ニュースや報道で「内閣支持率が上がった・下がった」と耳にする機会がありますが、実際のところ「内閣支持率はどういうものか」「測り方はどうなっているのか」よくわからないという方もいるでしょう。
内閣支持率はそもそも何のために・誰のために測るのか、信頼できるものなのかも、確認しておきたいところです。
この記事では、政治関連のニュースに興味があり「内閣支持率のことをもっとよく知りたい」という方のために、内閣支持率を調べる目的や実際の測り方、内閣支持率が下がるとどうなるかなどを、わかりやすく解説します。
内閣支持率とは
内閣支持率は、政権を担っている現在の内閣が、国民からどのくらい支持を受けているかを示す指標です。新聞やテレビなどのマスコミが、それぞれの方法で定期的に世論調査を行って公表しています。
内閣支持率が高ければ、時の政権は思いどおりに政策を実行しやすくなります。逆に支持率が低いことは、政策への批判・政権への不信感が高まっている証左です。つまり、内閣支持率は、重要政策の決定に関する内閣の判断や、衆議院の解散・総選挙をいつ行うかといった、政権戦略に大きな影響を与えます。
内閣支持率30%が危機水域の目安です。この水準を下回ると首相の求心力が著しく低下し、政権運営が行き詰まる可能性もあります。
内閣支持率は誰のために・何のために調べるの?
内閣支持率を調べて公表する意味には、大きく次の2つがあります。
- 主権者である国民に対して、国民全体がどのような考えを持っているかその動向を伝えること
- 政権を担う内閣をはじめ政治家が、世論調査の結果を踏まえて、国民の意見をきちんと受け止めた政策・政治を期待すること
つまり、内閣支持率の調査公表には、国民の政治に関する意識をより高める効果があります。また、内閣や政治家全体に国民の意識に沿った政治を目指すよう仕向ける、民主主義の1つのツールと言ってもよいでしょう。
内閣支持率はどのように決まる-内閣支持率の測り方
内閣支持率は、世論調査によって測ります。ここでは、世論調査の方法と、内閣支持率を測る際の一般的なやり方を紹介します。
世論調査の方法は主に3つある
世論調査の方法は、面接方式・電話方式・郵送方式の3つが一般的によく使われています。
いずれの方法も、住民基本台帳などから調査対象を選び、アンケート調査を行うもので悉皆調査ではありません。それぞれ、次のような特徴があります。
- 面接方式:調査員が調査対象者本人に面会して直接話を聞きます。手間と費用がかかります。
- 電話方式:調査員が調査対象者本人に電話して話を聞きます。質問項目は少なめになりますが、迅速にリアルタイムな調査ができる点がメリットですが。
- 郵送方式:調査対象者にアンケート用紙を送付して回答を返送してもらいます。詳細な調査も可能ですが、時間がかかるため、緊急調査には不向きです。
内閣支持率の測り方は電話調査がメイン
内閣支持率は、その時々のリアルタイムの動向に関心があり、意味があるものです。そのため、内閣支持率の測り方は、簡単に迅速に調べられる電話調査がメインになっています。
電話で「あなたは現○○内閣を支持しますか、しませんか?」など、数項目を簡単に尋ね、回答の比率を集計します。
内閣支持率は信頼できるの?
内閣支持率は、測り方を操作されたり、データを改ざんされたりすることはないのでしょうか。
内閣支持率の調査対象者の選び方と、世論調査サイトによる違いの有無について、説明します。
世論調査の対象の選び方はランダム
内閣支持率は電話調査が基本ですが、調査対象の選び方は、無作為にランダムに選びます。かっては電話帳から無作為抽出していましたが、電話帳に電話番号を載せない世帯も多い傾向にあります。
そこで、現在では一般的に「RDD(Random Digit Dialing 乱数電話番号)方式」が採用されています。コンピューターで文字通り、ランダムに数字を組み合わせた番号に電話する方法です。
また、電話も固定電話だけでなく、携帯電話を併用するケースも多くなっています。最近は若者を中心にスマホ・携帯しか使わない人も増えているためです。
どの世論調査サイトでも、回答者の偏りが出ないように、サンプル数を決め(統計学的に有意な2000程度)、性別・年齢・地域などが有権者の縮図になるように重み付けしています。
報道機関によって内閣支持率に違いはある
最新各社の内閣支持率なのに、報道機関によって違いがあるのはおかしい、と思われることもあるでしょう。
確かに、報道機関によって内閣支持率に違いが見られることはありますが、理由としては、次のようなことが考えられます。
- 質問の仕方が違う(選択肢の文言や数、「重ね聞き」の有無が影響)
- 統計学的な誤差、調査日時の違い
また、世論調査サイトによっては、数値が毎回高め(低め)に出ることもあります。ただ、支持率の動きの方向は、各社ともおおむね一致していることが多いと言えます。
1社の調査だけでは日本全体の傾向と異なる可能性もないとは言えませんが、複数調査で同じ傾向があれば、全体が同じような変化と推測できるでしょう。
ですから、内閣支持率を見るときは、次のようなことに留意しましょう。
- 数値の高低だけでなく、毎回の変化はどうなっているかを見る
- 多くのニュースに触れ調査結果を納得できるか自分で確認してみる
<参考>2000年以降の各内閣支持率の動向例
参考までに、2000年以降の各内閣支持率の動向例を以下にまとめておきます。
2000年以降の内閣支持率の動向例(NHK政治意識月例調査による)
森 内閣:39%(2000年4月)→7%(2001年4月)
小泉内閣:81%(2001年5月)→51%(2006年9月)
安倍内閣:65%(2013年1月)→34%(2007年9月)
福田内閣:58%(2007年10月)→20%(2008年9月)
麻生内閣:48%(2008年9月)→15%(2009年9月)
鳩山内閣:72%(2009年9月)→21%(2010年5月)
菅 内閣:60%(2010年6月)→18%(2011年8月)
野田内閣:60%(2011年9月)→20%(2012年12月)
安倍内閣:64%(2013年1月)→34%(2020年8月)
菅 内閣:62%(2020年9月)→30%(2021年9月)
岸田内閣:49%(2021年10月)→
ご覧のとおり、一般に発足直後の内閣支持率は高く、政権末期に急落する傾向があります。そのほかの特徴点は次のとおりです。
- 2000年以降の、発足時最高は小泉内閣81%、最低は森内閣39%
- 政権末期は3割を切る傾向
岸田内閣の発足時の支持率は麻生内閣とほぼ同率で低い方
まとめ
今回は、内閣支持率を調べる目的や、実際の測り方などを解説しました。
内閣支持率の数値だけでなく、動きを見ることにより現在の政治の課題、政治に求められていることが浮かび上がってきます。
この記事を参考にされて政治関連のニュースへの関心をより深めていただければ幸いです。
<参考>
内閣支持率
内閣支持率(ないかくしじりつ)とは? 意味や使い方 – コトバンク
世論調査ってどうやってるの? 若者の声は反映されてる? 朝日新聞に聞いてみた
池上さん、内閣支持率はどうやって決まるの? | 文春オンライン
内閣支持率を調べている”世論調査”ってそもそも信頼できる?世論調査を一歩先から読むには調査方法を知ろう
調査の方法 | 日経リサーチ
NHK世論調査 内閣支持率 | NHK選挙WEB
菅内閣の支持率、歴代3位の74%…読売世論調査「他によい人がいない」30
菅首相追い込んだ内閣支持率の呪縛 世論調査の舞台裏を探る【政界Web】:時事ドットコム
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