日本に女性議員が少ない理由は?世界との比較と候補者均等法を解説

日本に女性議員が少ない理由は?世界との比較と候補者均等法を解説

日本では、女性政治家の割合が低いと言われ続けていますが、具体的に女性議員の割合はどのぐらいなのでしょうか。また、割合が低い理由や対策、諸外国の取り組みについても解説します。

日本の女性政治家の割合は?

現在の日本では、女性政治家の人数はどうなっているのでしょうか。

女性国会議員

2021年11月時点では、衆議院の465人中45人が女性議員で、その割合は約9.7%です。

一方、参議院の女性議員は242人中56人で、割合は約23%です。

女性閣僚

第2次岸田内閣では、閣僚の20人中3人が女性です。女性閣僚の人数が最も多かったのは2001年の第1次小泉内閣で、2014年の第2次安倍改造内閣の5人でした。

地方議会では?

2021年7月時点で、都道府県議会の女性議員の割合は平均11.6%です。しかし、最も割合の高い東京都議会では32.3%、最も低い山梨県議会では2.8%と、大きな開きがあります。

東京・京都・神奈川・広島など都市部に女性議員が多い傾向です。

また、市区町村議会では、女性議員がいない議会も17.1%存在します。

東京23区や政令指定都市の方が女性議員の割合が高く、町村議会では女性議員がゼロの議会も少なくありません。

日本の女性政治家が少ない理由

女性が立候補を断念した理由には、地元で生活する上でプライバシーが確保されないことや、通称(旧姓を含む)の使用ができず、手続きが煩雑であることも問題として挙げられています。また、家事や育児との両立が難しいことも、2021年に内閣府が行った調査からわかる理由です。

選挙活動を手伝ってもらうことへの周囲の意識

男性が立候補した場合、妻が選挙活動を手伝うことが一般的です。反対に、女性が立候補した場合、夫が仕事に都合をつけてまで選挙活動を手伝うことは難しいと言われています。また、女性は育児や家事をしなければいけない、といったステレオタイプな意識が残っていることも、忙しい選挙活動を行う上で周囲からの助けを簡単に得られない障壁になっています。

選挙活動にかかる費用と男女の所得格差

まず、選挙への立候補には供託金を法務局に預ける必要があります。

供託金とは、当選を争う意思のない人が売名目的で立候補することを防ぐために定められている制度です。

衆議院小選挙区なら300万円、都道府県議会では60万円、町村議会であれば15万円と、供託金の額は選挙ごとに異なります。

得票数が「有効投票総数÷その選挙区の議員定数×1/10」に満たなかった場合や、途中で立候補を辞退した場合の供託金は返却されず、全額没収される仕組みです。

日本社会には男女で賃金格差や所得格差があり、供託金をはじめとした、選挙にかかる費用も、女性が立候補することの壁になっています。

低い女性の当選率

2021年衆議院選挙では、女性の立候補者186人のうち45人が当選し、当選率が約24%でした。それに対し、男性は立候補者数865人で当選420人、当選率は約49%でした。

男女で当選率の開きがあるのは、当選しやすい現職に女性がそもそも少ないことも理由として挙げられるでしょう。また「政治は男性のもの」といった古い価値観がなく、一般的にジェンダー平等が浸透しているとされる若い世代の投票率が低いことも挙げられます。

ただし、若い世代も、女性だから多様性が増すという理由だけで、女性候補者に票を入れる訳ではないという調査結果もあります。

ハラスメントを受けやすい

2020年に行われた内閣府の調査では、女性の地方議員約6割が何らかのハラスメントを受けたことがあると回答しました。

倫理規定や相談窓口も設けられてはいますが、まだ十分ではないとされています。

旧姓での立候補には届け出が必要

選挙に立候補する際に旧姓などを使いたい場合「通称認定申請書」を、名称を使用していた実績があることを示す資料等とともに提出・審査が必要ですが。

知名度を上げてきた候補者が、結婚により姓が変わることで選挙活動に支障がでることを防ぐための対策です。

男性中心の政党政治

日本の政治は政党を中心に動いています。政党内には男性中心の権力構造が出来上がっており、女性候補者が擁立されにくいという見方もあります。

女性政治家を増やすための国の取り組み

女性議員の割合が低すぎると、政治に多様な民意の反映が出来ません。そこで、ここでは現状の改善のため、どのような取り組みが行われているかを解説します。

政府の目標「2025年までに女性候補者の比率を35%に」

政府は、第5次男女共同参画基本計画で、2025年までに衆議院・参議院選挙で女性候補者の比率を35%まで引き上げる目標を掲げています。

しかし、2021年衆議院選挙では立候補者の女性割合は約17.7%で、35%にはほど遠い結果になりました。

候補者男女均等法

候補者男女均等法は、正式名称「政治分野における男女共同参画推進法」です。多様な民意を反映するため、女性議員を増やす目的で2018年に施行されました。

国会や地方議会の選挙で、候補者の数をなるべく男女の候補者数をなるべく均等にするよう政党へ促す法律です。この法律では、男女の候補者数を均等にすることはあくまで努力義務であり、罰則などはありません。

