2月20日に投開票が行われた長崎県知事選挙では、新人で医師の大石賢吾氏が当選しました。現職では全国最年少の知事となります。
39歳の大石氏は「世代交代」を掲げ、長く知事を務めた現職の中村法道氏を僅差で破るという結果になりました。選挙の争点や大石氏の勝因はどこにあったのでしょうか。
大石氏の経歴や活動も含めて、知事選を詳しく見ていきます。
長崎県知事選の争点や結果は?
長崎県知事選は中村法道知事(71)の任期満了に伴い、2022年2月3日に告示されました。
中村氏の他、新人の医師大石賢吾氏(39)、新人の会社社長宮沢由彦(54)が立候補していました。(年齢は投開票のあった2022年2月20日時点です。)
争点は県政の評価やコロナ対策
今回の選挙の主な争点は、12年にわたって知事を務めた中村氏が継続するべきか否か、これまでの県政に対する評価でした。
中でも注目されていたのは、県の人口減少問題への取り組みや新型コロナウイルス対策についです。
中村氏は現職知事として、県民所得の向上や県内移住者増加などこれまでの実績をアピールしました。
一方コロナ対策については、「まん延防止等重点措置」で飲食店に対し一律にアルコール提供自粛を求めるなど全国的にも厳しい対策を行っており、県民からは不満の声も上がっています。
対する大石氏は、医師としての経験を生かしたコロナ対策を講じることや、「新しい長崎県」「世代交代」を掲げました。
中村法道知事が僅差で落選
2月20日に行われた投開票の結果、大石氏が初当選し、現職知事の中村氏が敗れました。大石氏と中村氏の得票数の差はわずか541票でした。
全国最年少知事が誕生し、まさに「世代交代」となりました。
投票率は47.83%で、前回知事選の36.03%を大きく上回り、県民の関心が高かったことが分かります。
大石賢吾氏の経歴や活動
新知事となる大石氏は、どのような人物なのでしょうか。
長崎県出身の医師で行政官の経験も
大石氏は長崎県五島市生まれで、県立高校を出たのち、カリフォルニア大学と千葉大学医学部を卒業しました。
その後医師になり、大学病院での勤務などを経て、2020年からは厚生労働省で「医系技官」としてコロナ対策に関する部署にも勤務していました。
医系技官とは、医師や歯科医師が専門知識を生かして、医療などに関わる政策の立案や実施に携わる行政官です。
大石氏は知事選に立候補した理由として、
特に厚生労働省では、医療に限らず、幅広い関係省庁や地方行政と連携して進める案件を多く担当する機会を得たところです。
一方、地方行政の状況を目の当たりにすることで、元来抱いていた「生まれ育った愛する古里長崎のために、力を尽くしたい」という思いが確固たるものとなり、今回の決意に至りました。
と、厚労省での経験に触れて述べています。
プライベートでは男女3人の子どもの父親で、ラグビーやキャンプが趣味だそうです。
高校時代には全国高校ラグビー大会にも出場したことのあるラガーマンです。
政策やアピールポイントは?
大石氏は前述のように、医師や医系技官としての経歴を生かしたコロナ対策の強化を特にアピールしてきました。
具体的には、「医療専門家として県民に寄り添った情報発信の強化」や「新型コロナウイルス感染症後遺症の専門外来の設立」などを挙げています。
他には、県民との対話を重視するための「県民車座集会」の実施や、積極的な人口減少対策なども政策に掲げています。
勝因はSNSや保守分裂?
今回の知事選では、県民にとって知名度が高く優勢だった現職知事に対し、ほぼ無名だった大石氏が勝利したことが注目されました。
大石氏の勝因には、SNSでの活動の効果や政治的な背景がうかがえます。
YouTubeチャンネルで知名度向上
大石氏は選挙に向けて、SNSを利用した知名度の向上を図りました。
知事選出馬を表明した2021年12月に開設されたYouTubeチャンネルでは、政策のアピールや、街頭演説など選挙活動の様子もアップロードされています。
県民とのコミュニケーション番組「大石けんごTV!」を企画しライブ配信も行われました。
YouTubeの他にもTwitterやInstagramなどSNSで積極的な発信を行い、これまで選挙に関心が低かった人からも注目される機会になりました。
政治的背景や投票率の影響も?
背景には、大石氏の支援をめぐる政治的な動きもありました。
これまでの知事選では中村氏を支援してきた自民党長崎県連が、今回は大石氏を推薦しました。しかし一部の自民党県議や国会議員がこのことに反対し、中村氏の支援に回りました。
県内では自民党が分裂する形となり、注目を集めました。
結果的に長崎市など都市部を中心に投票率が上昇し、SNSを通した知名度向上も相まって無党派層を取り込んだことが、大石氏の勝利に繋がったと考えられています。
まとめ
・長崎県知事選では新人の大石賢吾氏が当選し、長く知事を務めた現職の中村氏が敗れた。全国最年少知事が誕生した。
・選挙の主な争点は中村県政の評価とコロナ対策。
・大石氏は医師で厚労省医系技官の経験も。
・YouTubeなどSNSによる知名度向上などが勝因と考えられる。
<参考>
長崎県 | 知事のページ|プロフィール
ながさき知事選2022:大石氏初当選「世代交代」果たす 現職・中村氏、厳しいコロナ対策で逆風 /長崎 | 毎日新聞
長崎知事選 新人、組織よりSNS 541票差 コロナ閉塞、投票率上昇 | 毎日新聞
長崎県知事選、新人の39歳大石氏初当選 現職で最年少に
宮沢よしひこオフィシャルサイト
大石けんごOfficial Site
医系技官とは
長崎知事に大石氏、コロナ「きめ細かく対策」: 日本経済新聞
新幹線整備で「佐賀県との関係作りが必要」、長崎県知事選で初当選の大石さん…現職にわずか541票差
大石賢吾 – YouTube
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