安倍元首相の国葬が2022年秋に執り行われることが閣議決定しました。
この記事では、国葬とは何か、過去の事例や国葬に関する法整備、海外の国葬について紹介します。
国葬とは
国葬とは、国家の儀式として国費で行われる葬儀のことです。
日本で戦後に行われた皇族以外の国葬は、1967年の吉田茂元首相の国葬のみです。
戦前には国葬令という天皇の勅令がありましたが、国葬令は1947年に失効しました。戦後は、国葬に関する法整備については何度か議論はあったものの、天皇以外の国葬についての明確な法整備はなされていません。
国葬の法整備
現在、天皇以外の国葬について明確に定められた法令はありません。国葬の法整備について、戦前からさかのぼって解説します。
国葬令
戦前には国葬令という天皇の勅令がありました。
国葬令では、天皇皇后・一部の皇族・国家に特別の功績があった者を国葬の対象と定められていました。また、「当日、国民喪に服する」と明記されていました。
戦前に国葬された人には初代内閣総理大臣の伊藤博文や軍人の山本五十六などがいます。
戦後の国葬
戦後、1947年に国葬令は失効しました。以降、天皇以外に対してどのような場合に国葬を行うのかという基準を明記した法令は定められていません。
1967年に吉田茂元首相の国葬が行われることになった際にも、国葬の法的根拠について話題になり、国会でも議論されたことが国会会議録に残っています。
第58回国会 衆議院 決算委員会 第15号 昭和43年5月9日 | テキスト表示 | 国会会議録検索システム (ndl.go.jp)
2022年秋ごろに行われる予定の安倍元首相の国葬について、政府は内閣府設置法で内閣府がつかさどる事務のひとつとして定められている「国の儀式」に該当すると判断し、執り行うことを閣議決定しました。
国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること(他省の所掌に属するものを除く。)。
大喪の礼
唯一、天皇に対する国葬については明文化された法律があります。
天皇が崩じたときは、大喪の礼を行う。
引用元:皇室典範 | e-Gov法令検索
これに則り、1989年の昭和天皇崩御の際には大喪の礼が国事行為として行われました。
また、1951年には貞明皇后について事実上の国葬が行われたことがあります。
戦後首相経験者の葬儀(過去事例)
ここでは、戦後の首相経験者の葬儀がどのように行われてきたのか解説します。
吉田茂元首相の国葬
戦後、唯一行われた皇族以外の国葬は1967年の吉田茂元首相の国葬です。
1967年10月31日の午後に日本武道館で行われ、皇族や外国特使が参列し、一般の人々が献花に訪れました。
政府は国葬当日の午後について、官公庁の職員は可能な範囲で早退、国公立の学校は休校にしました。
合同葬
近年では首相経験者が亡くなった場合、内閣と自民党の合同葬が行われることが主流でした。
1980年、首相在職中に亡くなった大平正芳元首相の葬儀が合同葬として行われて以降、その後の首相経験者については合同葬が一般的になりました。
最近では2020年10月に中曽根康弘元首相の合同葬が行われました。
国民葬
1975年、佐藤栄作元首相が亡くなった際には、内閣と自民党に加えて国民有志が主催者となった国民葬が行われました。
国民葬が行われたのは、佐藤栄作元首相についての1度のみです。
また、戦後の国葬・合同葬・国民葬はいずれも無宗教式で行われています。
海外の国葬
ここでは、各国の国葬について紹介します。
アメリカでは、基本的に大統領経験者については国葬となります。しかし、リチャード・ニクソン元大統領のように国葬が行われなかった大統領経験者もいます。
また、アメリカではGHQのダグラス・マッカーサー最高司令官のように大統領経験者以外でも国葬が行われた例があります。
イギリスでは、基本的に王室関係者に対して国葬が行われます。例外的に、ウィンストン・チャーチル元首相のように「特段の功労」があったとして国葬が行われた例もあります。
また、ジャマイカで歌手のボブ・マーリー、ブラジルでF1レーサーのアイルトン・セナの国葬が行われたことがあるように、政治家だけでなく、世界的な著名人に対し国葬を行った国もあります。
<参考>
<Q&A>安倍晋三元首相の「国葬」が行われる理由は?費用はどうなる?:東京新聞 TOKYO Web
国葬:時事ドットコム (jiji.com)
昭和二十二年法律第七十二号(日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律) | e-Gov法令検索
故枢密院議長従一位大勲位公爵伊藤博文国葬ノ件・御署名原本・明治四十二年・勅令第三百十四号 (archives.go.jp)
【解説】「安倍氏の悲劇を利用」国葬に批判も 岸田首相の国葬への“強い思い”の背景は?(日テレNEWS) – Yahoo!ニュース
国葬、戦前は「民主主義とは相いれない儀式」 安倍元首相で実施なら国会であり方議論を 日本近代史研究者:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
神戸新聞NEXT|連載・特集|話題|安倍元首相は今秋「国葬」に…そもそも「国葬」って何ですか? 戦後では吉田茂元首相以来2例目に (kobe-np.co.jp)
吉田茂氏の「国葬」はどんな様子だったのか。全国でサイレン、弔砲の発射も…写真で振り返る | ハフポスト 政治 (huffingtonpost.jp)
安倍元首相の国葬、「非国民」を生む懸念も 大学院生が訴える反対論:朝日新聞デジタル (asahi.com)
国葬、当初は「国民葬」軸に検討…首相が慎重論退ける
歴代首相の「国葬」「合同葬」は?【近年の事例・一覧】安倍氏の「大規模な葬儀」秋に実施検討と報道も | ハフポスト 政治 (huffingtonpost.jp)
令和2年10月17日 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀 | 令和2年 | 総理の一日 | ニュース | 首相官邸ホームページ (kantei.go.jp)
ご大喪・ご即位・ご結婚などの行事 – 宮内庁 (kunaicho.go.jp)
国葬で政治的評価や「服喪」強制せず、休日措置取らず…弔問外交には活用 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
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