マニフェストとは?意味や具体例、調べ方も解説

マニフェストとは?意味や具体例、調べ方も解説

選挙が近づくと、ニュースや新聞でよく見かける「マニフェスト」。政権公約とも呼ばれ、投票日前になると各政党や候補者が声高にアピールしているイメージがあるのではないでしょうか。

今回は、そもそもマニフェストとは何なのか、どうして注目されるようになったのかという疑問点に加え、過去の選挙での公約の具体例や、今後の選挙で注目されそうなポイントを解説します。

また、選挙の際に有権者がどのようにマニフェストを調べれば良いのかも掲載していますので、ぜひ参考にしてください。

この記事を監修した人
奥藤裕子
イメージ戦略の構築からトータルプロデュースする選挙コンサルタント。イメージコンサルタントとして培った知識と経験を活かし、数多くの広報ツール制作・政策立案に携わる。政治家の「自己プロデュース力を高めたい」というニーズに応えるべく、今日も現場で奮闘中。

マニフェストとは?意味や注目の経緯も

マニフェスト(manifesto)とは、元は「宣言・声明書」を意味する言葉です。政治の分野で使われる場合は、選挙の際に候補者が有権者に対して公約として示す文書のことを言います。

政権公約とも呼ばれ、政策の内容や数値目標、実施期間などが具体的に盛り込まれていることが特徴です。

イギリスでは19世紀から、選挙前になると労働党や保守党など各政党が政策や数値目標を載せたマニフェストを発行しており、日本でもそれを参考にして取り入れました。

日本でマニフェストが話題になったきっかけ

日本では元々、選挙運動で候補者をアピールするため、「公約」として自身の政治方針や目標を掲げることがよくありました。しかし、公約は抽象的で耳ざわりの良いスローガンにすぎない内容であることも多く、形骸化していると指摘されていました

そんな中、元衆議院議員で当時三重県知事だった北川正恭氏が「マニフェスト」を日本の政治・選挙の場に導入することを提言し、国政の場に広がるきっかけとなりました。

ここで提言されたマニフェストの定義とは、政権運営において政党が行おうとする政策の

・検証や評価ができるような具体的な数値目標や財源、達成時期

・実行体制や仕組み

・政策実現のロードマップ(目標達成までの行程表)

を明確に示したものです。

(参照:「政権公約(マニフェスト)に関する緊急提言〜新政治改革宣言・政党の立て直しと政治主導体制の確立〜(平成15年7月7日新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)」

公選法改正と「マニフェスト解散」

上記のような経緯を受け、選挙のルールを定めた法律である「公職選挙法」が2003年に改正され、補欠選挙を除く国政選挙の選挙期間中に政党がマニフェストを配布できるようになりました。

そして同年10月に小泉純一郎内閣が解散、同年11月に衆議院総選挙が行われました。この選挙で各党がマニフェストを本格的に導入して選挙活動を行ったため、「マニフェスト解散」と呼ばれます。

「マニフェスト」という言葉は、同年の「流行語大賞(『現代用語の基礎知識』選ユーキャン新語・流行語大賞)」で年間大賞を受賞するほど話題になりました。

このようにして、その後の選挙においても各政党がマニフェストを掲げることが一般的になり、日本で定着していきました。 

マニフェストのメリットとデメリット

 国政選挙にマニフェストが導入されたことで、どのような変化があったのでしょうか。マニフェストのメリットとデメリットについて見ていきます。

 メリット 有権者が政策を判断できる

 マニフェストを通じて、各政党が政権を担った際に行おうとしている政策内容を有権者が具体的に知ることができます。そして、選挙で投票する政党を決める際の重要な判断材料になります。

例えば、ある政党が「社会保障を充実させる」という政策方針を掲げていても、それだけでは「どうやって? 本当に実現できるの?」「予算は?」「一口に社会保障と言っても、いろいろな問題があるけど?」と、疑問を感じるのではないでしょうか。

そこで、具体的な内容を盛り込んだマニフェストがあることで、どのような財源を元にどれくらいの予算を割くのか、どのような課題をどのような順番で解決し改めていくのか、などの情報を知ることができます。

