岸田首相「黄金の3年」とは?過去にもあった?

岸田首相「黄金の3年」とは?過去にもあった?

2022年7月の参議院議員選挙が終わり、今後衆議院の任期満了まで解散がなければ、2025年までの3年間、全国規模の国政選挙がありません。

ニュースなどではこのことを「黄金の3年」と呼び、岸田文雄内閣にとって政策を実現しやすい環境だといわれています。

黄金の3年とは、どのような意義があるのでしょうか。また、過去に実現したことはあるのでしょうか。今後3年間の政治・外交に関する予定についてもまとめています。

政治予定など本記事の内容は2022年8月2日時点のものです。

「黄金の3年」の意味とは

黄金の3年とは、参院選終了後から次の参院選までの間、衆議院の解散がない限り全国規模の国政選挙がない期間をいいます。

3年間国政選挙がない可能性

2021年10月に衆議院議員総選挙が実施されました。衆議院議員の任期は4年で、今後解散がなければ2025年10月に任期満了を迎え、総選挙となります。

参議院は解散がなく、任期は6年で、3年ごとに議員の半数が改選される仕組みです。

2022年7月に参議院議員通常選挙が実施されました。2019年7月の参院選で選出された議員が任期満了となる2025年7月ごろに、次回の通常選挙が予定されています。

衆議院の任期満了まで解散がなければ、2022年7月から2025年夏までの3年間、補欠選挙などを除く国政選挙がありません。

このことから報道などでは、「岸田文雄政権は黄金の3年を迎えた」などと表現されています。

どのような意義がある?

直近に大型選挙を控えていると、政権を担う与党は選挙で議席数を減らさないように慎重にならざるを得ません。

しかし「黄金の3年」であれば、直近の選挙結果を強く意識せずに、内政・外交に集中できるという意義があります。

腰を据えた中長期的な改革に取り組みを実施でき、国民の負担が増えるなど選挙で不人気になりそうな政策も実施しやすいといえます。また、国内の政治にとらわれず、外交にも注力できる環境です。

「黄金の3年」は過去にもあった?

参院選から次の参院選までの約3年間、衆議院が解散せず国政選挙がなかった事例は過去にもありました。しかし、3年間同じ首相が全うしたことはありません。

衆議院の解散・総辞職によらずに首相が代わるのは、病気や死亡による場合のほか、与党の党首が党内の選挙などによって交代する場合です。

現在の与党である自民党の総裁選と内閣総理大臣の関係については、こちらの記事で解説しています。
自民党総裁選挙2021!新総裁は内閣総理大臣?!注目のワケや仕組みを解説 | スマート選挙ブログ

1980年衆参同日選〜1983年

1980年5月に内閣不信任決議を受けて衆議院が解散し、6月には史上初の衆院選・参議院「同日選挙」となります。3年後の1983年6月に参院選、12月に衆院選が実施されました。

1980年の解散時に首相だった大平正芳氏は選挙期間中に急逝し、鈴木善幸氏が首相に就きます。しかし1982年の自民党総裁選に鈴木氏は出馬せず、中曽根康弘氏が総裁・首相になりました。

1986年衆参同日選〜1989年

1986年7月の衆議院解散は、首相だった中曽根氏の突然の決行により衆参同日選挙に踏み切ったことから「死んだふり解散」と呼ばれています。

その後1989年7月の参院選まで、全国規模の国政選挙がない3年間でした。

この間、中曽根氏は当時の自民党党則で総裁任期は3年・2期までと定められていた総裁任期を特例的に延長し、首相在職日数は通算1800日を超える長期となります。しかし1987年11月に退陣し、竹下登氏が首相に就任しました。

この退陣の背景には、中曽根政権が導入しようとした、現在の消費税に近い大型間接税「売上税」に対する強い反発があります。

1986年の衆参同日選挙時に中曽根氏は、国民に負担を強いることになり、党内でも根強い反対意見のある大型間接税は実施しない方針を明言していました。選挙では自民党が圧勝します。

しかし選挙後、中曽根氏は売上税の創設法案を国会に提出しました。公約違反だと世論は強く反発し、中曽根氏が首相を降りる契機となります。

後継の竹下登氏はリクルート事件の疑惑を受けて1989年6月に総辞職し、宇野宗佑内閣で7月の参院選を迎えました。

1980年と1987年の「衆参ダブル選挙」については、こちらの記事でも触れています。

参院選・滋賀県知事選の「ダブル選挙」はいつ?地方選挙の候補者も解説 | スマート選挙ブログ

今後3年間の政治予定(2022年8月時点)

