、海外の取組み事例を解説しました。
- マイナンバー制度とは、マイナンバーを用いて、複数の行政機関等にまたがる個人の情報を一元管理できるようにするための制度
- メリットとしては、国民の利便性向上や行政の効率化などが挙げられる
- デメリットとしては、情報漏洩被害への懸念などが挙げられる
- デンマーク・韓国・アメリカなど先進国各国では、共通番号を活用し、様々な取り組みがなされている
<参考>
デジタル庁 | マイナンバー(個人番号)制度
総務省 | マイナンバー制度
日経クロステック | 【マイナンバーを読み解く素朴な疑問】Q3:かつて「国民ID」が話題になったが、マイナンバーとの関係は?
消費者庁 | マイナンバー制度に便乗した不正な勧誘や個人情報の取得にご注意ください!
NTTデータ | マイナンバー対応について~セキュリティの観点から~ 第4回 マイナンバー漏えい時の想定被害について
アクセンチュア | 諸外国における共通番号制度を活用した行政手続のワンスオンリーに関する取組等の調査研究
日経クロステック | 電子政府ランキングで日本は14位に後退、トップ3はデンマーク・韓国・エストニア
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