略称「民主党」とは?同一略称や按分票についてわかりやすく解説

略称「民主党」とは?同一略称や按分票についてわかりやすく解説

2021年衆議院選挙と同様に、2022年参議院選挙で立憲民主党と国民民主党の比例代表での略称がどちらも「民主党」となりました。この記事では、複数の政党が選挙で同一の略称を用いることについてわかりやすく解説します。

略称「民主党」とは?

2021年衆議院選挙で、立憲民主党と国民民主党の比例代表での略称がどちらも同じ「民主党」であったことについて解説します。

立憲民主党と国民民主党が同じ略称「民主党」を使用

2021年衆議院選挙において、立憲民主党と国民民主党の2党の比例代表における略称がどちらも、同じ「民主党」でした。

公職選挙法では、複数の政党が同じ略称を使用することが認められています。そのため、両党が届け出た略称「民主党」はどちらも受理されました。

その前の国政選挙である2019年参議院選挙では、再編前の旧立憲民主党が「りっけん」を、旧国民民主党が「民主党」を略称に使用していたため、このような事態は起こっていませんでした。

立憲民主党と国民民主党は、投開票日前に、比例代表は略称ではなく正式名称を書くよう呼びかけをしましたが、結果的に「民主党」と書かれた票が約360万票に上りました。

各地の選挙管理委員会には、この件についての問い合わせが相次ぎました。

比例代表の略称とは

そもそも、比例代表の略称とは何でしょうか?

衆議院選挙の比例代表では政党名のみを、参議院選挙の比例代表では政党名または候補者名のどちらかを、投票用紙に記入します。

その際に正式名称だけでなく、定められた略称で政党名を書いても、有効票となります。

投票所で、有権者が投票用紙に候補者名や政党名を記入する投票記載台の前に、名簿届出を行った政治団体(政党など)の一覧が貼ってあります。その一覧の、各政治団体(政党など)の正式名称の下に、略称が書かれています。

略称は、政党が中央選挙管理会に届け出、それを中央選挙管理会が受理することによって決定します。

「民主党」と書かれた票はどうなる?

「民主党」と書かれた票は、立憲民主党と国民民主党、有権者がどちらを意図して書いたのか判断がつきません。しかし、そのような票は、基本的に無効票となるのではなく、按分票となります。

按分票とは

按分票とは、投票用紙に書かれた候補者名や政党名に該当する候補者や政党が複数ある票のことです。按分票は、開票区ごとにその他の有効票の割合に応じて割り振られます。

按分票については、公職選挙法第68条の2「同一氏名の候補者等に対する投票の効力」で定められています。

得票数が整数ではなく、小数点以下の数字が含まれている場合があるのは、按分票のためです。

2021年衆議院選挙では約360万票が按分

2021年衆議院選挙では、「民主党」と書かれた票が約362万票ありました。

総務省は各地の選挙管理委員会に対し、「民主党」と書かれた票は公職選挙法に則り案分するよう注意を促しました。

全国の比例代表での得票数は、立憲民主党は約1100万票、国民民主党は約260万票でした。そのうち、立憲民主党は約295万票、国民民主党は約66万票を案分票で得ました。

立憲民主党と国民民主党の関係は?

立憲民主党と国民民主党はどちらも旧民主党の流れを汲む政党です。

旧民主党は1998年に結成し、2009年から2012年まで政権運営をしていた政党です。その後、2016年に旧民主党を母体として旧民進党が発足しました。

現在の立憲民主党と国民民主党は、どちらも、この旧民進党から分裂や合流を経て、結成された政党です。

比例代表の同一略称はなぜ認められる?

