党議拘束とは?党議拘束について簡単に解説

党議拘束とは?党議拘束について簡単に解説

国会に関するニュースでしばしば耳にする「党議拘束」という用語。今回は、党議拘束とは何か、また、党議拘束にまつわる事例や議院内閣制との関係についてもわかりやすく解説します。

党議拘束とは

党議拘束とは、法案や予算について議会での採決前に、あらかじめ政党内で賛成か反対かを決め、所属議員に対して党の決定に従って議会で表決するよう義務づけることです。

党議拘束のメリット・デメリット

党議拘束には、以下のメリット・デメリットがあります。

党議拘束のメリット

採決に際し、政党ごとに団結するため、国会運営が比較的スムーズになります。

また、比例代表で当選した議員もいるため、政党に対して票を入れた有権者の民意が反映されやすい傾向にあるのもメリットです。

党議拘束のデメリット

予算や法案に対する賛否をあらかじめ党内で決めるため、事前に可決か否決かの結果が決まってしまいます。そのため、審議が形骸化する恐れがあります。

また、党議拘束により1人の議員が単なる1票となってしまうという懸念もあるでしょう。選挙区で議員個人を支持し、票を入れた有権者の民意が議員を通して反映されにくくなるのが党議拘束のデメリットです。

党議拘束と議院内閣制

議院内閣制では、首相が議会によって選ばれます。すなわち、内閣は議会の多数派による支持により成り立っているといえるでしょう。そのため、議院内閣制をとる国では、党議拘束が強くなる傾向にあります。

日本と同じく議院内閣制をとるイギリスでは、強い党議拘束があります。その一方で、大統領制であるアメリカでは、党議拘束が弱く、政府が実現を目指す法案に対し与党議員が反対する事例もしばしば生じています。

党議拘束に従わないとどうなる?

党議拘束は党内の規則であるため、違反しても違法ではありません。ただし、党の処罰を受けることになり、重ければ除名処分、少なくとも党員資格停止となる場合がほとんどです。

また、造反した議員たちにより新党が結成されるということもあります。

2005年(平成17年)、当時の小泉総理は郵政民営化を実現しようと、法案を提出しましたが、自民党内でも反対が相次ぎ、否決されました。

小泉総理は、法案に反対した議員に対して党議拘束に造反したとして自民党国会議員56人に除名・離党勧告・党員資格停止などの処分を下しました。また、造反した一部の議員は国民新党を結成しました。

2012年(平成24年)、民主党野田政権が、消費税増税法を成立させようとした際には、政権公約に記載がない案件であるとして、多くの造反議員が出ました。

民主党は造反した議員に対し除籍や党員資格停止の処分をした一方、その中には離党届を提出し、新党を結成する議員もいました。

党議拘束が外された事例

政党政治が基本の日本ですが、党議拘束が外され、議員1人ひとりの自由投票となった法案があります。

1997年(平成9年)臓器移植法成立と2009年(平成21年)臓器移植法改正がその事例です。議員個人の死生観に関わる議題であるとして、各政党が党議拘束を外し、自由投票としました。

1997年の臓器移植法は、脳死の人からの臓器提供を認めた法律です。2009年の改正では、本人の意思が不明の場合、家族の承諾で臓器提供が可能になりました。

まとめ

党議拘束は、国会での採決の際、政党が所属議員に対して党の決定に従うよう義務づけることです。

党議拘束に造反する議員が出たり、党議拘束が緩和されたりすると話題になりやすいため、党議拘束という言葉に着目してみてください。

 

<参考文献>

東京法令出版『政治・経済資料』
浜島書店『最新図説 政経』
浜島書店『新詳日本史』
第一学習社『テオーリア 最新倫理資料集』
党議拘束は何のためにあるのか(東京大学教授 宇野重規) | ガジェット通信 GetNews
衆院選、民意の敵は党議拘束と当選回数|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)
日本人の知らないアメリカ:日米の議会制民主主義の違いを象徴する「党議拘束」と「フィリバスター」=中岡望 | 週刊エコノミスト Online (mainichi.jp)
「除名」とは一体なんだろう?~本当にすぐわかる政治用語~ | 日本最大の選挙・政治情報サイトの選挙ドットコム (go2senkyo.com)
http://www.asahi.com/senkyo2005/news/TKY200508170474.html
郵政選挙で造反者に刺客!“小泉劇場”がもたらしたものとは? 総選挙プレイバック(3) | 政治 | ABEMA TIMES
民主党の造反議員処分一覧: 日本経済新聞 (nikkei.com)
野党躍進のカギ、「国対政治」を見直せるか?「批判ばかり」の脱却策として隔週・夜に党首討論の開催を(室橋祐貴) – 個人 – Yahoo!ニュース
asahi.com(朝日新聞社):臓器移植、A案とD案を軸に 党議拘束かけず本格審議 – 臓器移植法改正
【カジノ解禁法案】党議拘束外しは過去にも 価値観多様化で増加も 頻発なら議院内閣制の土台崩れる可能性も(1/2ページ) – 産経ニュース (sankei.com)

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