候補者男女均等法の効果

候補者男女均等法が施行されてから初の国政選挙だった2019年参議院選挙では、女性候補者の割合が28.1%と過去最高になりました。

前回の2016年参議院選挙から、野党各党は女性候補者の割合を増やし、立憲民主党や共産党は候補者の男女比率をほぼ均等にしました。しかし、自民党は女性候補者の割合は14.6%、公明党は8.3%と、与党は低い割合のままでした。

現職が多い与党は、新しく女性候補を擁立する余地がなかったことも背景にあります。

改正候補者男女均等法

候補者男女均等法は2021年6月に改正されました。

この改正では、女性の政治参加への妨げとなっているセクハラやマタハラを防止する対策を、政党や国、自治体に求めることも加えられました。

しかし、改正後初の国政選挙であった2021年衆議院選挙では候補者の女性割合は17.7%と、前回の2017年衆議院選挙とほとんど変化はありませんでした。

海外の女性議員の割合は?

世界と比べ、日本の女性が政治に参画している度合いはどの程度なのでしょうか。また、女性議員を増やすクオータ制という取り組みや、クオータ制導入国について解説します。

日本の政治分野のジェンダーギャップ指数は世界147位

ジェンダーギャップ指数とは、世界経済フォーラムが2006年から発表している男女格差の指標のことで、国ごとに経済・教育・健康・政治の4分野に分けて発表されています。

男性の数を「1」としたときに女性の数はどのくらいなのか、で表されています。

2021年段階で、日本の政治分野における指数は0.061%で、156ヶ国中147位と極めて低い数字でした。

これは、国会議員や大臣の女性の割合が低いこと、一度も女性の首相が誕生していないことなどが原因です。

クオータ制とは?‐女性政治家の多い国の取り組み‐

クオータ制とは、意思決定の場である議会において、男女比が偏り過ぎないようにする方法です。クオータ制は以下の3種類があります。

①憲法や法律で議席の一定数を女性に割り当てる

②憲法や法律で候補者の一定割合を女性にする

③党則などにより政党内で候補者の一定割合を女性にする

①②は法的に強制力がありますが、③は政党による自発的な取り組みです。

クオータ制は単に候補者数や議席の割合を定めるだけでなく、国によって様々な方法があります。

クオータ制発祥の国 ノルウェー

クオータ制は1988年に世界で初めて、ノルウェーで導入されました。

男女平等法で「公的な決定の場で一方の性が40%以下であってはならない」と定められました。2000年代には上場企業の取締役にも導入され、経済界にも広がっています。

ジェンダーギャップ指数「政治分野」1位 アイスランド

アイスランドは2010年にクオータ制を導入し、企業役員や公共の委員会で男女ともに40%未満になってはならないと定めました。その結果、現在では閣僚11名中5名が女性です。

フランス「パリテ法」20年で女性議員の割合は4倍に

フランスでは、2000年にパリテ法が制定されました。

1997年にはフランスの国民議会における女性議員の割合は10.9%とヨーロッパの中でも低い数値で、現在の日本の状況と似ていました。

パリテ法によって、政党に男女50%ずつ候補者を擁立するよう義務付けられています。

下院選では、男女で候補者の割合に開きがでるほど、政党助成金が減額されるという罰金制度をとっています。

パリテ法はこれまでに2度改正されており、現在は2000年の制定時と比較して罰金が3倍になりました。

このように、フランスではパリテ法を強化することで、女性議員を増やしていきました。

ちなみにパリテとは「同数」という意味です。

フランスの県議会では男女ペアで立候補

フランス県議会選挙では、パリテ法による下院選での政党助成金減額制度のような措置が適用さず、国民議会では女性議員が増加しました。その一方で、県議会では女性議員はなかなか増えませんでした。

そこで、世界で初めて、2015年に候補者は男女ペアで立候補、有権者もペアに対して投票し、ペアごとに当選または落選が決まるという選挙制度が導入されたのです。

これまで議席を持っていた男性議員が議席を失うことになるため、抵抗もありましたが、有権者の意識の変化もあり、実現しました。

年配議員の中には、これを機に引退した人たちもいました。

オーストラリアは政党でクオータ制導入

オーストラリアでは、1994年に労働党が女性候補者の割合を35%にするクオータ制を取り入れました。自発的に党内で2002年に40%、2015年に50%に段階的に引き上げており、2025年までに全体の女性候補者の比率を50%にすることを目指しています。