同じ略称は有権者に混乱を招く可能性があります。しかし、比例代表で2党が同じ略称を使用した事例は過去にもあり、中央選挙管理会は認めています。

政党の同一略称は過去にも

比例代表での政党名の略称が2つの政党で同じだった事例は、過去にもありました。

1992年の参議院選挙では、日本新党と国民新党の略称はどちらも「新党」でした。また、2010年参議院選挙でも新党日本と、たちあがれ日本がどちらも「日本」を略称で用いました。当時も、それらの票は按分票として扱われました。

同じ略称が受理される理由

2010年に新党日本と、たちあがれ日本がどちらも略称「日本」を届け出た際に、同一略称について国会で議論されたことがあります。

その際に、同じ略称を受理する理由について、当時の総務大臣の指示により総務省が以下のように回答しました。

現行の公職選挙法の下では、中央選挙管理会には、政党その他の政治団体の政治活動の自由を制限しないよう、法令の規定により受理しないことが認められる場合を除き、届出の受理に関する裁量権の行使は認められていない。

引用元:政党「同一略称」に関する質問主意書 答弁本文

よって中央選挙管理委員会は、同一または類似の名称で届け出られた場合でも基本的に受理するとしています。

ただし、2020年に当時の「NHKから自国民を守る党」が略称を「自民党」で届け出たときに受理しなかったという事例もあります。

2022年夏の参議院選挙での略称はどうなる?

2022年参議院選挙に向けて、有権者の混乱を避けるため、立憲民主党と国民民主党は調整を試みました。しかし、結果的にどちらも略称を「民主党」で届け出、受理されました。

2022年参議院選挙でも、両党の略称はどちらも「民主党」に決定したため、再び多くの案分票がでる可能性があります。

 

 

<参考>

参院選の略称、国民民主は立民と同じ「民主党」…衆院選では362万票が案分票に
略称同じ、立民・国民が懸念 「民主党」票は振り分けに: 日本経済新聞 (nikkei.com)
比例「民主」は無効? 総務省「党名正しく書いて」:参院選2019:中日新聞(CHUNICHI Web)
総務省|立候補 (soumu.go.jp)
政党「同一略称」に関する質問主意書
政党「同一略称」に関する質問主意書 答弁本文
公職選挙法 | e-Gov法令検索
紛らわしい党名略称、有権者も混乱 「民主」と書いたらどうなる? [2021衆院選]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
比例代表選挙の「拘束名簿式・非拘束名簿式」って、なんのこと?/厚木市 (city.atsugi.kanagawa.jp)
比例略称「民主党」で案分票、今回も? 昨年衆院選では大量発生 | 毎日新聞
「紛らわしい…」立民と国民の略称「民主党」に約200万票 衆院選 | NHK政治マガジン
立・国の略称「民主党」で競合 参院選、再び案分票発生
略称同じ、立民・国民が懸念 「民主党」票は振り分けに: 日本経済新聞 (nikkei.com)
比例「民主」は無効? 総務省「党名正しく書いて」:参院選2019:中日新聞(CHUNICHI Web)
参院選の略称、国民民主は立民と同じ「民主党」…衆院選では362万票が案分票に : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
11月10日 5154(4751号)/3面 (sdp.or.jp)
【図解】旧民主党を巡る変遷…分裂から立憲民主党・国民民主党発足まで(Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE)
国民民主、11日に解散 「民主党」の歴史に幕 – 産経ニュース (sankei.com)
民主党:組織 > 民主党略年表 (dpj.or.jp)
日本の政党30年、離合集散の歴史を年表にしてみました(増澤陸) – 個人 – Yahoo!ニュース
国民民主党、どうやってできたか覚えてる?立憲民主党と合流へ。これまでの経緯を振り返る | ハフポスト NEWS (huffingtonpost.jp)
略称「日本」めぐり、新党日本が改善を要求 (ntv.co.jp)
正しく民意が反映されたと言える? 比例東京の「民主党」は28万票超 略称重複問題に識者「投票方法改善を」
約362万票の「民主党」、今回はどこへ行く?政党略称と按分票の解説(オフィス・シュンキ)|選挙ドットコム
夏の参院選比例代表 国民 略称「民主党」に決定 立民と同じ | NHK | 参院選
選挙の友出版 『地方選挙必勝の手引』
最終閲覧日は記事更新日と同日

タイトルとURLをコピーしました