公職選挙法は、公職(国会議員、地方公共団体の議会の議員、首長)に関する定数と選挙方法について定めた日本の法律です。
公職選挙法は、昭和25年に、衆議院議員選挙法や参議院議員選挙法、地方自治法など各自選挙の基準が違ったものを統合させるために、新しい法として制定されました。
公職選挙法が制定された目的としては第一章の第1条に記載されています。
その目的とは、「その選挙が選挙人の自由に表明せる意志によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期すること」。
国民ができるだけ自由に、そして適切な投票を行えるように制定された公職選挙法ですが、この法律は昭和25年から現在まで、ほとんど毎年幾多と改正され、制定時からは大きくその内容形を変えてきました。
令和2年に改正された公職選挙法
令和2年6月12日に公職選挙法の一部を改正する法律(令和2年法律45号)が公布され、同年12月12日から施行されました。
その一部についてを解説します。
町村議会議員選挙法及び町村選挙における選挙公営の拡大
第141条第8項、第142条第11項、第143条第15項などが関与し、以下の項目が条例により選挙公営の対象になりました。
・選挙運動用自動車の使用(第141条第8項)
今まで都道府県の議会の議員、市の議会の議員はそれぞれの規定に従い自動車を利用していました。その権利が町村選挙にも拡大したことにより、選挙運動に自動車が無料で使用できるようになりました。
・選挙運動のビラの作成(第142条第11項)
町村選挙などでは制限されていたビラの作成が解禁されました。都道府県の議会議員や市の議会議員と同様に、公職の候補者の第1項第3号から第7号までのビラ作成が無料になります。
・選挙運動用のポスター作成(第143条15項)
町村選挙などで制限されていたポスターの作成が可能になりました。公職の候補者の第1項第4号の3の個人演説会告知ポスターと第5号のポスターを無料で作成することができます。
町村議会議員選挙における選挙運動用ビラ頒布解禁
第142条第1項第7号に関与しています。
町村の選挙においてビラの作成はできませんでしたが、ビラの頒布が解禁されました。選挙管理委員に届け出た2種類以内のビラであれば、1,600枚まで作成することが可能になります。
町村議会議員選挙における供託金制度の導入
第92条第1項及び第93条第1項に関与しています。
・町村の議会の議員選挙において15万円の供託金の導入
供託金が15万円まで、町村議会議員選挙においても支給される制度が導入されました。
・供託物の没収
供託金の制度が町村議会議員選挙にも導入されたことにより、供託物の没収点は市議会議員選挙と同様のものになりました。
公職選挙法の一部が改正されるまでの期間
上記の通り、令和2年に公職選挙法の一部が改正されましたが、この改正が公布・施行されるまでにどのくらいの時間がかかったのでしょうか。
まず「公職選挙法の一部を改正する法律案」として議会に提出されたのは令和2年の5月29日でした。
その後、令和2年6月2日にこの法案が衆議院に受理され、さらに参議院委員会や本会議可決を経て公布されたのは令和2年6月12日、施行が半年後の12月12日になりました。
このように、公職選挙法が改正され、実際に効力を持つまで約半年かかるということになります。また参議院や衆議院で可決しなかった場合は、法案の提出からやり直しをすることもあるので、更に時間がかかることもあります。
もちろん、この改正案の内容を考える時間も必要になるため、実際に改正されるまでにかかる期間が1年単位でかかることもあります。
公職選挙法が改正される理由
公職選挙法が改正される理由は、時代の趨勢とともに、選挙も臨機応変に対応するためです。
公職選挙法自体は昭和25年に制定されましたが、時代と共に選挙方法や選挙運動も変化しました。法律の内容も選挙の実態に合わせて変えていかなければなりません。
そのため、公職選挙法も制定された昭和25年から現代まで、毎年のように一部改正が行われているのです。
公職選挙法改正の歴史過去の公職選挙法
過去の公職選挙法の改正内容について紹介します。
特に近年では多くの公職選挙法が改正案が可決されました。
・国外での不在者投票制度の創設
平成18年に公布されました。特定国外派遣組織に所属する場合は、国外で活動していても国政選挙や地方選挙に投票することが可能になりました。
・インターネット選挙運動解禁
平成25年に公布されました。それまではインターネット上での選挙運動は禁止されていましたが、国民にがインターネットが普及し、オンラインで幅広く情報が集められるようになったことが関係しています。
改正された公職選挙法第178条第2号により、インターネット等を通し、選挙期日後に挨拶を行うことが解禁されました。
しかし解禁されたことがある一方、新たな禁止事項も設けられました。選挙運動を目的とした電子メールの送信先は限られており、違反した者は第243条により、2年以下の禁錮または50万円以下の罰金に処されます。
これには、電子メールによる匿名性の高い誹謗中傷や電子ウイルスによって有権者に過度な負担を与えないことを目的としています。
・選挙権年齢が18歳以下に引き下げ
平成28年に公布されました。これは若年層の投票率が下がっていることからできた公職選挙法の改正案です。若い人たちの意見を積極的に取り入れるためにも必要なものとして可決されました。
第9条や21条において選挙権年齢の選挙権が20歳から18歳に引き下げされ、若年層が選挙に行けるようになりました。
・参議院選挙区選出議員の選挙における政見放送について持ち込みビデオ方式導入
平成30年に公布されました。改正案が出されるまで参議院選挙区選挙においての政見放送は、候補者がスタジオに出向き録画する方式でした。
しかしその方式であると、手話通訳も字幕も付けられないことから改善の必要があるとされ、ビデオ方式が導入されました。第150条に記載されています。
公職選挙法に基づいた選挙活動をしよう
ここまで一部改正された公職選挙法について解説してきました。
新しい常識や価値観にあわせて変わっていく公職選挙法。今後も時代にそった内容に変化していくでしょう。臨機応変に変わっていくと考えられます。
法律の改正にともない、禁止事項が増えることもあります。改正された内容を丁寧に確認し、遵守することが大切です。
公職選挙法を守って、安心安全な選挙活動を行いましょう。
<参考参照>
総務省(閲覧日 2021年 9月9日)
参議院(閲覧日 2021年9月9日)
選挙ラボ(閲覧日 2021年9月9日)
ぎょうせいオンライン(閲覧日 2021年9月9日)
選挙のあゆみ(閲覧日 2021年9月9日)
公職選挙法(閲覧日 2021年9月9日)