当選無効とは?事例や連座制も解説

当選無効とは?事例や連座制も解説

2021年1月の埼玉県戸田市議選で当選した、スーパークレイジー君(本名・西本誠)氏が、戸田市での居住実態がなかったとして当選無効になったニュースが話題になりました。

候補者が被選挙権を喪失したり、選挙違反をしたりすると、当選が無効になります。

当選無効になると、どのような影響があるのでしょうか。

スーパークレイジー君氏のケースや、他の当選無効の事例に加え、候補者と一定の関係にある者が選挙違反をした場合の「連座制」ついても解説します。

当選無効とは?どうなる?

当選無効とは、公職選挙法により選挙時に遡って当選そのものがなかったものとなることです。

どのような場合に当選無効となるのか、また当該選挙への影響はどのようなものなのでしょうか。

当選無効になる場合

当選無効となるのは、

・候補者が被選挙権を喪失した場合

・候補者が選挙違反で有罪となった場合

・候補者自身の選挙違反ではないが、連座制が適用された場合

です。

当選無効の影響

議員になった者がその後何らかの理由で「辞職」する場合と異なり、当選無効とは当該選挙に「そもそも当選していなかった」ということです。

例えば、選挙報道などで候補者について「当選◯回」などと表記されるとき、当選無効となった選挙は当選回数としてカウントされません。

候補者の当選無効が確定すると、他の候補者が繰り上げ当選となる場合があります。

繰り上げ当選が適用される条件は選挙の種類によって異なり、対象者がいなかったときは「再選挙」を実施します。これは議員の辞職や死亡によって欠員が出た際に実施する「補欠選挙」とは異なるものです。

再選挙と補欠選挙の違いについて、詳しくはこちらの記事も参考にしてください。

再選挙と補欠選挙の違いは?両選挙の概要や違いをわかりやすく解説!

被選挙権喪失による場合

公職選挙法には、各選挙に立候補できる権利である「被選挙権」が定められています。

候補者がこの被選挙権を喪失した場合は当選が無効になります。具体的な事例を見てみましょう。

スーパークレイジー君氏は「居住実態なし」

戸田市議選のスーパークレイジー君氏のケースでは、戸田市内に居住実態がなかったことが問題になりました。

公職選挙法は、地方議員の被選挙権として「満25歳以上であること」と、「その地方議員選挙の選挙権を持っていること」を定めています。そして地方議員選挙の選挙権は、当該自治体に3ヶ月以上居住していることが必要です。

しかしスーパークレイジー君氏の場合は、同市内のアパートを借りた名義人が別人だったことや本人が家賃を払っていた形跡がなかったことなどから居住実態が認められず、戸田市選挙管理委員会は当選無効としました。

スーパークレイジー君氏が不服申し立てをした埼玉県選管も、戸田市選管の決定を支持し、申し立てを棄却しました。

この裁決取り消しを求めてスーパークレイジー君氏は東京高裁に提訴し、訴訟に発展したことからさらに話題を呼びます。

しかし東京高裁、最高裁ともに戸田市選管の判断を支持したため、2022年3月の最高裁判決によって当選無効が確定しました。

地方議会議員選挙では、当選無効の事由が選挙から3ヶ月以内に生じた場合は次点(最下位当選者の次の順位)の候補者が繰り上げ当選となるため、公明党の三浦伸雄氏が当選となります。

スーパークレイジー君氏はその後戸田市長選に立候補しましたが、現職の菅原文仁氏に破れました。

東大阪市議選の事例

2019年9月の東大阪市議選で「NHKから国民を守る党」(当時)の嶋谷昌美氏が、居住実態がなかったとして当選無効となった事案があります。

嶋谷氏は選挙前に住んでいた別の自治体の住居で賃貸契約をしたまま東大阪市に転入届を提出しましたが、電気やガスの使用料金が別の自治体の住居の方が高かったことなどから、東大阪市に生活拠点を置いていなかったと判断されました。

候補者の選挙違反による場合

次に、候補者が公選法違反で有罪となった場合です。

選挙違反をすると、罰金、禁錮、懲役などの刑罰が課されることに加え、当選無効や選挙権・被選挙権の停止(投票・立候補ができなくなる)などの処置が取られます。

河井夫妻選挙違反事件

2019年7月の参院選をめぐる河井案里氏と克行元法相の夫妻による選挙違反事件が話題になりました。

案里氏は、克行元法相と共謀して選挙区である広島県の県議4人に現金を渡したとして公選法違反(買収)で執行猶予付き有罪判決を受け、控訴せず確定したため当選無効となりました。

