NATOは正式な名称を「北大西洋条約機構」といい、「North Atlantic Treaty Organization」の頭文字をとってNATOと呼ばれています。
ロシアによるウクライナ侵攻など、国際ニュースで聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、NATOが出来た歴史的な経緯や役割、ロシアによるウクライナ侵攻との関係などについて、解説します。
NATOとは
NATOとは、欧州や北米の30カ国が加盟(2022年12月現在)する国際機関で、加盟国の領土・国民の防衛を目的とする、政治的・軍事的な同盟です。
正式な名称は「北大西洋条約機構」といい、「North Atlantic Treaty Organization」の頭文字をとってNATOと呼ばれています。
本部はベルギーのブリュッセルにあり、元ノルウェー首相のストロテンベルグ氏が事務総長を務めています。
NATOができた経緯
NATOができたのは1949年、設立当初の加盟国は12か国でした。
第二次世界大戦後、資本主義を掲げる西側諸国と、社会主義を掲げる東側諸国との東西冷戦が始まります。
そもそもNATOは、そうした世界情勢を受けて、旧ソ連を中心とした東側に対立するために西側諸国が加盟してできた軍事同盟で、集団防衛のために生まれました。
対して、東側は1955年にソ連などが加盟する軍事同盟・ワルシャワ条約機構を設立します。
西側のNATO、東側のワルシャワ条約機構と、それぞれが軍事同盟を作り、長いにらみ合いが続きました。
その後、1990年の東西ドイツ統一、そしてソ連崩壊を経て冷戦が終結し、ワルシャワ条約機構は1991年に廃止となりました。
冷戦終結でNATOの存在意義が疑問視された過去もありましたが、NATOは解体されずに存続しました。
さらに、かつてワルシャワ条約機構に加盟していた旧東側諸国の一部なども加盟し、NATOは現在も影響力を維持しながら活動を続けています。
NATOは何をするのか
外務省によると、NATOの中核的任務は「集団防衛」「危機管理」「協調的安全保障」の3 つで、加盟国の領土及び国民を防衛することが最大の責務とされています。
北大西洋条約の第5条には、加盟国が1国でも攻撃を受けた場合、これを加盟国全体への攻撃とみなして反撃などの対応をとるとして、集団的自衛権の行使が規定されています。
2001年に起きたアメリカ同時多発テロ後、アメリカからの要請に応じ支援措置としてNATO史上初めて第5条・集団防衛条項が発動されました。
2022年12月現在、第5条が発動されたのは、このとき一度しかありません。
第5条の前段階ともいえる北大西洋条約の第4条には、加盟国の領土保全や政治的独立、または安全が脅かされている場合、いつでも対応を協議することが定められています。
2022年11月、NATO加盟国であるポーランドにミサイルが着弾し二人が死亡したことを受け、NATOの動向が注目されました。
結局、このときはNATOによる集団防衛条項の発動には至りませんでした。
ポーランドを攻撃する目的でミサイルが発射されたのではなく、ロシアのミサイルに対するウクライナの迎撃ミサイルだったという見方が強まったためです。
加盟国が攻撃を受けたとき以外にも、NATOは過去に軍事行動を起こしています。
1999年にはNATOがコソボ紛争への「人道的介入」としてユーゴを空爆し、多くの死者が出ました。
ユーゴ空爆は、NATO域外での軍事行動で、北大西洋条約5条に基づくものではありません。
明確な法的根拠も示されなかったことから、その正当性の有無について大きな議論を呼びました。
ウクライナ侵攻の背景にNATOの東方拡大?
2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻しました。
背景には、NATOの「東方拡大」に対するロシアの強い抵抗感がある、という指摘があります。
ソ連崩壊後、1999年にポーランド・チェコ・ハンガリー、2004年にバルト3国など、かつての「東側諸国」が、経済的に豊かな西側陣営に入ることを望み、次々とNATOに加盟しました。
ウクライナも例外ではありません。
ウクライナはもともと、ロシアと同じくかつてのソビエトの一部でした。
ロシアとウクライナは国境も接しており、プーチン大統領はウクライナを「兄弟国家」と呼ぶなど強い執着を持っているといわれています。
しかしそのウクライナでも欧米寄りの政権が誕生し、NATOやEUへの加盟を希望しています。
こうした動きから、冷戦時代の勢力圏が次々と失われ国防上の防衛線が迫っているとして、プーチン大統領はNATOの東方拡大に脅威を感じていると見られています。
ロシアにとってウクライナは政治的にも軍事的にも重要な場所で、2007年、プーチン大統領はNATOの東方拡大について初めて公の場で批判しました。
NATOの東方拡大などを背景に、ロシアはウクライナを自国側につけるために侵攻に踏み切ったという見方もされています。
加盟を希望する国に対するNATOの対応
ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、2022年5月、スウェーデンとフィンランドの北欧二か国がそれまでの安全保障政策を転換し、NATOへの加盟を申請しました。
加盟には全ての加盟国の国会による批准が必要となりますが、トルコが批准するかどうか先が見通せない状況で、2022年12月現在、まだ加盟は実現していません。
また、ウクライナも2022年9月、ゼレンスキー大統領がNATOに対して加盟申請することを表明しました。
しかし、ロシアから攻撃を受けているウクライナが加盟すると、集団的自衛権の規定により他の加盟国が紛争当事者となるため、NATOは慎重な姿勢を示しています。
日本との関係は
本はNATOに加盟していませんが、パートナー国としてNATOと協力関係にあります。
2014年、日本の安倍総理大臣とNATOのラスムセン事務総長(いずれも当時)が、パートナー国との協力の原則、協力分野について指針となる文章「ICPC」に署名しました。
日本はこれまで、NATO海上司令部に海上自衛隊より連絡官を派遣したり、NATOサイバー防衛協力センターへ防衛省職員を派遣したりするなど、さまざまな形でNATOに実務協力をしています。
まとめ
- NATOとは、欧州や北米の30カ国が加盟(2022年12月現在)する国際機関で、加盟国の領土・国民の防衛を目的とする、政治的・軍事的な同盟。
- NATOは1949年設立、そもそもはソビエトを中心とした東側に対立するためにできた軍事同盟で、集団防衛のために生まれた。
- 加盟国の領土及び国民を防衛することがNATOの最大責務。加盟国が1国でも攻撃を受けた場合、これを加盟国全体への攻撃とみなして反撃などの対応をとるとして、集団的自衛権の行使が規定されている。
- ロシアによるウクライナ侵攻の背景に、NATOの「東方拡大」があるという指摘も。危機感を感じたロシアが、ウクライナを自国側につけようとしたという見方。
<参考>
NATO|NATOとは何か
外務省|北大西洋条約機構(NATO)について
東京大学|ロシアのウクライナ侵攻の背景を読み解く
NHK|ねほりはほり聞いて!政治のことば
NHK|そもそもNATOとは?なぜウクライナは加盟できない?
時事通信|NATOどう動く?北大西洋条約第4、5条とは
毎日新聞|NAT加盟条件は「テロリスト」送還 北欧2国とトルコの協議難航
コトバンク|ユーゴ空爆
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