政治家が検挙されるたびに耳にする「公職選挙法違反」。
候補者だけでなく、有権者にも罰則があるということをご存知でしょうか?
本人が違反しているつもりはなくても、予期せず違反してしまう可能性もあります。公職選挙法で何が禁止されているのか、運動の中で「できないことは何か」を理解しておきましょう。
本記事では、違反事例・罰則など「公職選挙法の違反」について解説します。
公職選挙法違反とは?
公職選挙法違反とは、昭和25年に施行された法律100号「公職選挙法」に違反することを指します。
公職選挙法に違反した場合、禁錮や罰金などの罰則が科されることもあります。
ここからは以下の内容について詳しく解説していきます。
- 公職選挙法に違反する行為
- 公職選挙法の違反例と罰則
禁止されている選挙運動
- 買収
- 飲食物の提供
- 戸別訪問
- あいさつを目的とする有料広告を出す
- 署名運動
- 気勢を張る行為
など
買収
投票してくれることを目的に金銭を支払うことはもちろん、「接待」や「当選後の優遇を約束」なども買収に当たります。
飲食物の提供
お茶請け程度の軽食や選挙運動員への弁当の提供(上限金額あり)は認められていますが、それ以外のお弁当やビールなどを提供することは禁止されています。
戸別訪問
家を訪問して投票をお願いすることは禁止されており、他の用事で家に寄ったついでであっても、違反となります。
あいさつを目的とする有料広告を出す
政治家や後援団体が、あいさつを目的として選挙区内の人に対して、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、インターネットを利用した有料の広告を出すことは罰則をもって禁止されます。ただし、有料広告が全面的に禁止されているわけではありません。政策宣伝等の目的で内容や事前運動にわたらないものであれば有料広告を出すことも可能です。
署名運動
特定の候補者に投票をするように、あるいは投票しないようにすることを目的として選挙人に対し署名を集めてはいけません。
気勢を張る行為
選挙運動のため自動車・自転車をつらねたり、隊列を組んで往来したりなどの気勢を張る行為は禁止されています。
公職選挙法に違反するとどうなる?3つの違反例と罰則
公職選挙法に違反した場合、どんな罰則があるのでしょうか?
具体的な3つの違反事例を元に紹介していきます。
公職選挙法違反で警告・検挙された事例については「【事例集】公職選挙法違反で警告・検挙された実例を紹介」でも紹介しています。
文書図画の頒布
公職選挙法第142条では文書図画の頒布について規定されています。
選挙運動のためのはがき及びビラなどの規格や、頒布できる枚数、頒布方法について定められています。
違反した場合の刑罰は、2年以下の禁錮または50万円以下の罰金(公職選挙法第243条1項)となっています。
参考:公職選挙法違反|公職選挙法違反の量刑,逮捕された場合について弁護士が解説|刑事事件の中村国際刑事法律事務所
違反例2:買収及び利害誘導罪
当選を得る目的でお金や品物を渡したり、食事や酒などをごちそうするなどの行為は、買収及び利害誘導罪に該当します。これらの申し込みや約束をしただけでも成立します。
買収及び利益誘導罪の刑罰は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です(公職選挙法221条1項)。
候補者本人や選挙運動を総括した者、出納責任者が上記の行為をした場合には、4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が科せられます(公職選挙法221条3項)。
参考:公職選挙法違反|公職選挙法違反の量刑,逮捕された場合について弁護士が解説|刑事事件の中村国際刑事法律事務所
違反例3:詐偽投票罪
選挙人でない者が投票した場合には、1年以下の禁錮または30万円以下の罰金に処せられます(公職選挙法第237条1項)。
参考:公職選挙法違反|公職選挙法違反の量刑,逮捕された場合について弁護士が解説|刑事事件の中村国際刑事法律事務所
一言メモ:候補者じゃなくても逮捕される!?
公職選挙法違反の対象は、選挙に出馬する人だけではありません。
候補者以外の人も違反すれば逮捕されることがあります。
罰則だけではない!連座制と公民権停止
公職選挙法に違反すると、罰金や禁錮による罰則があるだけでなく、当選が無効になったり、立候補ができなくなったりすることがあります。
連座制とは?
連座制とは、候補者が直接関係していなくても、関係の深い人が買収罪などの選挙違反で刑に処せられた場合は、その選挙の当選を無効とし、さらに一定期間の立候補も制限するという制度です。
対象となるのは、
- 選挙運動総括主宰者(選挙運動を総合的に取り仕切る人)
- 出納責任者(選挙における収入と支出を管理・報告する人)
- 地域主宰者(候補者の選挙区の一部地域における選挙運動を指揮する人)
- 候補者等の親族
- 候補者等の秘書
- 組織的選挙運動管理者等(上記1.2.3以外の人)
です。
公民権停止とは?
公民権停止とは、公職選挙法に違反した人の選挙権と被選挙権が数年間失効する制度です。
一般に「公民権停止規定」と呼ばれており、公職選挙法の「選挙権および被選挙権を有しない者」という見出しの規定(第11条)に定めがあります。
選挙権と被選挙権が失効すると、直接的に選挙に関わることができなくなります。
原則として、失効する期間は
- 懲役・禁固刑の場合 10年間
- 罰金刑の場合 5年間
となっています。
直近の事例だと、前経済産業大臣の菅原一秀氏が公職選挙法違反で略式起訴され、3年間の公民権が停止されました。(辞職を受けて期間が短縮)
まとめ
本記事は公職選挙法について、以下のポイントに沿って解説しました。
- 公職選挙法とは
- 公職選挙法に違反する行為
- 公職選挙法違反の事例と罰則
- 連座制と公民権停止
<参考>
e-Gov法令検索
選挙立候補.com
四万十市公式サイト
国政情報センター
政治ドットコム
選挙LABO
選挙に「出る人、出たい人」の応援サイト
三郷市公式サイト
日本経済新聞公式サイト
昭和36年版犯罪白書
参議院法制局
政治活動・選挙運動・寄附について|足立区