スマートシティとは、デジタル技術を用いて効率的に運営される都市や地域のことです。
GAFAを始めとする世界的なIT企業も取り組むスマートシティですが、日本での取り組みはどうなっているのでしょうか。
本記事では、スマートシティの概要と日本における事例、スーパーシティとの関係についても分かりやすく解説します。
スマートシティの概要
国土交通省によると、スマートシティの定義は「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」というものです。
つまりデジタル技術で効率化され、持続的に運営できるようにした都市や地区を意味します。
多くの都市・地域がさまざまな方面で課題(行政・人口・防災・医療・交通・エネルギーなど)を抱えており、これらをテクノロジーによって解決するのが目的です。
実現するサービス
スマートシティによって実現するサービスには、以下のようなものがあるとされます。
- 行政手続きの効率化
- 最適な医療サービスの提供
- 防災体制の強化
- ドローンによる配送
- 地域のエネルギーやインフラの最適化
- キャッシュレス化により取引をデジタルで完結
- MaaSなど交通手段の最適化
MaaS(マース)とは、複数の交通手段と目的地のサービスを連携させ、検索・予約・決済などを一体化するサービスのことです。
他にも、テクノロジーによって解決できる課題や実現できるサービスが数多く存在します。
鍵を握る先端テクノロジー
スマートシティの実現には、近年開発が進む先端テクノロジーが不可欠です。
新技術には、以下のようなものがあります。
(1)ICT
ICTとは「Information and Communication Technology」の略で、日本語では情報通信技術と訳されます。
単にITと言った場合は情報技術全般を指しますが、ICTは通信に重きを置いた技術のことです。
スマートシティでは都市のデータ連携が重要なため、基幹的な技術とされます。
(2)IoT
IoTとは「Internet of Things」の略です。モノのインターネットとも言われ、センサーと通信機能を使ってモノをインターネットに接続する技術を意味します。
都市に設置するセンサーやカメラなどをインターネットに繋ぐことで、遠隔操作やデータ収集が可能となります。
(3)ビッグデータ
ビッグデータとは、政府(国・地方自治体)・企業・個人が生み出す膨大なデータ群のことです。
主に以下の3つに分けられます。
- 政府が提供する「オープンデータ」
- 企業が保有する「産業データ」
- 個人の情報「パーソナルデータ」
こういったビッグデータが収集され、解析結果は都市運営の効率化に活用されます。
(4)AI
AI(人工知能)は、都市で収集されたビッグデータの解析などに活用されます。
人間が扱えない膨大な情報を処理できるため、最適な都市運営が可能となるのです。
またモノにAIを組み込むことで、人手を介さずに都市の作業を担当させる研究も進んでいます。
(5)データの見える化
デジタルデータを人間が認識できるように視覚化する技術が開発されています。
例えば、建築物の設計・構造・実際の利用状況を3D化する「BIM/CIM」や、ビッグデータから都市をリアルタイムで3D化する「デジタルツイン」などです。
人間が視覚的にデータを把握できることで、建設・都市運営・生活がより便利になります。
日本における事例
日本においても、スマートシティの取り組みは全国的に行われています。
プロジェクトは企業が主導するものから国が選定したものまでさまざまです。
ここでは実証実験や部分的導入が進む現状の中から、スマートシティの事例を抜粋して紹介します。
国が選定したスマートシティ・プロジェクトの自治体一覧は以下のサイトを参考にしてください。
東京都港区「Smart City Takeshiba」
東京都港区の「Smart City Takeshiba」は、ソフトバンク社が中心となって進めている都市型スマートシティ事業です。
都市を3D化して数千人規模の人的混雑をシミュレーションできる「バーチャル竹芝」の実装を目指しています。
ソフトバンクの本社オフィスとして利用される「スマートビル」に始まり、港区と連携して竹芝地区・周辺エリアへと拡大していく予定です。
静岡県浜松市「デジタル・スマートシティ」
静岡県浜松市の「デジタル・スマートシティ」は、全国の市町村が抱える課題を凝縮した総合パッケージが特徴です。
浜松市は広大な市域に人口密集地と過疎地を抱えており、日本の縮図とも呼ばれています。
浜松で持続可能な都市モデルを構築できれば日本全体のモデルになるとされ、活発な実証実験が行われています。
静岡県では、裾野市でもトヨタ社の独自計画である「ウーブンシティ」という事業が進んでいることをご存知でしょうか。
ウーブンシティは、トヨタ社の東富士工場跡地に建設される「移動・交通」に主眼を置いたスマートシティです。
現在は工事中で、2024〜2025年の第一期オープンを目指しています。
香川県高松市「スマートシティたかまつ」
香川県高松市の「スマートシティたかまつ」は、全国でいち早くデータの収集・分析などを行うIoT共通プラットフォームを構築しました。
防災では、河川や湾岸に水位・潮位を測るセンサーを設置してリアルタイムで監視し、災害情報をいち早く検知して市民に通知します。
観光分野では、レンタサイクルにGPSを搭載して利用者の動態調査が行われています。ここで収集したデータは観光客に向けたサービスの充実に活用されています。
さらに福祉・農業・健康・交通といった多分野で、IoTの活用が推進されているのです。
スーパーシティとの関係は?
