パブリックコメントとは、政策の立案や、政令・省令等の制定において、行政が広く一般から意見を募ること、及びその意見を指します。
日本では導入こそされているものの、そこまで認知や活用が進んでいないと言われるパブリックコメント。
しかし、世界はもとより日本でも、パブリックコメントによって、既存の議論や法案が大きく変わる方向に動いた事例が存在します。
パブリックコメントとは
日本では1999年にパブリックコメントの導入が閣議決定され、2005年改正の「行政手続法」で法制化されました。
これにより、国においては、政令・省令等を定める場合に、原則パブリックコメントを募集することが義務付けられました。地方自治体においても、努力義務が課されています。
パブリックコメントで意見を募集した場合、結果の公表が義務付けられています。
国の行政機関により募集されたパブリックコメントについては、「e-Govパブリック・コメント」で確認することができます。経済産業省・国土交通省など、所管省庁名で検索できるほか、キーワードや募集時期でも検索が可能です。
2022年10月だけでも、各省庁から100件を超える公募がありました。
地方自治体でのパブリックコメント活用状況としては、少し古い調査結果になりますが、2006年2月総務省調査に基づくデータがあります。
2005年4月末時点で、パブリックコメントを導入しているのは政令市及び中核市で約7割、特例市で約5割、ということです。
15年以上経っていますので、さらに普及が進んでいるものと推測されます。
パブリックコメントの活用事例(世界)
果たしてパブリックコメントに意味はあるのか?どの程度政治に反映されるものなのか?
そのように疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
パブリックコメントによって法制度が大きく変わる方向に動いた世界の例としては、欧州におけるサマータイム廃止の動きが挙げられます。
パブリックコメントで84%が廃止を支持したことで、サマータイムを廃止する法案が、2021年欧州議会により可決されました。
実際には、その後、新型コロナウイルスへの対応に追われ、法令化の議論や手続は進んでいません。
2022年11月現在、サマータイムは続いています。しかし、一つの大きな制度が、パブリックコメントにより廃止の方向に傾いたのは事実です。
パブリックコメントの活用事例(日本)
では、日本ではどうでしょうか。
サマータイム廃止の動きほど大きくはないかもしれませんが、パブリックコメントにより既存の方向性が大きく変わった事例は存在します。
一例として、国税庁が通達案として作成していたサラリーマンの副業に関する規定が挙げられます。
「年間収入300万円以下」を「雑所得」として扱う、という主旨の通達でしたが、パブリックコメントにより通達案撤回に至っています。
記憶に新しいところでは、新型コロナウイルスに関わるワクチンパスポートの仕様についても、デジタル庁より意見が公募されています。
まとめ
- パブリックコメントとは、政策の立案や、政令・省令等の制定において、行政が広く一般から意見を募ること、及びその意見
- 欧州では、パブリックコメントによりサマータイム廃止に向けた動きが生じた(2022年11月現在、まだ廃止はされていない)
- 日本では、サラリーマンの副業に関する通達案が、パブリックコメントにより撤回されたケースも
<参考>
パブリック・コメント制度について|e-Govパブリックコメント
パブリックコメント|国立国語研究所
パブリックコメント手続き制度について|三重 津市
パブリック・コメントの運用の改善について|総務省
パブリックコメント | 日経クロステック(xTECH)
欧州委員会、サマータイムの廃止提案へ: 日本経済新聞
EUが廃止法案を可決 サマータイムが姿を消すワケ | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
これで最後?EUが夏時間へ 廃止検討するも議論進まず|朝日新聞
(受付終了)コロナワクチンの接種証明書(電子交付)の仕様に関するご意見を募集します|デジタル庁
「サラリーマン副業300万円問題」で国税庁を打ち負かした「パブリックコメント」の凄まじい威力(幻冬舎ゴールドオンライン) – Yahoo!ニュース
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