公費or自腹?選挙に必要な費用はどこから出ている?

公費or自腹?選挙に必要な費用はどこから出ている?

お金がかかるイメージのある「選挙」。

「実際に選挙にかかる費用がどの程度なのかよく分からない」

「手持ちの資金が少ないと、本当に選挙に出馬することができないの?」

といった悩みや疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、選挙にかかる費用や収入と支出の内訳など、選挙の資金について解説しています。

この記事を監修した人
奥藤裕子
イメージ戦略の構築からトータルプロデュースする選挙コンサルタント。イメージコンサルタントとして培った知識と経験を活かし、数多くの広報ツール制作・政策立案に携わる。政治家の「自己プロデュース力を高めたい」というニーズに応えるべく、今日も現場で奮闘中。

選挙にかかる費用はいくら?

選挙にかかる費用は選挙区・種類・規模によって異なります。

候補者1人当たりにかかる費用も、これらの要素に応じて変化することが多いです。

ここからは国政選挙・市議会議員選挙の2つの選挙を例に、選挙にかかる費用について具体的に紹介していきます。

衆議院・参議院選挙を行うために必要な費用

過去の参議院・衆議院選挙にかかった費用は以下の通りです。

  • 参議院議員選挙:約571億円(2019年)
  • 衆議院議員選挙:約597億円(2017年)

衆議院議員選挙の方が議席が多いため、出費が多くなる傾向にあります。

また、選挙費用の約9割が地方自治体への委託費用となっており、2017年の衆議院議員選挙では、東京都に約61億円、神奈川県には約31億円の委託費が支払われました。

参考:衆議院議員総選挙に必要な経費 – JUDGIT!(ジャジット)

費用の用途

選挙費用の用途の内訳は、以下のようなものです。

  1. 都道府県・市区町村への委託費(投票所の設置など)
  2. 放送費
  3. 新聞広告費
  4. 交通費
  5. ハガキ代
  6. 委員会費
  7. 雑費(印刷物・消耗品費などの発注費など)
  8. 選挙啓発費

一括りにされている選挙費用にも、さまざまな用途があることがわかります。

出馬時1人当たりに必要とされている費用

国政選挙への出馬に必要とされる費用は、以下のようになっています。

  • 参議院選挙:6000万円以上
  • 衆議院選挙:2500〜3000万円

この全ての費用が自己負担というわけではなく、法律に制定された範囲内で国から費用が支給され、以下のような用途で使われます。

1.供託金

供託金は、出馬の際に支払う保証金(デポジット)のようなもので、当選を争う意思のない人が売名などの理由で無責任に立候補することを防ぐためのものです。

国政選挙の場合、300万円から600万円の費用(選挙の仕組みによって変動)がかかりますが、規定の得票数を獲得できれば落選しても返還されます。

2.人件費

ウグイス嬢や事務員などにに対する報酬。

3.家屋費

事務所や作業場としての場所を借りる、または建てる際の費用。

4.通信費

電話、インターネット通信及び事務連絡のための電報・郵便等に要する費用。

5.交通費

選挙運動員、労務者の交通費の実費弁償。

6.印刷費

ハガキ、ポスター、ビラなどの印刷費。

7.広告費

選挙カーの看板や新聞広告などに使われる費用です。

8.文具費

ボールペンなどの文具にかかる費用です。

9.食糧費

選挙運動員に配られるお弁当や事務所のお茶菓子・飲料などにかかる費用です。

買収につながらないように、お弁当は1食1000円(1日3000円)まで、と決められています。

10.休泊費

選挙運動員などが宿泊した場合にかかる費用。

1泊12000円(朝晩の2食を含む)まで、と決められています。

11.雑費

主に事務所の光熱水費やガス代、新聞代などです。

2〜10.までに紹介した費用以外のものは、基本的に雑費となります。

2〜11.の費用は、全て収支報告書として提出しなければいけないません。

地方選挙に必要な費用

「2017年の東京都議会議員選挙」を例に挙げて紹介します。

この年の選挙では、約45億円の費用が使われました。

費用の内訳

約45億円の費用は、以下のような用途で使われました。

  1. 会場賃貸料
  2. 職員の人件費(職員手当)
  3. 投票事務費
  4. 開票事務費
  5. 広報・臨時啓発費
  6. 投票券の印刷・発送費ポスターなどの印刷物の掲示費

ただし、上記の内訳は選挙が行われる自治体によって異なるため、一般的な目安となります。

出馬時1人当たりに必要とされている費用

地方自治体の選挙では、1人当たり約200〜800万円がかかるとされています。

内訳は国政選挙と同じような形ですが、規模が小さいためこの金額で収まっています。

大きく異なる費用としては、供託金です。

知事や政令指定都市の長の供託金は240〜300万円と、国会議員と同じくらいの費用がかかりますが、一般的な自治体の議員の場合は15〜50万円と、10分の1程度に収まります。

選挙費用は自腹?それとも公費?

選挙にかかる費用は少なくて200万円、多くて6000万円と紹介しましたが、そのうちどの費用が公費で賄われていて、どの費用が自腹(議員候補者の財布)で支払われているのでしょうか?