クオータ制の問題点

クオータ制はポジティブ・アクションやアファーマティブ・アクションといわれる対策の一種です。

ポジティブ・アクション、アファーマティブ・アクションとは現状、社会的・構造的な差別で不利益を被っている人々に対して、機会の平等を実現するための手段としてとられる特別な措置のことです。

しかし、クオータ制は、男性側の正当な機会を奪う、逆差別であるという意見もあります。

パリテ法を制定したフランスでも、最初にクオータ制を導入しようと試みたときは、立候補者に性別による規定を加えることは憲法に反するとして、違憲判決がでました。

その後、憲法を改正したことでパリテ法が成立しました。

日本でクオータ制の導入が進まない理由

日本では、「日本版パリテ法」ともいわれる候補者男女均等法が2018年に施行されましたが、罰金など強制力はなく、効果は強くありません

2021年の候補者男女均等法改正にあたっては、野田聖子議員など超党派の議員連盟がクオータ制の実現をめざしましたが、与党の反対によって断念しました。

現職の男性議員が多く、選挙での候補者擁立で女性を増やしにくい与党などを中心に、慎重論が強い傾向にあります。

まとめ

  • 日本の女性議員の割合は衆議院で約9.7%、参議院で約23%、地方議会では差がある
  • 女性政治家が少ないことには、周囲の意識や、家事と子育てを手伝ってもらえにくいこと、所得格差、ハラスメント、低い当選率など多くの理由がある
  • 候補者男女均等補が施行されたが、強制力がなく、効果は薄い
  • 海外と比べて日本の女性政治参画は極めて遅れている
  • 男女の議席や候補者比率を定めるクオータ制導入国では女性の政治参画が進んだ

これまで解説してきたように、日本の女性の政治参画は世界に比べて遅れ、なかなか進んでいないのが現状です。

 

<参考文献>

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衆院、女性比率10%割れ : 形骸化する共同参画法、かすむ “ジェンダー平等” | nippon.com

岸田内閣、女性の閣僚は3人。これまでの内閣は…? 写真で振り返った(BuzzFeed Japan) – Yahoo!ニュース

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第2節 地方の政治・行政・経済分野における女性の活躍 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)

国・地方公共団体における「見える化」 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)

全国女性の参画マップ(地方議会編) 2021年7月作成 内閣府 

なぜ日本の女性議員率は世界最低レベルか | PRESIDENT WOMAN Online(プレジデント ウーマン オンライン) | “女性リーダーをつくる”

総務省|立候補 (soumu.go.jp)

関連資料 | 政治分野における男女共同参画 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)

女性は議員になりたくても…半数近く「家事・育児と両立困難」で断念 内閣府調査:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

女性が増えちゃダメですか~2021衆議院選挙から~ | NHK政治マガジン

女性の政治参画の課題 女性地方議員の60%「知名度がない」 | NHK政治マガジン

衆議院選挙速報2021 開票速報・選挙結果 -衆院選- NHK

男女共同参画白書(概要版) 平成30年版 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)

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女性政治家へのハラスメント防げ…改正男女参画法施行 国や自治体に対策求める : ライフ : ニュース : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

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偉人の名前で立候補は可能? | 選挙を知ろう | NHK選挙WEB

なぜ日本は女性活躍が遅れているのか? 「長く過小評価」「男性中心の権力構造」2人の活躍女性に聞く:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

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参院選 女性候補者5割届かず 「男女均等」及第は共産・立民(1/2ページ) – 産経ニュース (sankei.com)

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女性議員増へ、「候補者男女均等法」が成立 | NEWS WATCHER | 朝日中高生新聞 | 朝日学生新聞社 ジュニア朝日 (asagaku.com)

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フランスの事例

【世界選挙紀行】フランス①世界初!男女ペアで立候補!驚きの背景 | 選挙を知ろう | NHK選挙WEB

諸外国における政治分野の男女共同参画のための取組 内閣府男女共同参画局

諸外国ではクオータ制が当たり前!男女共同参画局の資料で知った事実 – とおにしまなみ(トオニシマナミ) | 選挙ドットコム (go2senkyo.com)

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ポジティブ・アクション | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)

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「女性議員増へ、クオータ制の導入を」 超党派勉強会が発足:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

「女性議員 どうしたら増えるの?」(くらし☆解説) | くらし☆解説 | 解説アーカイブス | NHK 解説委員室

「共同参画」2021年5月号 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)

 

 

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