有権者はそれらを元に「こういう方法なら実現できそうだ」「説得力があるな」と判断し投票することができます。

メリット 事後検証ができ、政治方針がブレにくい

選挙後一定期間が過ぎたり、政権が任期を終えたりした時点で、マニフェストがあることで実績を事後検証することができます。 

「現政権が前回の選挙でマニフェストに掲げていた公約のうち、どれくらいを達成できたか」は、次の選挙に影響を与えます。

 インパクトがあり聞こえの良いマニフェストをたくさんアピールしていたけれど、何年経ってもほとんど実現していない、となると、有権者の信用を失いかねません。

 政治家も、後から「公約違反だ」と批判されないように、マニフェストで掲げた政策をできる限り実現しようとするでしょう。そのため、選挙後の政権の政治方針がブレることも少なくなります。

デメリット 実際には達成されていないことも多い 

これらのメリットがあるマニフェストですが、実際は必ずしも全てが達成されているわけではありません。その点では、マニフェストは無意味だという批判もあります。

例えば、2009年8月の衆院選で民主党は、高速道路の無償化や最低保障年金の創設など166のマニフェストを掲げ、自民党の2倍以上の議席を獲得して政権交代を遂げました。

しかし2012年10月、民主党は、マニフェストのうち達成したのは約3割で、実現の目処が立っていない項目もあると検証し発表しました。

 (参照:朝日新聞デジタル2012年10月30日5時30分「民主『マニフェストは3割』未達成は断念も検討」 

そしてこの発表の直後である同年11月に民主党の野田佳彦内閣は解散し、同年12月の衆院選では自民党に大敗。再び政権交代し自民党の安倍晋三内閣になりました。

マニフェストは「国民との約束」とも称されますが、法的な拘束力や強制力があるものではありません。このように、提示した政策目標が実際にはほとんど達成されていないとなると、マニフェストが形骸化していると言うこともできます。

実際のマニフェストはどのようなもの?

マニフェストが定着した経緯や、メリットとデメリットを知った上で、実際のマニフェストとはどのようなものか気になる方もいるのではないでしょうか。

マニフェストで取り上げられやすいテーマや、具体的な内容について調べてみました。

マニフェストの対象になりやすいテーマ

政党がマニフェストを掲げるとき、どのようなテーマが選ばれるのでしょうか。

「今回の選挙で政権を担ったら、どのような政治をしていくか」がマニフェストの前提であるので、直近の社会情勢や国民の関心を反映したものになりやすいと言えます。

ここ数年でマニフェストのテーマとして多く取り上げられるのは、「年金・社会保障」や「消費税・経済対策」「教育・子育て」です。

例えば「年金・社会保障」の問題であれば、年金の支給開始年齢、医療や介護の自己負担額などの問題があります。

「消費税・経済政策」では、消費増税(消費税率引上げ)の是非や、雇用政策、現在の最低賃金が適切かどうか、などテーマの中でも課題は多岐にわたります。各政党がどのような課題を特に問題視しているのか、どのような立場なのか(改正に賛成か反対か、など)がマニフェストで示されることで、有権者にとって判断材料になります。

他にも、「外交・安全保障」「憲法改正」も注目されるテーマです。

そして2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大を受け、今後の選挙では感染症対策や、コロナ禍での経済、生活保障、医療体制に関する対策も着目されるテーマになると考えられます。

2019年参院選でのマニフェスト

直近の国政選挙だった2019年の参議院選挙では、どのようなマニフェストがあったのでしょうか。参院選の選挙公約として掲げられた具体的な内容を、いくつかの政党ごとに見てみましょう。

まず、政権与党である自民党は、「日本の未来を切り拓く」というスローガンを掲げ、外交政策や経済政策を打ち出しました。外交政策では北朝鮮の核問題や、ロシアとの領土問題の対策、解決を目指すこと、経済政策ではアベノミクスの実績を強調しました。

社会保障の分野では、年金制度の充実や幼児教育無償化を実現させると示しました。そして、日本国憲法における自衛隊の明記など、憲法改正を早期実現する、という立場を取っています。

立憲民主党は、消費増税への反対、最低賃金の引き上げ、脱原発などをアピールしました。また、選択的夫婦別姓の導入や同性婚を可能にする法改正といった、多様性をテーマした政策に重きを置いていることが特徴的です。

憲法改正への反対など、自民党の政策と対照的な立場を明確に示している項目もあります。

公明党は、消費増税には賛成しつつ、国会議員の給料(歳費)を削減して国民の理解を得ることや、防災・復興政策に力を入れると宣言しました。憲法改正については、自民党と全く同じ立場を取るわけではないとしています。

日本共産党は、消費増税への反対、最低賃金の引き上げ、国民健康保険料の引き下げをアピール。社会保障を充実させる財源は消費増税ではなく、大企業や富裕層の負担を増やして確保するとしています。