本章では、衆議院小選挙区選出議員選挙における公費負担の対象となる費用と、自腹になる費用の2つに分けて、解説していきます。

公費負担の対象費用

衆議院小選挙区選出議員選挙では、以下の費用が公費負担の対象になります。

  • 選挙運動用自動車の使用
  • 選挙運動用ビラの作成
  • 選挙運動用ポスターの作成
  • 選挙運動用通常葉書の作成
  • 立札及び看板の類の作成

参考:290359.pdf

選挙に必要不可欠なものは、公費で賄われる規定になっています。

選挙運動用自動車の使用

いわゆる選挙カーにかかる費用への負担で、いわゆるハイヤー方式の場合の限度額は1日あたり64,500円で、限度日数は12日です。

②選挙運動用ビラの作成

ビラ作成業者に支払う金額のうち自治体の選挙管理委員会の確認を受けた枚数分の費用が対象となり、例えば作成枚数が5万枚以下の場合は、7円51銭に作成枚数をかけた費用が公費負担になります。

③選挙運動用ポスターの作成

選挙運動用ポスター作成業者に支払う金額も公費負担の対象ですが、限度額は作成単価や掲示場数によって異なります。

④選挙運動用通常葉書の作成

葉書作成業者に支払う金額のうち、269,850円を限度に公費負担の対象になりますが、選挙管理委員会による限度枚数の確認が必要です。

⑤立札及び看板の類の作成

選挙事務所用、選挙カー用、個人演説会用の立札作成にかかる費用のうち、選挙管理委員会の確認を受けた枚数分の費用が公費負担の対象となります。

それぞれの単価限度額は以下の通りです。

・選挙事務所用:54,914円
・選挙カー用:51,992円
・個人演説会用:39,725円

自腹で払わなければいけない費用

選挙費用のうち、自腹で支払わなければいけない費用は以下のものです。

1.上限額以上の印刷物

規定されている印刷物以上を作成する場合。

2.運転手以外の人件費(ウグイス嬢など)

公費負担されない人員を雇用する場合。

3.供託金没収点を下回った場合の公費分

供託金没収点は選挙によって変わりますが、供託金が返ってこないだけでなく、公費負担してもらえるはずの分まで、自腹になってしまいます。

4.衆議院解散時の印刷物を新しくする費用

議院が解散すると「前〜議員」になるため、今まで使っていた名刺などを使うことができません。

選挙期間には新しい肩書きのものが必要となるので、この費用も自腹となります。

上記のもの以外にも、選挙前のビラ/機関紙号外や決起会の開催費/準備費なども自腹で支払う必要があります。

選挙運動ごとの制限額はどの程度?

選挙運動では、元からお金を持っている人が有利になりすぎないように、自費負担できる金額に制限がかけられています。

衆議院(小選挙区)名簿登録者数×15円+1910万円
参議院(選挙区)


名簿登録者数÷定数×13円+2370万円
(定数が2人の場合)

名簿登録者数÷定数×20円+2370万円
(定数4人以上の場合)

参議院(比例代表)5200万円
都道府県知事名簿登録者数×7円+2420万円
都道府県議会名簿登録者数÷定数×83円+390万円
指定都市の長名簿登録者数×7円+1450万円
指定都市の議会名簿登録者数÷定数×149円+370万円
指定都市以外の市長名簿登録者数×81円+310万円
指定都市以外の市議会名簿登録者数÷定数×501円+220万円
町村

名簿登録者数×110円+130万円(長)

名簿登録者数÷定数×1120円+90万円(議員)

(名簿登録者数とは、その地域に住む選挙人名簿に登録されている人数のこと。有権者が実際に投票できる人のことを指すのに対して、名簿登録者数には、失権者や基準日以降の死亡者や転居者などの数が含まれています。)

出馬の際はこの費用を超えないように、事前に調べておきましょう。

私たちの投じる1票は何円の価値があるのか

選挙で話題に上ることの多い「1票の価値」ですが、以下のような算出方法が提唱されています。(滋賀県立大学環境科学部の村上一真准教授による)

国の一般会計(2021年度予算案)から、国会議員が簡単にコントロールできない国債費(23兆7588億円)をのぞくと82兆8509億円となります。

これを両院の国会議員数(710人)で割ると1人あたりの年間責任予算額は約1166億円となり、衆院選で選出される465人と任期である4年をかけた額を有権者数(1億571万4691人)で割ると、有権者ひとりあたりの投票の価値=約205万円という金額が導き出されます。

参考:衆院選「あなたの1票の価値」は205万円也 それでも選挙に行かないですか?(NEWSポストセブン) – Yahoo!ニュース

選挙費用の公費負担について まとめ

本記事では選挙にかかる費用について解説しました。

選挙に出馬するには供託金のほか、人件費や家屋費などの費用が必要です。

また、選挙にかかる費用のうち、選挙カーの費用や選挙ポスター作成費用などの一部は公費負担の対象となります。

そして、公費負担には限度額があり、選挙管理委員会の確認が必要な項目もあります。

 

<参考文献>

選挙立候補.com
JUDGIT!(ジャジット)
東京新聞
キャリアガーデン
選挙ドットコム
公職選挙法第197条より
令和元年5月作成の和歌山県選挙管理委員会資料より
2020年9月26日Yahooニュース
2014年12月7日Yahooニュース
延岡市公式サイト
生駒市公式サイト

この記事を書いた人
中橋 蓮

最後までお読みいただきありがとうございます。
ライター歴半年の中橋蓮と申します。
フリーランスとして活動するようになってから、生活する上で政治や選挙が関連深いと考えるようになり、興味を持ちました。
今まで選挙に興味がなかった方にも伝わることを心がけながら執筆しています。

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