ガーシー議員に対して、現行憲法下で72年ぶりとなる除名処分が決定したことが注目を集めました。
除名処分により、ガーシー氏は議員の身分を失いました。
議員が除名されるケースはあまり多くなく、詳しく知らないという方もいると思います。
この記事では、議員の除名について、どのような議員が対象になり得るのか、また除名処分を下すにはどのような条件が必要なのかなどをわかりやすく解説します。
さらに、国会議員が除名された事例についても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
議員の除名とは
ここでは、議員の除名とはどのようなものかについて解説します。
議員に対する最も重い懲罰
衆議院・参議院、地方議会は、所属議員に対して懲罰を科せられます。
両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる
引用元:憲法第58条第2項
普通地方公共団体の議会は、この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる
引用元:地方自治法第134条
懲罰には、重い順に以下の4種類が規定されており、「除名」は最も重い処分にあたります。(国会法第122条、地方自治法第135条)
- 除名
- 一定期間の登院(出席)停止
- 公開議場における陳謝
- 公開議場における戒告
さらに、国会議員の除名の対象に関しては、衆議院規則、および参議院規則で以下のように規定されています。
議院の秩序をみだし又は議院の品位を傷つけ、その情状が特に重い者に対しては、議院は、これを除名することができる
引用元:衆議院規則第245条
議院を騒がし又は議院の体面を汚し、その情状が特に重い者に対しては、登院を停止し、又は除名することができる
引用元:参議院規則第245条
除名された議員はどうなる?
除名処分を宣告された議員は、議員の身分を失います。
ただし、除名された議員が再び当選した場合、議院や地方議会はそれを拒むことができません。(国会法第123条、地方自治法第136条)
つまり、除名により議員の身分を失ったとしても、再度選挙で当選すれば、議員になることができます。
除名宣告に必要な条件
議員の身分を失わせる除名を宣告するには、慎重な議論が必要になります。
そのため、憲法や地方自治法によって以下のような条件が定められています。
- 国会議員の除名:議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする(憲法第58条第2項)
- 地方議員の除名:当該普通地方公共団体の議会の議員の三分の二以上の者が出席し、その四分の三以上の者の同意がなければならない(地方自治法第135条第3項)
国会議員が除名された事例
現行憲法下において、国会議員が除名された事例は3件しかありません。
ここでは、それぞれの除名事例を解説します。
小川友三参院議員(1950年)
現行憲法下で初めての事例が、1950年の小川 友三(おがわ ともぞう)参院議員です。
小川氏は、予算案への反対討論をしたにもかかわらず、採決では賛成票を投じました。
この行為に対して、他議員らから国会の運営を乱すなどの批判が高まり、除名処分が下りました。
川上貫一衆院議員(1951年)
2件目の事例が、1951年の川上 貫一(かわかみ かんいち)衆院議員です。
川上氏は、GHQの占領政策に対する批判などが問題となり、懲罰として「公開議場における陳謝」の処分が下りました。
しかし、川上氏はこれを拒否したため、再度協議の上、除名処分が下りました。
ガーシー参院議員 (2023年)
3件目の事例が、2023年のガーシー(本名:東谷 義和(ひがしたに よしかず))参院議員です。
ガーシー氏は、当選を果たした2022年7月から一度も登院することなく、欠席を続けていたことが問題視されていました。
議長からの登院を促す「招状」や「公開議場における陳謝」の懲罰にも応じなかったことから、院内の秩序を乱すとして、国会議員に対して72年ぶりの除名処分が下りました。
また、除名に伴い「不逮捕特権」を失ったガーシー氏は、著名人に対する脅迫などの疑いで逮捕状が出されています。
【関連記事】不逮捕特権とは?なぜ国会議員に認められている?例外や事例も解説
まとめ
この記事では、議員の除名とは何か、また国会議員が除名された事例について解説しました。
- 除名は、議員に対する最も重い懲罰で、除名宣告を受けた議員はその身分を失う
- 国会議員の除名には、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする
- 地方議員の除名には、議員の三分の二以上の者が出席し、その四分の三以上の者の同意を必要とする
- 現行憲法下において、国会議員が除名された事例は3件ある
<参考>
読売新聞 | 政治家女子48党ガーシー氏が議員の身分失う…最も重い「除名」懲罰、参院本会議で可決
日本経済新聞 | ガーシー氏、15日「除名」決定へ 議員資格失う懲罰
日本経済新聞 | ガーシー議員欠席、72年ぶり「除名」検討 議場陳謝せず
毎日新聞 | 除名に伴い、ガーシー氏は憲法で保障された国会開会中の「不逮捕特権」を失う
e-GOV | 日本国憲法第58条第2項
e-GOV | 国会法第122条
e-GOV | 国会法第123条
衆議院 | 衆議院規則第245条
参議院 | 参議院規則第245条
国会会議録検索システム | 第7回国会 参議院 本会議 第40号
e-GOV | 地方自治法第134条
e-GOV | 地方自治法第135条
e-GOV | 地方自治法第136条
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