(参照:NHK選挙WEB「各党の公約(党派別)参院選2019」

このように、それぞれの党がテーマごとの立場を示しているマニフェスト。どのテーマを重視しているかもさまざまです。

マニフェストをどうやって知る?選挙での調べ方

「マニフェストは投票の重要な判断材料」とは言うけれど、いざ選挙の前になったら、どのようにして知ることができるのでしょうか。

政党のHPやパンフレットで知る

各政党は、公式サイトに政策方針やマニフェストを詳細に載せています。マニフェストという名称を使っているとは限りませんが、「政策パンフレット」や「基本政策」などのページから政党の情報を深く知ることができます。冊子をPDFにしてアップロードされているものもあります。

政党の公式サイトでは、選挙の公示後に立候補者のプロフィールも掲載されるので、同時に調べることができるのもメリットです。

また、政党候補者の事務所や地方ごとの支部事務所でも、パンフレットにまとめたものをもらえることが多いです。

新聞やニュースなどメディア報道で知る

選挙が近づくと、新聞やニュースの報道で各党のマニフェストを取り上げます。日々のニュースで「自民党が次期衆院選に向けて公約を発表した」などと知ることもできますが、各党の方針が出揃うと、新聞やテレビ番組でまとめて比較した情報が報道されます。

「政見放送」や「党首討論」も参考になります。

また、報道機関の公式サイトで選挙特設ページが作られると、情報をまとめたものをインターネット上で読むこともできます。

いずれも報道機関が内容を整理しているので、政策ごとに各政党の立場を比較したい場合などに役立ちます。

「ボートマッチ」を利用してみても

上記のようにマニフェストを調べてみても、政党もテーマもたくさんある中で、自分の考えや立場に最も近いのはどれか、混乱してしまうこともあるでしょう。

自分の生活に直結するテーマや重視する考え方は、十人十色です。

そんなときは、投票の参考として「ボートマッチ」を使ってみるのも良いかもしれません。

ボートマッチとは、選挙での争点や各党の立場を取り込んだアンケート式の診断サービスです。報道機関や研究機関などさまざまな団体が制作しています。

政治争点に関する質問に対して賛成、反対などの選択式で回答していくことで、自分の考えに近い政党が簡単にわかるようになっています。「ボートマッチ」と検索すると、手軽に取り組むことができます。

マニフェストを活用して有意義な投票を

マニフェストには、実際に実現されるとは限らないというデメリットもありますが、有権者にとって支持政党を決めるための重要な判断材料であることは変わりません。

選挙前には、ぜひ各政党のマニフェストをチェックしてみましょう。政党や候補者のイメージだけではなく、具体的な政治方針を参考にして、有意義な投票ができると良いですね。

 

<参考文献・サイト>

三省堂WORD-WISE WEB ことばのコラム「10分でわかるカタカナ語第4回マニフェスト」

北川正恭オフィシャルウェブサイト

政権公約(マニフェスト)に関する緊急提言〜新政治改革宣言・政党の立て直しと政治主導体制の確立〜(平成15年7月7日新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調) 

ユーキャン新語・流行語大賞(第20回2003年受賞語) 

早稲田大学マニフェスト研究所 マニフェストQ&A

NHK選挙WEB「選挙の歴史」

NHK選挙WEB「各党の公約(党派別)参院選2019」

自民党HP「重点政策」「令和元年政策パンフレット」

立憲民主党HP「立憲民主党基本政策」

公明党HP「マニフェスト 政策・実績」

日本共産党HP「日本共産党の政策」

公益財団法人明るい選挙推進協会「池上彰のマンガでわかる選挙と政治の話2021」(PDF)

毎日新聞ボートマッチ「えらぼーと」

NPO法人mielka「JAPAN CHOICE」

立命館大学・早稲田大学・チューリッヒ大学「Focus Japan」

『2021新政治・経済資料 三訂版』実教出版編修部、2021

『政治・経済用語集 第2版』山川出版社、2019

 

 

この記事を書いた人
rainy

大学の政治学科を卒業後、報道機関で記者をしていました。主に社会部で裁判、司法を担当。選挙取材も経験しました。退職後の現在はフリーランスライターとして働く1児の母です。
「社会の仕組みや動きを知ること・理解することで、新しい世界が広がる」、読者にとってそんな記事を書けるよう、日々精進していきます。

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