選挙のネット投票(オンライン投票)はなぜできない?デメリットや電子投票の違いを解説

選挙のネット投票(オンライン投票)はなぜできない?デメリットや電子投票の違いを解説

「ネット投票はなぜできない?」
「オンライン投票を採用する課題やデメリットを知りたい」
「海外でのネット投票採用事例を知りたい」

ネット投票とは、インターネットを利用した投票方法により、投票所に行かずに投票できる制度のことです。

本記事ではネット投票について、以下のポイントに沿って解説しています。

  • ネット投票とは
  • ネット投票と電子投票の違い
  • ネット投票実現への課題
  • 海外でのネット投票導入事例

選挙のインターネット投票(オンライン投票)とは

選挙のネット投票(インターネット投票、オンライン投票)とはどのようなものか説明します。

また、電子投票との違いも解説します。

投票所に行かずにオンラインで投票できる制度

ネット投票(オンライン投票)とは、投票所に行かずにオンラインで投票できる制度のことです。

ネット投票が実現して、自宅にいながらパソコンやスマートフォンから投票ができるようになれば、障害のある方や怪我をしている方などの移動や付き添いについて考慮しなくてもよくなるため、負担が減るでしょう。

ネット投票には他にも以下のようなメリットが期待できます。

  • 開票作業が速い
  • 選挙管理の人的・金銭的コストを減らせる

また、候補者や政党を選択肢から選ぶ方法を採用した場合は、書き間違いによる無効票を減らす効果も期待できます。

ネット投票にはさまざまなメリットがあると考えられていますが、導入実現には複数の課題があるといわれています。

法改正が必要ということも課題の1つです。公職選挙法では「自ら投票所に行き、投票をしなければならない」と定められており、遠隔での投票は認められていないため、ネット投票は認められていません。

第四十四条 選挙人は、選挙の当日、自ら投票所に行き、投票をしなければならない。

引用元:公職選挙法 | e-Gov法令検索 

電子投票との違い

ネット投票と混同されやすいものに「電子投票」があります。

電子投票とは、投票所に設置された端末を用いて投票することです。ネット投票とは違い、投票所に行かなくてはなりません。

電子投票を行うには、機材や回線などの設備が必要となりますが、開票作業にかかる時間や手間は今より格段に減ることが期待されます。

実際、2002年に行われた岡山県新見市の市長・市議会議員選挙では電子投票によって開票作業が25分で完了しました。

地方選挙に電子投票を導入することはできますが、国政選挙での電子投票は認められていません。公職選挙法46条では、自書以外の方法が禁止されているため、電子端末などを使用した投票ができないことになります。

選挙人は、投票所において、投票用紙に当該選挙の公職の候補者一人の氏名を自書して、これを投票箱に入れなければならない。
引用元:公職選挙法 | e-Gov法令検索 

電子投票については「選挙の電子投票とは?日本での導入事例やメリット・デメリットを解説」で詳しく解説しています。

ネット投票はなぜできない?実現への課題

ネット投票はなぜ実現できないのでしょうか。

実現するには、以下のような課題があるといわれています。

  • 本人確認
  • 投票の秘密
  • 安定したシステム

それぞれ詳しく解説します。

本人確認

ネット投票を実現するためには、本人確認を確実に行う必要があります。

本人確認方法としてはマイナンバーカードを活用した方法が検討されていますが、どのような方式で行うかといった技術的な課題は残っています。

また、全国のマイナンバーカードの普及率は令和4年6月1日時点で44.7%にとどまっているため、有権者全員がマイナンバーカードを利用して投票できるようになるには、時間がかかるでしょう。

投票の秘密

ネット投票の実現には、投票の秘密が守られなければなりません。

投票の秘密とは、誰がどの候補者・政党に投票したかがわからない方法で選挙が行われることです。

現在の日本の選挙では、投票用紙を箱に入れてしまえば、誰がどの候補者・政党に投票したかは分からないため、投票の秘密が守られていることになります。

ネット選挙では、この「投票の秘密」を守るのが難しいといわれています。

技術的な観点では、投票内容を暗号化したとしても、暗号を解かれてしまうリスクが残ります。また、候補者が人を集めて強制的に投票させるといったことも考えられます。

安定したシステム

ネット投票の実現には、安定したシステムが必要です。

ネット投票では文字通りインターネットを利用するため、通信障害によるトラブルなども想定した上で、安定して稼働するシステムを構築しなければなりません。

また前述の「本人確認」や「投票の秘密保持」を支えるための暗号化技術も必要になるでしょう。

海外でのネット投票導入事例

ネット投票の導入にはさまざまな課題があるといわれていますが、海外では既に導入されている事例もあります。

エストニアでは、2005年の地方議会議員選挙からネット投票が導入され、2007年には国政選挙でも採用されました。国政選挙にネット投票が採用されたのはエストニアのみです(2022年8月現在)。2019年3月の国政選挙では、投票者の43.8%がネット投票を選択し、期日前投票の71.4%はネット投票によって行われました。

また、カナダでは地方選挙においてネット投票が導入されています。中でもオンタリオ州などはネット投票に積極的といわれており、オンタリオ州のマーカムでは2002年より投票のテストを実施し、2003年の地方選挙ではネット投票を採用しました。

スイスではネット投票を実現するために法改正を行い、2003年からテストを行ってきました。しかし、ネット投票システムに欠陥があることが分かり、導入は見送られました。

まとめ

本記事ではネット投票(オンライン投票)について解説しました。以下に内容をまとめます。

  • ネット投票とは、投票所に行かずにオンラインで投票できる制度
  • 電子投票は投票所に行く必要がある
  • ネット投票導入には、本人確認や投票の秘密保持、システムなどの観点で課題があるといわれている
  • 国政選挙にネット投票を採用している国はエストニアのみ

 

<参考>
センキョの疑問答えます!⑥「ネット投票はできるようにならないの?」 | NHK北海道 
「電子投票とネット投票」いつになったらできる? みんなの選挙 障害者が投票に参加しやすい参議院選挙2022 NHK 
ネット投票 なぜできない | 特集記事 | NHK政治マガジン 
ネット投票は実現するのか!?従来の選挙を一変するオンライン選挙の可能性 
| Elections in Estonia
世界のインターネット投票(前編) ~オンライン選挙を進める国々の動向 | InfoComニューズレター 

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