参院選の「一人区」って?選挙区の定数は2以上なのに、なぜ「1人」!?

参院選の「一人区」って?選挙区の定数は2以上なのに、なぜ「1人」!?

参院選を前にすると、「一人区」という言葉を耳にする機会が増えますよね。

しかし、少し選挙制度を勉強した方であれば、「参議院では、1選挙区あたり2人以上が選出されるはずでは?」と疑問に思うかもしれません。

一体どういうカラクリなのでしょうか。紐解いてみましょう!

一人区とは

参議院の選挙区選挙における1選挙区あたりの定数は2〜12、議員の任期は6年です。ただし、3年に一度、議員の半数を改選します。このため、選挙区によっては、一度の選挙で1名のみの選出となるケースがあり、これが「一人区」と呼ばれているのです。

【関連記事】参院選とは?選挙の流れや投票方法を分かりやすく解説

令和4年現在では、定数2の選挙区が32あり、これが全て改選定数1の「一人区」となっています。

参議院の選挙区選挙における「一人区」と「複数区」

一人区(定数2)青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島、栃木、群馬、山梨、新潟、長野、富山、石川、福井、岐阜、滋賀、三重、和歌山、奈良、鳥取・島根(合区)、徳島・高知(合区)、山口、岡山、香川、愛媛、大分、宮崎、鹿児島、熊本、佐賀、長崎、沖縄
複数区(定数4)茨城、静岡、京都、広島
複数区(定数6)北海道、千葉、埼玉、兵庫、福岡
複数区(定数8)神奈川、愛知、大阪
複数区(定数12)東京

総務省|参議院選挙区選出議員の選挙区及び定数の改正等についてより一覧作成

1986年以降の「一人区」

「一人区」は、与野党が議席を分け合いがちな複数区(2人以上が当選)に比べ、選挙の勝敗を左右すると言われています。

1986年以降、2019年までの参院選において、一人区で過半数の議席を取得した政党が参議院における改選第一党とならなかったのは、2004年の一度のみでした。

この2004年の選挙では、当時27あった一人区において、自民党が辛うじて過半数となる14議席を獲得します。しかし、複数区や比例代表での選挙結果が振るわず、最終的な獲得議席は49。50議席を獲得した民主党に1議席及ばず、一人区での勝利にもかかわらず、改選第一党とはなりませんでした。

逆に、一人区における勝利が改選第一党に結びついた選挙のうち、特に象徴的な選挙として取り上げられる選挙を見てみましょう。以下では3つをご紹介します。

1つ目は、「マドンナ旋風」が吹いたと言われる1989年。

与党であった自民党が、消費税導入・リクルート事件・宇野宗佑首相の女性問題などで揺れる中、土井たか子氏率いる社会党が全26の一人区で23勝3敗。55年体制以降、社会党が初めて改選第一党の座を奪うことになりました。

【関連記事】マドンナ旋風とは?土井たか子氏や女性議員について解説 | スマート選挙ブログ

2つ目は、「小泉旋風」というワードが誕生した2001年。

「自民党をぶっ壊す」という、分かりやすさと熱量を併せ持った小泉氏の存在が大きく支持を集め、一人区は自民党が25勝2敗。その後5年半に及ぶ小泉政権の礎となった選挙と言われています。

最後となる3つ目は、「ねじれ国会」が特に注目されるようになった2007年の選挙です。

衆議院と参議院で与党と野党の合計議席数が逆転している状況を「ねじれ国会」と呼びます。終戦直後を除くと、過去4回(1989年、1998年、2007年、2010年)の参院選でねじれ国会となっています。与党であった自民党は、29ある一人区で6しか議席を獲得できず、最終議席数も37議席と、89年に次ぐ歴史的敗北を喫した選挙となりました。

まとめ

  • 参議院における選挙区選挙において、1選挙区あたりの定数は2以上なのに「一人区」が生じるのは、「3年に一度半数を改選する」という参議院の仕組みによる
  • 令和4年現在では、定数2の選挙区が32あり、これが全て「一人区」となっている
  • 1人しか当選できないため、与野党が議席を分け合いがちな複数区(2人以上が当選)に比べ、全体の勝敗を左右すると言われている

 

<参考>
日本経済新聞|2016参院選 戦いのこれまでと今と
日本経済新聞|1人区とは
日本経済新聞|1人区とは 参院選で改選定数1の選挙区、全国に32
日本経済新聞|参院選1人区、野党競合3分の2に
一人区とは – コトバンク
全国32の1人区、野党共闘の結果は – 2016参院選
参院選 2019 | 参議院選挙 | NHK選挙WEB
ねじれこっかい【ねじれ国会】 | ね | 辞典 | 学研キッズネット
[早わかり 参院選Q]ねじれ国会とは?…衆参で与野党が逆転
最終閲覧日は記事更新日と同日

タイトルとURLをコピーしました