政治関連の話題でよく耳にする代議士は、誰のことを指すのか正確に答えられますか?
どのような人が代議士と呼ばれているのか、日本の政治史の解説も含めてわかりやすく説明します。
代議士の意味は?
「代議士」とは、国民から選挙で選ばれて国政に参加する人、つまり国会議員のことを指します。
衆議院議員と参議院議員のうち衆議院議員のことを指すのが一般的です。
後ほど解説しますが、「代議士」という言葉が指す範囲には明確な定義がなく、本記事では一般的に「代議士」と言う言葉がどのように使われているかについて解説します。
代議士になるには?なぜ衆議院議員のみが代議士なの?
衆議院議員が「代議士」と呼ばれるようになったのは戦前の帝国議会の名残です。
1890年から1947年まで存続した帝国議会は、衆議院と貴族院の二院制でした。
貴族院の議員は、皇族、華族、勅任された議員で構成されていましたが、衆議院の議員は現在と同様、選挙によって選出されていました。
当時は衆議院の議員のみが「国民を代表して議する」議員であったことから、「代議士」と呼ばれるようになりました。
代議士になるということは、衆議院議員になることを指すのが一般的です。
代議制・代表民主制・間接民主制
「代議士」とあわせて覚えておきたい言葉が「代議制」です。
選挙によって選出された人が代表して政治決定を行う制度を代議制、代表民主制、間接民主制などと言います。
現在の日本の議会は、これに当てはまります。
反対に有権者である国民ないし住民がみずから直接政治決定をおこなう制度のことを「直接民主制」と言います。
「代議士」と「議員」の違いと使い方
では、国会に関する報道でよく出てくる「議員」と「代議士」にはどんな違いがあるのでしょうか。
既に解説した通り、戦前の帝国議会の影響から衆議院議員が「代議士」と呼ばれるようになっています。
一方、「議員」は衆議院議員と参議院議員を含めた国会議員全てのことを指しています。
国会では現在も厳密に「衆議院議員が代議士である」という考え方があり、衆議院議員の総会は「代議士会」と呼び、参議院議員の総会は「参議院議員総会」と呼び、会合や役職名などもこれに準じて使い分けがされるのが一般的です。
例えば、同じ立憲民主党でも衆議院と参議院で以下のような使い分けがされています。
「代議士会」の使用例
「参議院議員総会」の使用例
一方、現在は参議院議員も「代議士」に該当するという意見や考え方もあり、「代議士」と言う言葉が誰を指すかについては様々な意見が交わされています。
政治家を「先生」と呼ぶ背景
さらに、議員を「先生」と呼ぶ人もいます。
これは国会が始まった明治時代ごろとする説が有力です。
現在の秘書にあたる書生らは当時、多くが議員宅に住み込んで仕えていました。
そんな書生にとって、議員は政治を教えてくれる「先生」のような立場であり、親しみも込めてそう呼ぶようになったと推察されます。
また、現在では、議員を先生と呼ぶことについても議論がされています。
まとめ
- 「代議士」は戦前の帝国議会にちなんだ俗称。
- 一般的に代議士とは、衆議院議員のことを指すことが多い。
- 現在は二院制の仕組みが戦前と戦後で変わっている背景もあり、代議士という言葉が示す範囲には議論がある上、明確な定義はない。
<参考>
代議士とは – コトバンク
貴族院と日記――明治期を中心に|日記で読む政治史|国立国会図書館憲政資料室 日記の世界
「政治家」と「代議士」の違いって? | ことくらべ
どう思う? 議員の「先生」呼び 〝勘違い〟助長の側面も… – 産経ニュース
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