スマートシティの取り組みを、一つの都市でまるごと実現することを目指す日本の国家プロジェクトが「スーパーシティ」です。
どちらも「Society 5.0」と呼ばれる未来社会に向けた取り組みで、国のモデルプロジェクトとして地続きになっています。
2019年に、スマートシティのモデルプロジェクトとして最初の公募が行われました。以降も追加募集が行われ、現在は51の自治体が選定されています。
スーパーシティ構想の公募は2020年から行われ、全国から31の自治体が事業構想を提案しました。
2022年に候補地として選定されたのは、2019年からスマートシティのモデルプロジェクトに取り組んできた「茨城県つくば市」と「大阪府大阪市」です。
スマートシティでは、都市における新技術の導入について部分的な分野の実証実験や導入が主でした。
スーパーシティでは都市の課題解決に向けてテクノロジーを総合し、大規模な社会実装が目指されます。
スーパーシティについて詳しい解説は、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】スーパーシティとは?気になる概要を分かりやすく解説
まとめ
本記事では、スマートシティについて解説しました。
- スマートシティとは、ICTなどの先端技術により効率的・持続的に運営される都市や地区のこと
- 目的は多くの都市や地域が抱える課題をテクノロジーで解決すること
- 日本全国で、企業・国・自治体がスマートシティ事業に取り組んでいる
- スマートシティの取り組みを、一つの都市で丸ごと実現する日本の国家プロジェクトがスーパーシティ
- 国のスマートシティ・プロジェクトに選定されていたつくば市と大阪市が、スーパーシティの候補地に選ばれた
<参考>
都市交通調査・都市計画調査:スマートシティに関する取り組み – 国土交通省
スマートシティ – Society 5.0 – 科学技術政策 – 内閣府
Society 5.0 【要約】|日本経済団体連合会
国土交通省日本版MaaSの推進
総務省|平成29年版 情報通信白書 特集 データ主導経済と社会変革
スマートシティにおける AI の役割と活用|日本エネルギー経済研究所(IEEJ)
国内外のスマートシティ事例15選 ~定義やスマートシティがもたらす変化など解説~ | WEBマガジン「#Think Trunk」 | 自治体・行政機関向け | JTB 法人サービス
スマートシティでのロボット活用のカギは役割分担の明確化 PARCO、三菱地所、コネクテッドロボティクスが語る – ロボスタ
BIM/CIMポータルサイト | 国土交通省
BIMとは?主要ソフトの特徴と比較、導入費用、メリット、建築事例を紹介
デジタルツイン | NTTデータ
スマートシティ官民連携プラットフォーム
驚きと感動のある街を、ここから「Smart City Takeshiba」 | ソフトバンク
Smart City Takeshiba(竹芝Marine-Gateway Minato協議会)
デジタル・スマートシティの推進/浜松市
浜松市デジタル・スマートシティ構想
デジタル・スマートシティ浜松の取組 ~国土縮図型都市・浜松の挑戦~
Toyota Woven City
スマートシティたかまつ|高松市
「スマートシティたかまつ」プロジェクトの推進|高松市
「スマートシティたかまつ」プロジェクトの推進|国土交通省
スマートシティプロジェクト箇所図|国土交通省
スマートシティの実装化の推進 ~モデルプロジェクトを追加選定~|国土交通省
スーパーシティ、デジタル田園健康特区について|内閣府
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