2021年1月の東京地裁判決後に案里氏は議員辞職しましたが、公選法では当選無効が優先されます。そのため、再選挙が行われました。

またこの事件をめぐっては、当選無効によってそもそも当選自体がなかったこととなるにも関わらず、辞職するまでの給料に返還義務がないことが問題視されています。

大阪市議選の事例

選挙違反による当選無効では、2019年4月の大阪市議選で車上運動員の手配に報酬を支払ったとして公選法違反(買収)で有罪が確定した不破忠幸氏の事例があります。

連座制の適用による場合

候補者自身が選挙違反に関わっていなくても、一定の関係にある者が買収などの公選法違反で有罪となり連座制が適用されると、候補者は当選無効となる上、同一選挙区から5年間立候補できなくなります。

一定の関係にある者とは、親族、選挙運動の総括主宰者、出納責任者、秘書、組織的選挙運動管理者などです。

ただし対象者が有罪でも、その行為が「おとり」や「寝返り」であった場合や、候補者の監視監督が十分だったと認められると適用されないという例外もあります。

連座制が適用された事例では、前述の河井案里氏の公設秘書が車上運動員に違法な報酬を渡した事件や、2012年の衆院選で医療法人徳洲会グループ幹部が病院職員に選挙運動の報酬を支払った、いわゆる「徳洲会事件」があります。

まとめ

・当選無効となる場合は候補者の被選挙権喪失・選挙違反・連座制の適用がある

・当選無効が確定すると繰り上げ当選または再選挙が実施される

・戸田市議選のスーパークレイジー君氏の場合は、戸田市に居住実態がなかったことから被選挙権がなく、当選無効と判断された

・候補者と一定の関係にあるものが選挙違反で有罪になると「連座制」により当選無効になるケースもある

 

<参考>

公職選挙法

選挙のしくみ – 選挙違反とその罰則 | 福井県ホームページ

「そもそも当選はなかった」はずなのに、給与は「有効」なぜ?読売新聞オンライン

質問なるほドリ:議員の当選無効、今後どうなる? 有罪確定ならば再選挙 給料は返還義務なし=回答・宮島寛 | 毎日新聞

河井案里前議員の当選無効 「再選挙」でも辞職扱いの不可解さ – 産経ニュース

繰り上げ当選になるのはどんな時?

総務省|選挙権と被選挙権

スーパークレイジー君議員を当選無効に 選管「居住実態なし」 | 毎日新聞

埼玉・戸田市議選 「クレイジー君」、県も当選無効 | 毎日新聞

「クレイジー君」当選無効提訴 「居住は事実」 /埼玉 | 毎日新聞

県選管裁決訴訟 「クレイジー君」請求棄却 当選無効、高裁支持 /埼玉 | 毎日新聞

戸田市議「クレイジー君」 当選無効が確定 上告審判決 /埼玉 | 毎日新聞

埼玉県戸田市長選、現職の菅原氏当選 スーパークレイジー君氏は落選

次点の三浦氏が戸田市議に当選 「クレイジー君」無効 /埼玉 | 毎日新聞

東大阪市議の当選無効訴訟、最高裁が上告棄却 – 産経ニュース

N国東大阪市議の当選無効 「住所要件備えず」 大阪高裁判決 | 毎日新聞

案里被告の有罪確定へ 検察側も控訴しない方針固める:朝日新聞デジタル

失職・当選無効の条件 河井前法相夫妻裁判 | 注目記事 | NHK政治マガジン

河井夫妻選挙違反事件|毎日新聞

運動員手配の報酬、有罪判決:朝日新聞デジタル

160万円支払い命令 公選法違反の元大阪市議に地裁判決 /大阪 | 毎日新聞

選挙違反と連座制 | 北海道伊達市l

公職選挙法違反の連座制とは? 当選無効になる仕組み:朝日新聞デジタル

ニュースのことば:連座制 | 毎日新聞

案里氏に連座制適用 5年間、立候補禁止 広島高裁判決 | 毎日新聞

徳田毅・徳洲会元理事、衆院選出馬見送り 自民・鹿児島:朝日新聞デジタル

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