今後3年間、衆議院解散がなければ大型国政選挙はないものの、内政・外交に関する重大な予定は多数控えています。首相が変わる理由となり得る自民党総裁選や、岸田内閣の支持率に影響する大きな政治予定もあり、一部を挙げました。

2022年:臨時国会、安倍元首相の国葬など

2022年8月には臨時国会が開かれます。秋にも臨時国会が開かれる見込みで、岸田首相は憲法改正などの議論を進めたいと述べています。

また自民党は当初、7月の参院選直前に銃撃を受けて亡くなった安倍晋三元首相の追悼演説を8月の臨時国会で行う方針でした。しかし演説者などについて与野党の意見がまとまらず、秋の臨時国会以降に先送りすることが検討されています。

臨時国会については以下の記事を参考にしてください。
臨時国会とは何をする?召集はいつ? | スマート選挙ブログ

9月には、安倍元首相の国葬が実施される予定です。全額国費による国葬には、野党や国民から反対の声も強く上がっています。

2023年:統一地方選・G7広島サミットなど

2023年4月には、日本銀行の黒田東彦総裁が任期満了を迎えます。日銀総裁は国会の同意を受けて、内閣が任命する仕組みです。

日銀はこれまで大規模な金融緩和を続けてきましたが、総裁交代によって方針が変わる可能性も否定できません。

4月ごろには、地方自治体の首長選や議員選の日程を統一して実施する「統一地方選挙」があります。

統一地方選挙については、こちらの記事で解説しています。
統一地方選挙とは?次回はいつ?

5月には、広島市で主要7カ国首脳会談(G7サミット)が開催されます。G7サミットとは、フランス・アメリカ・イギリス・ドイツ・日本・イタリア・カナダ(議長国順)の7カ国と、EUの首脳が参加して毎年開かれる国際会議です。

2022年はドイツ・エルマウで開かれました。日本での開催は2016年の伊勢・志摩サミット(三重県)以来で7回目です。

2024年:自民党総裁選など

2024年9月に、岸田氏は自民党総裁の任期満了を迎えます。前述のように、黄金の3年を首相の交代なく実現するには、現在1期目の岸田氏が総裁選で再選することが不可欠です。

自民党で最大派閥を率いていた安倍元首相の急逝によって、党内の勢力図が変わりつつあると指摘されています。、総裁選に影響を与えることも考えられるでしょう。

他に、今後任期途中の辞任などがなければ、任期満了に伴う東京都知事選挙(7月)米国では大統領選挙(11月)も予定されています。

2025年:万博や参院選、衆院選も?

2025年4月から10月にかけては、大阪・関西万博が開かれます。万博とは世界各国の技術や文化が集まる国際博覧会のことです。日本での開催は、2020年に愛知県で開かれた「愛・地球博」以来です。

そして、7月ごろには参議院通常選挙10月には衆議院議員の任期満了を迎えます。

まとめ

  • 「黄金の3年」とは、参院選終了後から次の参院選までの間、衆議院の解散がない限り全国規模の国政選挙がない期間を指す。
  • 2022年7月の参院選後、2025年の次回参院選までに衆議院の任期満了まで解散がなければ、補欠選挙などを除く国政選挙がない。
  • 黄金の3年は、直近の選挙を意識せずに、中長期的な政策の実施や外交に集中できるという意義がある。
  • 3年間国政選挙がなかった事例は1980年と1986年の参院選後にもあった。しかし、その間同じ首相(政権)が全うしたことはない。

 

<参考>
「黄金の3年」決断力問う 大勝自民に課題山積首相に「黄金の3年」は来ない 総裁選と解散カレンダー
不人気な政策も実現できる 岸田政権「黄金の3年」の使い方 | | 八代尚宏 | 毎日新聞「政治プレミア」
「黄金の3年」と岸田カラー
国会議員の任期満了日等
選挙なく全う」前例なし
歴代内閣 | 首相官邸ホームページ
参議院議員通常選挙一覧
衆議院議員総選挙一覧表
自民党の歴史 | 自民党について | 自由民主党
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