アーダーン首相が取得して話題となった議員の産休育休について

アーダーン首相が取得して話題となった議員の産休育休について

世界中を混乱に陥れた新型コロナのパンデミックですが、中でも迅速なコロナ対策を行い、いち早く感染拡大を収束させた国の一つがニュージーランドです。

そのニュージーランドで政策の指揮を取り、国民から高い支持を集めたのが、ジャシンダ・アーダーン首相。

アーダーン首相は、現職の首相として初めて産休を取得したことでも注目をされています。

現職の首相として初めて産休を取得したニュージーランドの若きリーダー!

アーダーン首相は、就任から数カ月後に自身の妊娠を公表しています。

そして2018年6月21日に女児を出産し、6週間の産休を取得。

その間の代理はウィンストン・ピータース副首相が務めました。

なお、安全保障問題など重要な意思決定については引き続きアーダーン首相がたずさわっています。

在任中に出産を経験した首脳は、パキスタンのベナジル・ブット元首相に次ぎ、世界で2番目でしたが、ブット元首相は産休を取らなかったため、在任中に産休を取るのはアーダーン首相が世界初となりました。

アーダーン首相って、どんな人?

ここでアーダーン首相のこれまでの生い立ちや経歴などを簡単にご紹介します。

アーダーン首相は1980年7月26日生まれの41歳。

ニュージーランド北島北中央部ワイカト地方の中心となるハミルトン市に生まれました。

ハミルトン市はニュージーランドの都市の中で第4位の人口(約23万人)で、ニュージーランド最大の都市、オークランドからは車で約1時間半の場所にあります。

アーダーン首相は、叔母の勧めで18歳のときにニュージーランド労働党へ入党し、格差や貧困の問題を中心に学んでいったそうです。

大学卒業後は、当時史上2番目のニュージーランド女性首相、ヘレン・クラークの事務所で働き、次第に政治家の道を志します。

2008年、28歳で初当選を果たすと、女性や子供の権利を守る政策に力を入れました。

弱者救済や市民目線での活動に、多くの人たちが注目、支持者を増やしていきます。

そして37歳の若さでニュージーランド史上3番目となる女性首相に就任し、前述の通り、就任から数か月後には妊娠を公表、出産後に現職の首相として世界で初めて産休を取得し、大きな話題となったのです。

こうした革新的な取り組みを国のリーダーが率先して行うことで、他の議員も後に続きやすくなり、産休を取得するのも気兼ねなく行える可能性が高くなります。

実際にニュージーランドでは、アーダーン首相の産休取得後、女性議員の産休取得率が上がったそうです。

では、翻って日本の議員の産休取得は、現在どのような状況でしょうか。

想定されていなかった「議員の出産」

労働基準法第65条では、出産する会社員(労働者)について「産前6週間、産後8週間」の休業を定めています。

しかし「労働者」にあたらない議員は、その取得を想定されていませんでした。

転機となったのは2000年、当時参議院議員であった橋本聖子議員(現東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長、同理事)の出産です。

これに先立ち、出産による本会議欠席が認められるよう、参議院規則が改正され、議会の欠席届の理由に「出産」と明記できるようになりました。

同様に衆議院では2001年、地方議会でも2015年から規則改正がすすみ、今では約9割の市区町村議会で、出産を理由に議会を休めるようになっています。

2021年地方議員の産休育休の期間が明文化された

このように「欠席届」を議長に提出することで議会を欠席することが可能になりましたが、休業期間については規定しない例がほとんどでした。

そのため、どの程度休んでよいかわからなかったり、議会に参加するため、出産直後の負担がかかる時期に無理をしたりする議員もいました。

そして2021年、都道府県議長会と市議会議長会、町村議会議長会が、議会運営のひな型となる「標準会議規則」に「産前6週、産後8週」という、具体的な産休期間を明記。

地方議員の産休について規則に記載されました。

ようやく、地方議員が産休を取得する権利が保障されることになったのです。

しかし、国会議員については現在も衆参両院の「議院規則」に、具体的な産休期間についての明記がない状況です。

男性優位社会は議員の男女比にも表れていた

日本は「男性優位社会」といわれています。

各国の男女格差を数値化した「ジェンダーギャップ指数」によると、2021年、日本の男女不平等ランキングは156カ国中120位となっています。

男性優位社会の一面は、議員の男女比にも表れています。

女性議員の割合は、衆議院議員で約10%、参議院議員で約23%(2021年)、全国市区町村議会の平均は約17%(2020年)となっており、男性議員に対する女性議員の少なさが、安心して出産できる環境整備の遅れの原因になっていると指摘されています。

小泉進次郎環境相の育児休暇取得の影響は?

最近では子育てに積極的に参加する男性が増え、民間企業では育児休暇を取得する男性も増えてきましたが、男性議員の育児休暇取得は行われていませんでした。

そうした流れに一石を投じるように、2020年の1月15日、小泉進次郎環境相が、第1子の誕生にあわせて、出産から3カ月の間に「通算2週間」の育児休暇を取得することを表明し、実際に出産から約1ヶ月後までに合計12日間分の育児休暇を取得しました。

小泉進次郎環境相は、自身の育児休暇取得とあわせ、男性公務員の育休を原則1カ月以上にする政府目標もあげていくと宣言しています。

民間企業でも男性の育児休暇は取りにくい

小泉進次郎環境相の育児休暇取得の発言をきっかけに、民間企業における男性育児休暇取得率向上も期待されており、世間の男性の育児休暇取得に対する考えも変わっていくのではないかといわれています。

しかし、男性が育児休暇を取得できない最大の理由は「社内に休暇自体を取りやすい雰囲気がない」という、目に見えない空気によるものだとする調査結果もあり、こうした空気とどう向き合うのか、ということも課題の1つといえるでしょう。

育児休暇取得が容易になれば少子化の改善にも繋がる

2010年に1億2800万人でピークを迎えた日本の総人口は、現在まで減少の一途をたどっています。

このまま人口減少が続けば、2029年には1億2000万人を下回り、2053年には9000万人に割り込むと予想されています。

少子化が進行した理由の一つとして、育児休暇取得の難しさや、子供を育てていく環境が十分に整備されていないことが挙げられています。

まとめ

  • ニュージーランドでは若きリーダー、アーダーン首相の産休取得後、女性議員の産休取得率が上昇
  • 日本では2021年にようやく地方議員が産休を取得する権利が保障されたが、「議院規則」に、具体的な産休期間についての明記はない
  • 小泉進次郎環境相の育児休暇取得の発言をきっかけに、男性育児休暇取得率UPを目指す取り組みが動き始めている

今回は議員の産休育休について実例を交えて紹介しました。

少子高齢社会の日本だからこそより一層、だれもが産休・育休を取りやすい社会を目指していくべきではないでしょうか。

 

<参考>
世界初「首相が産休」のアーダーン首相が言いたいこと
出産日なのに「車椅子で来い」 地方議会やっと産休規定
「正直迷った」末に小泉進次郎氏が育休取得へ、“空気読まずに”取る理由
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