この記事では、議員立法についてわかりやすく解説します。また、日本では議員立法が少ない理由や、議員立法と対になる内閣立法についても触れていきます。
議員立法とは
議員立法は、国会議員が立案し法案を提出、成立した法律のことを指します。また、成立はせずとも国会議員により提出された法案のことや、国会議員による立法活動全般のことを指す場合もあります。
国会議員が発議する場合に加えて、委員会や調査会が法案を提出する場合も議員立法に含まれます。
議員立法の対義語ー内閣立法
立法府は国会ですが、国会議員の他に内閣も法律案を提出することができます。
議員立法の対義語は、内閣立法・政府立法などです。また、議員提出法案の逆概念は政府提出法案・内閣提出法案などで、略称を「閣法」と呼びます。
議員立法の提出数と成立件数、少ない理由
日本で成立する法律の大部分は内閣立法であり、議員立法は少ないといわれています。
令和7年の通常国会で成立した法律は全部で75件であり、うち議員立法は17件です。内閣が提出した法案は59件中58件が法律として成立しているのに対し、議員が提出した法案77件のうち法律として成立したのは17件です。
法案提出に必要な条件
国会議員が発議する場合、1人で法案を国会に提出できるわけではありません。
国会議員が法案を提出するためには衆議院では20人以上、参議院では10人以上の賛成者が必要です。さらに、予算を伴う法案に関しては、衆議院では50人以上、参議院では20人以上の賛成者を集める必要があります。
自民党が大幅に議席を減らし、野党が議席を伸ばした2025年参議院選挙では、国民民主党が予算を伴う法案を、参政党が予算を伴わない法案を、参議院で単独で提出できる議席数を獲得したことが注目されました。
対して、内閣立法の場合は国会に法案を提出する前に、政権内で閣議決定を行います。
法案の審議
法案は発議者の議員が所属する議院の議長に提出された後、担当の委員会に付託されます。委員会で審査、採決を経て、本会議で審議されます。
国会における審議では内閣提出法案が基本的に優先され、限られた審議時間の中では、野党の議員のみで提出された法案は審議されないままであることもあります。
議員立法と官僚
国会は「国の唯一の立法機関である」と憲法第41条で定められています。そのため、国民から選ばれた国会議員が法案を作成、提出するのは当然ではあります。
しかし実際には、政策の高度化、専門化により立法では官僚が大きな役割を果たしています。
内閣提出法案の原案は、情報を多く持つ行政官庁の官僚が作成していることも内閣立法が多い理由のひとつです。
議員立法で成立した法律
令和7年に議員立法により成立した法律の中には、以下のような例があります。
- 公職選挙法の一部を改正する法律(令和7年法律第19号)
この法律は、令和6年東京都知事選挙において、選挙と無関係の内容や品位に欠ける選挙ポスターが掲示されたこと等を受け、選挙ポスターの規程を公職選挙法に追加したものです。
この法律の法案は、衆議院にて自民党・立憲民主党・日本維新の会・国民民主党・公明党・参政党・日本保守党の12名の議員により提出されました。
令和7年通常国会で議員立法により成立した17件のうち、国会議員が法案の提出者であるものは、上記及び関連するもう1つのみです。他の15件は、委員会により提出されています。
- 手話に関する施策の推進に関する法律案(令和7年法律第78号)
この法律は、内閣委員会により提出されました。このように、各委員会は、その委員会が担当する分野の法律に関して法案を提出します。
議員立法のサポート
国会議員の立法活動を補佐するために、政策担当秘書制度、衆議院法制局・参議院法制局があります。
政策担当秘書
議員立法の場合、その法案についての国会での答弁等を提出者である議員が行います。そのような議員の立法活動を補佐することを目的のひとつとして、平成5年に政策担当秘書制度が設けられました。
政策担当秘書は公設秘書の1種であり、国会議員1人につき1人まで付けることができます。
法制局
国会議員の法案作成を補佐する機関に、衆議院法制局・参議院法制局があります。
法制局は、それぞれが担当してる議院に属している議員からの依頼を受けて、議員と協議を行いつつ法案の作成をします。
その法案に関する政党内の議論や政党間の協議、国会での審議の際にも法制局は依頼者である議員の補佐を行います。
同様に、内閣の法案提出を補佐する機関に内閣法制局があります。
海外における議員立法
大統領制をとるアメリカでは、法案提出権を持つのは連邦議会議員のみであり、大統領は法律を作成することができません。
日本と同様に議院内閣制をとるイギリスでは、提出法案件数は政府より議員の方が多いものの、成立した法律の件数では政府提出によるものが大多数です。
まとめ
- 議員立法とは国会議員が提出した法案やその後成立した法律、または国会議員による立法活動全般のこと
- 議員立法の対義語は内閣立法
- 議員立法が少ない背景には、法案提出の条件、国会での審議時間、官僚主導の立法などがある
<参考文献>
「国会法」e-Gov法令検索(閲覧日 2025/12/07)
「法律ができるまで」参議院(閲覧日 2025/12/07)
「政策担当秘書制度」参議院(閲覧日 2025/12/07)
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「第217回国会衆法情報」衆議院法制局(閲覧日 2025/12/07)
「議員立法の立案プロセス」参議院法制局(閲覧日 2025/12/07)
「職務」参議院法制局(閲覧日 2025/12/07)
「第217回国会 参法・修正案一覧」参議院法制局(閲覧日 2025/12/07)
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「内閣法制局の概要」内閣法制局(閲覧日 2025/12/07)
「過去の法律案の提出・成立件数一覧」内閣法制局(閲覧日 2025/12/07)
「手話に関する施策の推進」内閣府(閲覧日 2025/12/07)
「公職選挙法の一部改正について」総務省(閲覧日 2025/12/07)
「議員立法序説」国立国会図書館 調査及び立法考査局 専門調査員 農林環境調査室主任 茅野 千江子(閲覧日 2025/12/07)
「主要国の議会制度」国立国会図書館 調査及び立法考査局(閲覧日 2025/12/07)
「国民民主党、16議席を獲得 参院で予算伴う法案の単独提出可能に」日本経済新聞(閲覧日 2025/12/07)
「参政党、改選10議席以上の獲得確実 単独で法案提出可能に」日本経済新聞(閲覧日 2025/12/07)
「内閣提出法案とは?日本の法案が国会に提出されるプロセスを簡単解説」政治ドットコム(閲覧日 2025/12/07)
「<国会用語>議員立法ってどれくらい成立しているの?」Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE(閲覧日 2025/12/07)
